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俺の住む街には激エロ巫女がいる

1.
最寄り駅から2km歩いたら激エロ巫女がいるらしい。GoogleMapが言うのだからきっと間違いはない筈だ。確かに荒唐無稽な話ではある。だがそれを言ったらもっと荒唐無稽度数が高い話なんてこの世にはざらにあるし、激エロ巫女の不存在も今のところ証明されていないのだから、信じてみる価値はあるだろう。こうして俺は2km先、徒歩20分の果てにいる激エロ巫女の元へと向かった。ちなみに激エロ巫女がいる建物の隣は区民会館だった。そんな所に区民会館を建てるな。


2.
夏の日射しと新入社員はよく似ていると思う。何でもやればやるだけ良いと思っている所が特に。照り付ければ照り付けるだけ良いと思っている太陽の下、憐れな俺は歩を進めている。空は雲一つなく、成層圏を越えてその先まで見通せそうな程晴れていた。これが夏以外の季節であったなら澄み渡った青空を眺めて人生について思いを巡らせ、意味も無く空の写真を撮ってSNSに上げていたのだろうか。ただ、生憎今は夏真っ盛りなのでそんな余裕は無かったし、俺を日射しから守ってくれない青空には大体憎悪しか抱けなかった。

そもそも俺は本当に激エロ巫女に会いたいのだろうか?会ったところで、何を話したいのだろうか?暑さと日射しで茹だった脳を回転させてみてもよく分からない。歩き始めた時は俺の住まう街にいる激エロ巫女を一目拝んでみたいし、あわよくばここで書けない事もしてもらおうと考えていたのに、夏空に焼かれた今ではそのような考えは雲散霧消してしまった。そもそも激エロ巫女とは何なのだろうか。巫女の業務についてはよく知らないが、多分業務においてエロさは求められないだろう。それ位は知っている。もしもエロを全面に打ち出してくる巫女及びそのような巫女を擁する神社があるとしたら、さぞ他の神社から反感を買うと思う。ただ普通の神社と激エロ巫女がいる神社どちらに行きたいか参拝客目線で考えると、やっぱり激エロ巫女がいる神社に行きたくなるから、そういった面でも普通の神社から怒りと不興を買うんだろうな。確実に俺が言えた立場では無いが、どちらにも良いところはあるから歩み寄って欲しい。

こんな事を考えながら歩いていても、歩き続ける限りは目的地へと近付いていく。気付けば、激エロ巫女がいる建物は目の前にあった。


3.
結論から言うとそこにあったのはただの雑居ビルだったし、入っているどのテナントにも激エロ巫女がいそうなものは無かった。さっきまで自分が本当に激エロ巫女に会いたいのか自問自答していた癖に、会えない事が分かると落胆と脱力感しか残らなかった。建物を間違えていたのかと考えもう一度GoogleMapで調べてみたが、激エロ巫女自体が検索に引っ掛かる事はなく、少なくともGoogleMapが認識している範囲では激エロ巫女は日本のどこにもいないことが判明した。


4.
今思えば目的は何でも良かったんだと思う、激エロ巫女でもキリンケルベロスでもUFOでも何でも、ループしているような日常にほんの少しの毒と非日常を混ぜ込められるなら。なんであの時GoogleMapに激エロ巫女が表示されたかについては終ぞ分からないままだけど、もう考えるのも面倒臭くなってきたし、仕事とか生活に対する逃避として非日常を求めた心が作った幻だったことにしておこう。そんなことより帰り道に食べたサーティワンアイスクリームの味について想いを馳せた方が有意義だと思うし。とりあえずはこんな感じで。

そうそう、激エロナースが付きっきりで看病してくれる病院が近くにあると風の噂で聞いたから今度行ってみようと思います。

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