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スーファミのカセットを我慢してCDラジカセを買った小6の冬

僕は小学6年生のときのお年玉でCDラジカセを買った。それまでアイドルや音楽番組にまったく興味なかった僕が、スーファミのカセットを我慢してまでCDラジカセを買うのには理由があったのだ。

冬休みに入る前、クラスの女子から「ねえ、あんたCHAGE and ASKA知らんやろ?」と言われ、頭が真っ白になったからである。

まったく知らなかった。ぜんっぜんわからなかった。でも明らかにニヤニヤしているその顔を前にして、知らないとは言えず「知っとるわい!テレビで見てるわ!」とだけ言って逃げるように返ってきた悔しい思い出があるのだ。

帰り道、CHAGE and ASKAって誰やねんと思いながらも頭の中では女子プロレスラーのライオネス飛鳥を想像していたくらいで、二人だということも後で知ったほど、アニメと志村けんしかしらないボーイだったのだ。

こんな悔しい思いはもう絶対にしない。「来年から中学やぞ?これでいいんか?」と何度も言い聞かせ、ぜったい買うと決めていたスーファミのカセットを我慢して、悲願のCDラジカセを手に入れたのだ。

しかし、CDラジカセを買うことで頭がいっぱいになっていた僕は、店員さんから「なにかCDも買っていきますか?」と聞かれてまた頭が真っ白になってしまったのである。

本来であれば、いや、むしろここでこそ、当然のごとく「CHAGE and ASKAのアルバムください」しかない、オンリーアンサーなわけだが、僕の頭からはCHAGE and ASKAの名前は消えていた。正確に言うと、覚えていなかったのだ。

そんな僕が選んだのは、毎週楽しみに見ているアニメ「ちびまる子ちゃん」の主題歌、「おどるポンポコリン」だ。曲名を知っている曲がそれしかなかった。

家に帰り、僕はおどるポンポコリンをエンドレスリピートし続けた。でも本当に幸せだった。僕の、僕だけのCDラジカセがある。好きなだけ聴いていいのだ。カップリング曲も聴きまくった。カラオケバージョンも聴きまくった。

CDってなんで音がなるんや?
なんでこんなに光ってるんや?
裏面触ったらあかんて兄ちゃんが言ってたな。

と、ひとしきり楽しむころにはクラスの女子の顔も、CHAGE and ASKAのことも忘れていた。(CHAGE and ASKAはずっと忘れている)

そんな僕が、次に買うCDはB'zの「BLOWIN」なのだが、なぜ急にそうなったかは、また別のおはなし。

おわり。

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