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きものの始め方 マイサイズはいつ手に入れる

そう言えば着物を着始めた頃は
自分のものを買ったり、
ましてや誂えたりなんてとても出来ないと
思い込んでいた。
着物はとても高価なものだと思っていたし
(事実高価なものも沢山ある)
そんな贅沢は幼い子を育てていて、
現金収入のない私には身の丈に合わない
事と決め込んでいた。
着物を買うどころか
お稽古代を家計から出すことすら
後ろめたく思って、必要以上に
夫に申し訳ないとすら思っていた。
文字通り昼夜なく子どもを見守り育て、
家事も全部やって、
ちゃんと家族の為に働いているのに
何故そんな卑屈に、と今なら思う。

結局、実家の箪笥に色々あったと
思い出して、母に頼んで
桐箪笥を開けてもらった。
初めて見る着物が何枚かあり
そのなかの比較的悪くない一枚を選び
長い間それを着て練習していた。
当時の先生もそれでいいよと
言ってくださったし、
新しいものを用意できなかった私に
それは有難かった。
ただ、母は私より10センチは小さくて、
しかも22歳ごろに誂えた着物だったので
身幅もとても狭い。
つまり私には小さくて、
そのために腰紐をベストな位置よりも
下に締めたりと色々
塩梅しながら着ることになり
あとで自分のサイズの着物を
手に入れたあとも
その時についた癖を治すのに
まあまあ苦労した。
結局、スタンダードを身につける前に
イレギュラーを身につけてしまった
弊害がここにある。

だから着付け教室がマイサイズ推奨と
言うにはちゃんと理由があるし、
もし私が初心者の人に着物どうしようと
聞かれたらサイズが合ったものが
いいよ、と答えると思う。
ただ一方で当時の私が
マイサイズじゃなきゃと言われていたら…
やっぱり着物は敷居が高い、
私には到底無理だと
挫けてすぐに諦めていたかもしれない。

お稽古代をだすこと、
月一回とはいえ週末に家を空けること、
幼児を置いて出掛けること、
その全部に勇気が必要だった当時の私。
これ以上のわがまま(と自分で
思い込んでいた)は言えなかった。

だから当時あるものでお稽古を
つけて頂けた事は今も感謝している。
早い段階で着物で外出も叶ったし
母の着物を着た私を見て、母はとても
喜んだ。
(母はそれを誂えただけで袖も通して
いなかった、そしてそれを
とても後ろめたく思っていた)
何より着物を諦めずに済んだ。
孤独な子育て期に、夢中になれる
自分の世界を持てた事で
私はうんと救われたし、
何よりあの時
着物を諦めずに済んだから今の私がある。

今なら、着物がないなら
少しでもサイズの合うものを
リサイクルきもので探そう等
諦めずに済む方法もいくつか浮かぶ。
サイズ違いで練習した結果も
実体験として知っている。
いよいよ自分の着物を誂えると
決心した日のワクワクもドキドキだって
知ってるし
何よりマイサイズの着心地も。
(最近ちょっとサイズアップして
実は少々身幅が厳しいのは別の話)

教える立場を意識した時、
ここまでのあれやこれやが
活きてくる。
その時は無駄な事だった、失敗した、
と惨めに恥ずかしく思った事ほど
実は得難い私だけの宝だったりもする。
私よりも有能で、
私よりも沢山着物も知識もお持ちの方は
山のようにいらっしゃるけど、
失敗や回り道で見つけてきたものは
私だって負けてないんじゃないかな。
実体験はつよい。


気に入りのポンデリング的なガラスの帯留め。



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