「スーホズ・ホワイトホース」

「文を読んでください」
「スーホの白い馬」

「忍殺っぽく」
「(これまでのあらすじ)白い馬に乗り競馬大会で優勝したスーホは、囲んで棒で叩かれ王に白い馬を奪われてしまう。そして、白い馬も、無数の矢で射られ惨たらしく死んだ。
王殺すべし。慈悲は無い。
スーホは復讐を決意するが…」

警告!
この話には、忍殺成分が多分に含まれています!原作の雰囲気を壊したく無い人は読まないでください!

ネオサイタマ近郊の草原。重金属酸性雨がテントの屋根を静かに叩く。時はウシミツ・アワー。タングステン・ボンボリの素朴な灯りの下、スーホは矢と弓の手入れをしていた。壁には、『インガオホー』『王を射殺す』のショドー。スーホの瞳は暗く、そして激しい憎しみで満たされていた。

スーホの脳裏に、白い馬の最期がフラッシュバックする。白い体が矢で射られた血でウルシめいて赤く染まり、オタッシャ寸前で帰ってきたあの日の記憶が。馬にハイクは詠めぬ。だが、最期をスーホの側で迎えたかったのだろう。鼻をスーホの身体に当てた後、馬は事切れた。

おお、白い馬よ。白い馬よ。スーホを例えようの無い悲しみが襲う。だが、王への憎しみも思い出せたのは幸運だった。確実に王を殺さねばならぬのだから。スーホは矢にオムラ製ダイナマイトヤジリを装着した。確実に殺す。決断的な殺意が彼を動かしていた。

スーホの弓のワザマエならば、王を射殺し、爆発四散させるのはベイビー・サブミッションだ。明日も早い。暗殺を確実に成功させるためにも、寝て明日に備えねば。スーホはフートンに身体を横たえた。(待っていろ、必ず仇を討ってやるからな)スーホの意識は眠りに落ちた。

◆◆◆
(スーホ=サン。私の仇を討ってくれるのは実際嬉しいです。でも、王を殺しても、私は生き返らないし、貴方も殺されるか、スガモ重犯罪刑務所に送られるでしょう。どうか復讐はやめてください。それより、一つお願いがあります。私の身体で、ある物を作ってください…)

◆◆◆
「アイエッ!?」スーホは飛び起きた。テントの窓からは夜明けの光が差す。朝になっていたのだ。その時、スーホは枕元に何か置かれているのに気付いた。設計図である!あれは夢では無かったのか!?だが、白い馬の頼みだ。スーホは、一旦復讐をやめ、馬の望みを叶えることにした。

スーホは仲間たちにも協力を仰ぎ、馬の望んだ「あるもの」を作った。それは、白い馬の骨と尾を使った琴…、ではない!
白銀に輝く装甲に、力強い4本の足!トロイの木馬を彷彿とさせる鋼鉄の馬!機体の前側には雷神を象ったオムラ紋に『復讐』『王を許さないです』とショドーされている!

キャバァーン!鋼鉄の巨馬の目、メインカメラに光が灯る!そして首を下げ、電子音声によるアイサツが響く!『ドーモ、スーホ=サン。モーターバトウキンです!』「ど、ドーモ、モーターバトウキン=サン。スーホです。お前は、あの、白い馬なのか…?」

『そうです。スーホ=サン。貴方のおかげで、新たな身体を得て、甦ることができました。貴方に代わり、私が貴方の復讐を果たしましょう』バトウキンの身体からロケットブースターが展開!『ミッションを!行きます!ヨロコンデー!』バトウキンの身体は噴射炎と共に上昇していく!

スーホはその様子をしばし呆然と見つめていたが、我に帰り、涙を流しながらオムラ社に関わる者としてチャントを発した。「バトウキン、バンザイ!インダストリ!モーターヤッター!オームラ!オムラ!オームラー!」スーホのチャントを聞きつけ集まった仲間達も、同様にチャントを唱和する!

「オームラ!オムラ!オームラー!」「モーターヤッター!」スーホと彼らはかつてのメガコーポ、オムラ社の関係者なのだ!「オームラ!オムラ!オームラー!」「インダストリ!」「オームラ!オムラ!オームラー!」「モーターヤッター!」「オームラ!オムラ!オームラー!」

◆◆◆
その数十分後、王は、城のパーティー会場で、債権者がセプクするのを見ながらサケを飲んでいた。「ムッハハハ!あの白い馬が死んだのは残念だったが、楽しみならまた探せば良い!ムッハハハハ!」ナムアミダブツ!何たる邪悪か!

