(ソネット) 「秋の諧調」





黄金を湛えた川縁の道 夕刻
暑気と湿気の きつい残り香が漂い
午睡のような秋の静寂のなか
何処までも風を澄ませてゆく

影となって反映する記憶
水 揺れる緋の花々 車道の音響
思い思いに通行する人々
全てがひとつの諧調で束ねられる

これらの事象はやがてまた
調和を崩してゆく
喪失された美と均衡を

だが 開かれた秋の扉の奥処から
吹きつけてくる 黄金の風が
この一刻を 永遠に染める