ヤッパリ「まちづくりはひとづくり」でしょう〜その4『WAKAMONO大学』構想をまとめる

南アルプス市役所の保坂久さんの連載レポートです。前回はこちらです。

若者たちの熱と思いをカタチにしたい 

「南アルプスコミュニティ」を取り巻く若者たちの熱は高まり、地域や仲間たちを思う彼ら彼女らの思いは尊い。その熱や思いをまちづくりに向けてもらうことはできないか。この組織の立場として、その熱や思いをカタチにすることができないかと考え始めました。

まず、背景として、二つのことを踏まえることにしました。ひとつは、これまでの高度経済成長期の成功体験や過去の政策を基にしたこれまでの方針の延長線上に目標をおく取り組みでは、増大するニーズや発生する課題に対応できなくなっていること。社会の変化があまりに急だからです。

もうひとつは、自治会やPTA、消防団のような地域型コミュニティーや、子育てや介護支援、文化スポーツなど特定な課題(テーマ)に取り組むテーマ型コミュニティーが活発に活動して、行政サービスが届かない分野を担い、トータルで公共サービスを賄うという社会への移行が求められること。将来の増大する課題やニーズに社会が対応していくためには、行政の力だけでは限界があるからです。

ところが、まったく新しい価値観やアイデアによる対策が求められているのに、柔軟な発想や自由な議論により方向性を出していく場や機能がありません。20年後、30年後の将来を決定するまちづくりの場に、そのとき社会を担う若者たちがほとんど関わっていません。彼らが将来、過去の政策決定による成果を素直に納得して受け入れられるのか。そんな疑問を基にして企画を考え始めました。

流れはこうです。

まちづくりの政策決定は、主体者である市民が行うこと。
1.その政策決定には、将来を担う若者世代がしっかりと関わっていること。
2.政策決定に関わる若者たちは、まちづくりや将来に関心を持っていること。
3.その若者たちは、政策決定やまちづくりに関わる仕組みを理解し、かかわり方を身につけていなければならない。

また、若者たちがまちやコミュニティーに関心を持ち、何かに取り組んだり何かを起こしたりすることで社会に波紋が広がり、これまで無関心だった市民の関心を呼び起こしたり、若者以外の他の世代に対しても影響を及ぼして行くのだろうと予測を立てました。それらが総合的に作用することで、まちが穏やかに、でも確実に変化してあるべき姿に近づくに違いないと考えたのです。

これで、事業の方向性や目的が明らかになりました。

あちこちから湧いてくるアイデアをなんとかまとめあげる

「まちづくりに関心のある若者たちが、政策決定に関わるまちになる」。この事業が入る施策の方向と目的が明らかになりました。

それまで市の政策担当として、ハード整備や条例などのルールづくり、計画づくりをしてきましたが、予算を消化したり、例規、計画が出来たりしても、成果につながる手応えが感じられませんでした。やはり、人(市民)が変わらなければ、まちは変わらないのだ。そんな思いを強くしていた時期でした。

この目的達成のための事業として、企画を考えました。

資源としては、熱や思いを持った若者たちがいると言うこと。自分の立場がかなり自由に企画立案でき、実行できる可能性が高いということ。条件としては、今年中に具体化しないと来年は人事で異動してしまうだろうということ。そこで、「南アルプスコミュニティ」に集まる若者たちを対象に、人材育成事業を企画することにしました。

意識したことは三点です。

一点目は、専門性が必要で、参加者が興味を持って取り組み、終了時には事業の目的が達成できること。
二点目は、一過性の打ち上げ花火にせず、地域に根ざし持続的な効果につなげること。
三点目は、市外の組織や企業と連携し、広がりを待たせること。

以上のことを、当時、次のように表しています。

その頃、新潟県の燕市の事例や東京の大手広告会社の企画など、事業の参考になる情報も見ながら内部調整を進め、いよいよ予算の市長査定が迫って来た時期に、冒頭に記した状況になっていたのです。

結局、山梨県立大学と山日YBSグループ(株)デジタルデビジョンのご理解とご協力により、連携して事業を行うことになりました。ずいぶんほっとしたことを覚えています。大学が関わることで事業成果を体系化されること、地域のマスコミ企業が関わることで情報発信が行われることを期待していました。

もちろん、すべてがこのように順序立てて考えられたのではなく、ごちゃごちゃと同時に湧き上がってきたものを、あっちにまとめ、こっちに加えして作って行ったことは間違いないです。

最終の企画資料はこんなカタチで市長査定に臨みました。



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