(ソネット) 「兆候 秋」





道々に並ぶ葉が暗緑の網となり
崩れかけた紅の花の輪を包む
鳩は 何時も
思いもかけぬ所に降りて佇む

季節が次第に消えてゆく
風が境界を越えて流れてゆく
秋の川の表面 おもてを群青に染めぬき
澄みわたる日没の空が一刻輝く

これらの静寂の内には
小さな足音が隠れている
崩壊を報せるように微かに

水量を増す川底に汚泥が積もり
群れ交う鳥の影が葦原に浮かぶ
訪れる夜の前には青が水際立つ