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『ライブアルバム』という作品について(PORCUPINE TREE)

PORCUPINE TREEというバンドを知ったのはフォロワーの maybejunwill さんのこの記事でした。

リーダーのSteen Wilsonの名はプロデューサーとして知っていましたが、自身でもバンドやソロで随分前から活躍していたんです。
若い時分とは違って、聴く音楽が狭くなっている中、maybejunwillさんは毎回充実した記事を提供してくれるので、spotifyをフル活用しています。

さて、このPORCUPINE TREE、かの記事を読んだ後、アルバムをいくつかピックアップしてさらっと聴いたのですが、なぜかあまり響かなかったんですね。ある曲はいいけどアルバムとしてはどうなのか、という感じでした。
それが、昨年末に発売されたライブアルバム『CLOSURE / CONTINUATION. LIVE. AMSTERDAM 07/11/22』を聴いたら、全てが好きになってしまいました。

ライブアルバムというのは不思議なものです。
当然ながらライン録音されてしっかりミックスされているので、ライブそのものではありませんが、パラ録りではなくいわゆる一発録りなので、凝りに凝ったスタジオアルバムとは全くの別作品となります。

ライブ盤の魅力は何といっても生々しさと、スタジオ盤とは明らかに少ない音数でアレンジされた演奏を聴くことなので、ファン向けであるのは確かだと思います。

PORCUPINE TREEは実はあまりパンチがない、と感じているのですが、それはSteen Wilsonのボーカルにあると思います。
曲もリフもカッコいいのですが、ロックのメインボーカルとしては少々パワーがないというか。
でも、それが良いな、と思ったらもう問題はないですね。
この辺りはスルメ系な感じもします。

ボーカルはやはりライブ盤がダイレクトに届くように思います。
スタジオ盤は完璧にする分、味気なく感じるところもあるんですよね。
特にDeepPurpleなんかはスタジオ盤をほとんど聴いたことがありません。かろうじて『In Rock』くらいでしょうか。
名盤『Live In Japan』を聴いてしまうと、スタジオ盤には戻れないです。

さて、PORCUPINE TREEの『CLOSURE / CONTINUATION. LIVE. AMSTERDAM 07/11/22』は他の自身のライブアルバムより洗練された感じがします。
新しいのでテクノロジー的にも演奏技術的にも当然かもしれませんが、ずっと聴いていられるようなコンセプトアルバムのように、統一感があります。
彼らのアルバムをさらっとしか聴いていなかったので、これはスタジオ盤でこういうコンセプトアルバムがあるのかと思ったくらいでした。

とても心地よく静かにダークな曲たち、それにあまり抑揚のないSteen Wilsonのボーカルがマッチしており、今のお気に入りです。
そして何より音がいい。
プロデューサーとしての手腕は折り紙付きですからね。
彼はピンクフロイドのアルバムのように、音圧稼ぎのミックスをしないので、他の音楽を聴いた後は音量を上げる必要があります。
それでいいのです。
音圧アゲアゲな昨今のミックスには辟易します。
それでも多少は上げないとしょぼく感じて聴かれない残念な現実があるので、よほど有名か拘りを持っていないと音圧アップの誘惑には勝てないでしょう。
ちなみに、Toolの『Fear Inoculum』も音圧控えめですのでダイナミックレンジが広く、やはりしっかり音が生きているのですんなりその世界に浸ることができます。


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