利益とキャッシュフローの違い

⚪︎はじめに
以前、資金調達サポートをしている起業家に利益とキャッシュフローの違いは何か、なぜ違いが出るのか、という話をしました。
思いのほか感謝されたので他のクライアントにも試してみようと思い、「利益とキャッシュフローの違いを説明できますか?」と質問してみました。
すると、私が詳細な説明をすることになりました。
先月は「事業計画書は必要か?」(https://note.com/yourtory/n/nc2164e207dec)を投稿しましたが、そこで触れた内容(キャッシュフロー)の深掘りという位置付けになりそうです。

⚪︎利益とは
ざっくりいうと、売上ー費用=利益です。5つある利益の違いは上記のURLでまとめてますのでぜひご覧ください。
ここで税金についても少し触れますが、益金ー損金=課税所得となり、この課税所得に税率(約30%?)を乗じて税金が算出されます。利益 × 税率 = 税金ではないんですね。

⚪︎キャッシュフローとは
利益と混同しやすいのがこのキャッシュフローです。キャッシュフローは現預金の増減です。つまり、現金が増えるとプラス、減るとマイナスです。
週次・月次・年次で現預金の増減を計算する場合と、営業活動・投資活動・財務活動の用途別に現預金の増減を計算する場合があります。
総じて、経営で最も重要な指標の一つです。
私の経験だと、利益はキャッシュフローより重要でないケースが多いです。特に中小企業(*)においては。

*  業種や親会社・子会社によって変わってきますが、大企業=資本金1億円以上 or 従業員300人以上で、それ以外は中小企業というざっくりした定義を適用。

⚪︎利益とキャッシュフローの違い
さてさて本題へ。この二つは結構違うんですよ。
売掛金・買掛金・減価償却費・銀行借入とその返済、何か聞き覚えのあるものはありますか?
これら全て、「売上や費用の増減」と「現預金の増減」にラグが出ます。
例えば、サービスを提供して請求書を顧客に送るとそのタイミングで売掛金(後で回収する売上)を計上します。この時、仕訳処理は以下のとおりです。
仕 訳)→ 売掛金(BS) / 売上高(PL)
売上が増えても、まだ現預金は増えません。
次に、購入した有形固定資産(建物・車両・機械設備など)は使用期間に応じて費用計上してその減耗分を企業会計に反映させることになります。しかし、購入した際に代金は支払っているので利益とキャッシュフローにラグが生じます。
購入時の仕訳)→ 有形固定資産(BS) / 現預金(BS) 
償却時の仕訳)→ 減価償却費(PL) / 有形固定資産(BS)
最後に、銀行からお金を借りても売上(PL)は増えず、この借入を返済しても費用(PL)は増えません。
借入時の仕訳)→ 現預金(BS)/  借入金(BS)
返済時の仕訳)→ 借入金(BS) / 現預金(BS)(*)
ここで答え的なことを言いますが、
・売上と費用は損益取引なのでPLが動く
・借入(出資も含む)と返済はいずれも資本取引なのでBSが動く
のであればこれらの仕分け処理が発生すると「利益とキャッシュフローにラグが出る」のは当然といえば当然です。
つまり、利益(PL)  =  売上(PL)ー  費用(PL)であり、キャッシュフロー  =  現預金の増減(BS)なのでそりゃあ違うんですよ、そもそも。

*  利息の支払い(PL)は営業外費用です。この分は損益取引に含まれます。

⚪︎おわりに
利益とキャッシュフローはほぼ確実にラグが出ます。事業が大きく、取引が多ければ尚更です。そのタイミング、金額、理由は経営者が理解し説明できるべきだと私は思います。
また、この投稿をスラスラ読んで内容を難なく理解できるなら、経営に関する数字の基礎は押さえられていると思います。
ちなみに、私は金融マン時代にこの違いをよくお客様に説明していました。
融資相談の5割を断り、3割は連絡が途絶え、1割は後任に残すのが相場感で、10件相談が来ても私が着金まで担当するのは1件くらいでした。
税金でご飯を食べさせてもらっている身として(公庫職員は準公務員のため)、僕が担当したお客様には何か持って帰って欲しいといつも思っていたんです。
なので、利益とキャッシュフローの違いは何かにつけて融資相談時のネタにしていました。ここまでお読み頂いた皆様にも、何か残せていたら幸いです。

令和6年2月29日(閏年!!)
ユアトリー株式会社
上原 宇行


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