ゴアアアアア!!その時である!空を切り裂くロケットブースターの轟音と共に、壁が破壊され、巨大な鋼鉄の馬がエントリー!「アバーッ!」着地地点にいた召使いが踏み潰され即死!『ドーモ!モーターバトウキンです!これは復讐なので、合法的に殺戮されます』

その言葉と共に、バトウキンの身体から無数のミサイルが発射された!「アイエエエ!」「アイエーエエエ!」「アババーッ!」たちまちパーティー会場にジゴクめいた連続爆発が起こり、カネモチが何名か即死!「アイエッ!?何をしている!そいつを殺せ!」王は逃げながらも命令!

「「「ザッケンナコラー!」」」王の命令と共に、出動したクローンヤクザ部隊が攻撃を開始!「スッゾコラー!」チャカ・ガンを装備した部隊が一斉射撃!『イヤーッ!』「アバーッ!」バトウキンの身体からキャノンが展開し砲撃!チャカヤクザ部隊全滅!

「ダッテメッコラー!?」アサルトライフルを装備したヤクザ部隊が一斉射撃!『イヤーッ!』「アバーッ!」バトウキンの身体からガトリング砲が展開し射撃!アサルトヤクザ部隊全滅!無論、バトウキンは重装甲によりダメージは皆無!

「シネッコラー!」だが、その隙に接近した電磁サスマタを装備したヤクザ部隊が攻撃態勢に入る。インファイトに銃火器は不利だ!『アクションモード重点!』バトウキンは後ろ足で立ち上がり、人型形態に変形!憤怒の形相の馬の木彫り面が展開!ゼンメツ・アクションモードだ!

バトウキンは「馬奪血」「馬比夜意」と神秘的なルーン・カタカナの彫られた二振りのカタナを抜いた!『イヤーッ!』「アバーッ!」『イヤーッ!』「アバーッ!」カタナで首を刎ねられたサスマタヤクザ部隊が次々にサンズ・リバーに送られていく!

ツキジめいた惨状となったパーティー会場に立つバトウキンはクローンヤクザの死体を踏み締めながら、周囲に宣言する!『私は、スーホ=サンとは、関係ありません。偶然、ここに来て、戦って、います』オムラ社由来の偽装プロトコル!なんという完璧な偽装工作か!

「アイエエエ!」王は震えながら逃走!だが、バトウキンは恐るべき速さで回り込む!『ドーモ、バトウキンです!』恐るべき鋼鉄の復讐戦士が発する殺気の前に、王はしめやかに失禁!『大きな激しい怒り!』バトウキンはカタナを収納!大型の弓矢を取り出す!

おお、見よ!その矢はスーホが準備していたオムラ製ダイナマイトヤジリが装備されている!狙いは王の頭だ!「ア、アイエエエ…」王は死を覚悟した。『今なら投降を受け付けています。オムラは寛大です』「ほ、本当か!投降します。タスケテ!」王は両手を上げた。

『投降を受け入れました』バトウキンは言った。王の胴体に狙いを定めながら。「え…」『ありがとうございます』ダイナマイト矢は放たれた。「アババーッ!!」王の胴体に刺さった矢は爆発し、衝撃で飛んだ首は、パーティー会場の暖炉の中に完璧な物理計算で入り込んだ。ポイント倍点!

『スーホ=サン。ミッション完了な…』バトウキンは誰にともなく言った。身体の各所にスパークが走る。急造のボディーに自身のニンジャソウル。どうにか復讐が終わるまで保ってくれた。だが、その時である!バトウキンの前に、赤黒い影が降り立った!「ドーモ、バトウキン=サン。ニンジャスレイヤーです」

◆◆◆
『ピガーッ!サヨナラ!』バトウキンを追いかけ、王の城に遅れて到着したスーホは、爆発音と共に、バトウキンの声を聞いた。それと同時に、スーホの目の前に何かが飛んできた。おお…ナムサン!バトウキンの首である!「ア、アア…!おまえ…!」「ピガガッ…スーホ=サン…王は討ちました…」

バトウキンはノイズ混じりの合成音声で答えた。『どのみち…私はあの身体でも長くは生きられなかった…ピガッ…しかし…これで分かったでしょう…復讐の先に…あるものなど…こんなものです…』「そんな、僕はまだ、お前と一緒に…」スーホは言葉を詰まらせ、涙を流した。

『スーホ=サン…ピガッ…最後のお願いです…私の身体を使って…楽器を作ってください…せめて…貴方と…私と…皆さんの心の慰めにならんことを…』バトウキンの目から光が消えた。機能が停止したのだ。スーホは両手を合わせ、バトウキンへの祈りを捧げた。その顔を涙で濡らしながら。

◆◆◆
数日後、スーホはバトウキンの頭部から作った楽器を仲間の前で奏でていた。「我が愛馬よ…コトダマとオムラに包まれてあれ…オームラ…オムラ…オームラ…」美しい音色と、心に沁みるその歌に、皆は静かに耳を傾けていた。

『スーホズ・ホワイトホース』終わり

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