『イチロー・モリタ・ケースファイルズ』(イチロー・モリタの事件簿)

『イチロー・モリタ・ケースファイルズ』

ネオサイタマ湾に浮かぶ孤島に存在するホテル、『カブキ座館』。そこで、恐るべき事件が発生した。宿泊者の1人であるナリキン社の重役、ゴゴドウが何者かに殺害されたのだ。

そして、ゴゴドウだけではない。タワマン社のテガタニ専務、ラセツ・ヤクザクランのノリゼ、カブキ座館管理人のハスミズも犠牲となった。次々と起きる惨劇!そこに蠢くのは、カブキ座館に伝わる怪物、「ベニラセツ」の影!

残された容疑者は4名!果たして、連続殺人犯「ベニラセツ」とは誰なのか!?この謎に挑むのは、偶然、カブキ座館に宿泊していた暗黒非合法探偵、イチロー・モリタ!大ホールに関係者を集めた彼は、ついに事件の全容を解明し始めた!

◆◆◆
「…つまり、ノリゼ=サンの密室殺人は、このワイヤーを使った絞殺だったわけです。つまり、ベニラセツは貴方だ。カドウ=サン」「ヌゥッ…」トレンチコートにハンチング帽の探偵、イチロー・モリタは淡々と証拠を突きつける。事件の謎の解明は佳境に入っていた。

証拠を突きつけられ、動揺するのは、ニガイ社の社長、カドウである。周囲にいた残り3名の容疑者、アカノ、アオタ、キガネ達にも動揺が広がった。「ま、まさか…カドウ=サンが…?」「ベニラセツ…?」「アイエエエ…」

「でも、モリタ=サン、ハスミズ=サンの殺害については、どう証明するんです?あれには目立った証拠なんて…」モリタの助手役の少女、ココノセが不安げに言った。「そ、そうだ!彼女の部屋と私の部屋を往復すれば最低20分はかかる!」カドウは覇気を取り戻し、言った。

「それに、他の殺された者もそうだ。私の居た場所から現場からはかなりの距離がある!その推理では私のアリバイを崩すことはできんぞ!」カドウは勝ち誇って言った。「モリタ=サン…」ココノセは不安げにモリタを見た。「そのアリバイを崩す証拠ならば、ここにあります」

「何…!?」予想外の返答にカドウが狼狽える!「まずは皆さん、これを見てください」モリタは情報端末の画面を容疑者達に見せた。「監視カメラの映像です」「エッ…」「監視カメラ…?」容疑者達が戸惑う。「でも、モリタ=サン。監視カメラは既に何者かに破壊されたのでは」アカノが指摘した。

「その通りです」モリタが答えた。「それじゃあ、ナンデ…」「知れたこと。一つだけ壊れていないカメラがあったのです」「でも、映っているのは室内ではなく、外の渡り廊下ですよ?」アオタも訝しむ。「犯人の破壊により、向きがズレたからですね」モリタがこともなげに言った。

「そんな!こんな所の映像なんて、何の証拠にも…」「まあまあ、今から、この映像をスロー再生します。皆さん、この部分をご覧ください」ズームされる映像には…おお、ナムサン!ニンジャ装束を着て高速移動するカドウの姿が映っているではないか!?

「アイエエエ!ニンジャナンデ!?」ココノセが悲鳴を上げる!「そう、カドウ=サンはニンジャ速度で距離の問題を解決していたのです。カドウ=サン。貴方が犯人で、ニンジャだ!」モリタは決断的に言い、トレンチコートとハンチング帽を脱ぎ捨て、赤黒いのニンジャ装束を顕にした!

「ドーモ、カドウ=サン、ニンジャスレイヤーです!」「ヌゥゥーッ!」カドウもまたスーツを脱ぎ捨て、ニンジャ装束を顕にする!「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン!プレングラスです!バレては仕方ない!死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」

プレングラスはカタナを構え、ニンジャスレイヤーに斬りかかった!「イヤーッ!」「グワーッ!」だが、そのカタナはチョップでへし折られ、次の瞬間、プレングラスの心臓はニンジャスレイヤーに握りつぶされていた!「サヨナラ!」プレングラスは爆発四散!

「アイエエエ…まさか、カドウ=サンが犯人でニンジャだったなんて…」ココノセは唖然として言った。「でもこれで事件は解決…」「まだ終わっておらん」「アイエッ?」ニンジャスレイヤーは残された3人のうちの1人、アカノの方を向いた。

「アカノ=サン。オヌシは今のイクサを目で正確に追っていた。ニンジャ動体視力!つまり、オヌシもニンジャだ!」「ヌゥゥーッ!」アカノはニンジャ装束を顕にした!「ドーモ、スリーアンダーです!バレては仕方ない!死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」

スリーアンダーはヤリを構え突進!「イヤーッ!」「グワーッ!」だが、ニンジャスレイヤーのキックのキックがヤリをへし折る!その勢いのままスリーアンダーの首を蹴り千切り飛ばした!「アバーッ!サヨナラ!」スリーアンダーは爆発四散!

「アイエエエ!?アカノ=サンもニンジャナンデ!?で、でもこれで全て終わ」「まだ終わっておらん」「アイエッ?」ニンジャスレイヤーはさらに狼狽するココノセをよそに、残るアオタ・キガネに向き直った。そして、ある物を掲げる!

「オヌシらの荷物にあったのはアマクダリのIDとエンブレム!つまり、オヌシらもニンジャだ!」「「ヌゥゥーッ!!」」2人はニンジャ装束を顕にした!「ドーモ!ラストオーダーです!」「アボートです!」「「バレては仕方ない!死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ね!」」

2人は異口同音にニンジャスレイヤーに襲いかかる!「イヤーッ!」「グワーッ!」だが、ニンジャスレイヤーは高速回転し、カッターめいて2人の胴体を両断した!「「アババーッ!!サヨナラ!!」」ラストオーダーとアボートは爆発四散!

「アイ…アイエーエエエ!!」たちまちホールは酸鼻を極めるジゴク・ブラッドプールと化し、ココノセは絶叫した!ニンジャスレイヤーはココノセに向き直る。「ヒッ!」ココノセは失禁しながら後ずさる!「チガウ…ニンジャチガウ…!チガウ…アイエ…」ココノセは失神した。

◆◆◆
その後、ココノセは匿名の通報を受けやってきたネオサイタマ市警に保護された。状況から、彼女も容疑者と思われてもおかしくなかったが、ニンジャのことを話した途端に担当者の目の色が変わった。事情聴取の後、ココノセは解放された。

その数日後、彼女は記者の仕事に戻った。今となっては、どこからが夢でどこまでが現実だったのかすら曖昧だ。直面したのはそれほど滅茶苦茶な状況だったのだから。(モリタ=サン…)あの人も現実では無かったのだろうか?即席のコンビを組んだ時間が思い出される。

ココノセはネオサイタマの雑踏の中に、ふと、トレンチコートとハンチング帽の男性を見た気がした。「モリタ=サン…?」だがその姿は一瞬で消えていた。見間違いだったのだろう。ココノセは再び歩き出した。今度はニンジャに会わぬよう祈りながら。

『イチロー・モリタ・ケースファイルズ』終わり

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