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用水インタビュー企画②株式会社 東洋設計技術センター副センター長 上坂達朗さん

今後の活動の参考になればと思い、用水に関わりのある人達にインタビューをして有り難いお話しを聞く企画をしていこうと思います!!

第二回目は株式会社 東洋設計 技術センター副センター長 上坂 達朗
さんです!

1956年に東洋設計に入社されてから様々な金沢の街の修景事業に関わってきたそうです。ちなみに金沢に流れる55本の用水を全て歩き、21の保全用水を選び保全基準案を作ったのも上坂さんらしいです。早く私も55本の用水を歩かなければ。。。

金沢用水開渠化の裏話

実は上坂さん、21の保全用水選定に関わっただけでなく、元金沢市長の山出 保さんが市長の時代におこなった、金沢の用水を開渠化する整備事業に携わった一人です。現在は街中が開渠化されていますが当初その事業は街中ではなく下流の農村集落の用水に親水空間を作る計画だったそうです。元々の発想は、金沢の経済人いわゆる旦那衆が用水再生を市長に提言したことによります。ですがそんな矢先に阪神大震災により、都市の中の水辺空間の大切さ(延焼遮断やライフラインとして)が叫ばれ、阪神大震災を教訓にして急遽、計画が農村集落から街中に変更になった。


鞍月用水せせらぎ通り開渠前
上坂さん撮影
鞍月用水せせらぎ通り快挙後
上坂さん撮影

また、開渠化に伴い、商店街の活性化も合わせて、用水沿いを安心して歩ける空間を造ろうということになったそうです。商店街の名前も、「香林坊下商店街」から現在の「せせらぎ通り商店街」に改名されました。

張り出し歩道

鞍月用水

街中の用水沿いを歩いてみると分かることがある。用水沿いの歩道が張り出している。これも用水を開渠化するにあたり、上坂さんが図面を引いたそうです。この張り出し歩道、何か標準規格などあるわけもないので、どのくらい張り出してもいいかは手探りだったため、何回も何回も図面を引いてはやり直し、仕入れの車(街中の用水は商店街を通るためお店の車が張り出し歩道の上に乗る)が乗っても壊れない絶妙な感覚で成立している。また、用水の断面はどこも同じでないため、何度も測量をしてそれぞれの張り出し方を考えたそうです。用水の幅を広げたいが車も通る。そのどちらの条件も成立させるために考えられた「張り出し歩道」。何気なく通っている歩道が実は宙に浮いていることに気付いている人は少ないのではないだろうか。

また、鞍月用水を歩いていくと住宅と住宅の間に張り出し歩道があり、ぶつからないようにカーブミラーがある場所がある。通常は住宅街を回り道してもらう形になるがどうしても用水沿いを歩いてほしいという上坂さん含め、関わった人達の思いである。これは滋賀県にある甲良町を参考にしたそうです。ぜひ、今度行って見たいものである。

推し用水は?

もちろん街中に流れる三つの用水(辰巳用水・鞍月用水・大野庄用水)も綺麗だが、
それ以外の用水で用水にドップリハマる入門編として中村高畠用水を見て欲しいという。程よく住宅街で時期もあるが水量のダイナミックさがものすごい用水です。
散歩に適していますね。


まとめ

上坂さんがこれまでしてきた修景事業をまとめた冊子を見せてもらった。
え、そこも、え、そこもですか!とあまりに見慣れた風景がたくさん掲載されていたので驚いてしまった。なぜ、街のためにそこまで出来るのかというと、昔、用水を調査している際に観光客が「この川(用水)汚いね。」と話をしているのが聞こえてきたそうです。それを聞いて街のために用水を綺麗にしていくのが自分の使命だと思ったそうです。用水とは、自然とは、何なのか。特に普段の生活にあってもなくても変わらないと言えばそれまでだが、水辺で一人コーヒーを飲んでいる時を想像してほしい。水の流れ、水のせせらぎの音、水の中で泳ぐ魚、これらの要素があることでコーヒーはより美味しく感じ、落ち着くだろう。つまり自然には人を癒す力がある。用水に蓋をして、その上を駐車場にした方が良いのか、開渠化して水辺でコーヒーを飲むのか、どちらの選択も間違いではないが上坂さんを含め、金沢市は水辺でコーヒーを飲むことを選んだわけである。

金沢にはまだ見ぬ用水の達人がいるのだろう。いつか会える日を楽しみにする。


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