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2019/10/20 舞台「フラガール -dance for smile-」観劇

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公演タイトル:「フラガール -dance for smile-」
キャスト:井上小百合、矢島舞美、福島雪菜、太田奈緒他
劇場:日本青年館ホール
総合演出:河毛俊作/構成演出:岡村俊一
個人評価:★★★★★★★★★☆

【総評】
正直S席で観れて非常に良かったと思える作品だった。舞台演出の迫力、役者の熱量、ストーリー、フラダンスのエンターテイメント性、全てにおいて大満足だった。最後のシーンでは客席の多くの人が涙をすっている音が聞こえてくるくらい感動の嵐が起こった。フラガールということもあり、夢見る若い少女たちが主役なので皆キラキラしていて眩しいくらいだった、そして可愛かった。万人にオススメしたい傑作といっても言い過ぎではない作品。

【鑑賞動機】
応援する劇団4ドル50セントの女優福島雪菜さんが、かなりの大役で出演するから。また、構成演出を務める岡村俊一さんや、矢島舞美さん、味方良介さんといったキャストも以前舞台で拝見していて良かったので、他のキャストさん目当てでも鑑賞。「フラガール」に関しては原作、映画共に未見。あらすじ自体も今回の舞台を見ると決まってから知ったほど。

【世界観・演出】
演出全体はかなりお金をかけて作り込んでいる印象。まず舞台装置に関しては、主に背景のスクリーンに映る景色で場転する作りで劇団☆新感線の「けむりの軍団」を思い出した。また上手くスクリーンに映る映像を活かしており、フラダンスをするハワイ人の映像を映し、役者たちがそれを客席側を向いて見ている演技をする(実際には彼女らは映像を見ていない)シーンや、フラガールたちの写真を撮ったシーンでスクリーンにその写真を映すシーンは演出的に良かった。そしてやはり照明の迫力が凄かった。特に印象に残っているのは、先生がダンスの見本を見せるシーンや最後の井上小百合演じるヒロインがフラダンスをするシーンがフラメンコみたいな赤と緑を組み合わせた照明でとても印象的だった。また、福島雪菜演じる少女の父親が、フラガールを目指していることを知り、今までの炭鉱時代の苦労を独白するシーンのつるはしを振り下ろした時の照明も良かった。

【ストーリー・内容】
1960年代、今まで炭鉱事業で栄えてきた現在の福島県いわき市は、時代が炭鉱から石油にシフトするにつれて事業は衰退の一途を辿り、厳しい人員削減に追われていた。そんな中、東京からダンスの先生を招いて、福島が温泉地であることを活かしてハワイアンセンターを立ち上げるプロジェクトが開始する。しかし、都会から来た先生は田舎すぎてハワイとは程遠い世界に呆然として帰ろうとしたり、地元民は炭鉱事業のアイデンティティを捨てきれずハワイアンセンタープロジェクトに反対したりと困難に陥っていく。このストーリーは1960年代の話であるが、時代の変遷によって既存事業が新規事業に取って代わられてしまう事態は現代でも起きているため、非常に現代と重なる部分もあって共感できた。何十年も炭鉱を掘り続けてきたのに斜陽産業となって失われてしまう世知辛さは、キャストの演技の熱量も相まって非常に心を動かされた。また、フラガールを目指す少女たちが両親の反対に遭いながらも続けていく姿にも感動した。この構造も、自分のやりたい職を求める現代の若者とも似通った部分があって非常に共感しやすい内容で良かった。

【キャスト・キャラクター】
個人的に好きだったキャストは、まずは先生を演じる矢島舞美さん。都会人で上品な気の強い女性を上手く演じていて良かった。最初は田舎を馬鹿にしていたが、人々の思いや人間味を感じて徐々に地元の人々と一丸となってハワイアン事業に貢献する姿が非常に魅力的だった。また、ドラマ「3年A組」にも出演していた富田望生さんの演技は初めて拝見したが、良い意味でぽっちゃりした体型を活かして笑いを取るシーンがあって良かった。そして何と言っても劇団4ドル50セントの福島雪菜さん、劇団を離れて大舞台の主役級のキャスティングは初めてだったと思うが、方言を上手く使いながら健気な少女を演じきっていて素晴らしかった。特に、夕張に行ってしまうシーンはとても感動したし、その後も紀美子の脳裏で一緒に踊っているシーンを演じてフラダンスをしているシーンはとても印象に残った。キャスト全員に言えることは、とにかく熱量。台詞一つ一つにこもる思いがとても心に刺さるものが多かった。そしてフラダンス、練習に練習を積んで磨き上げられたものが大舞台で観れて大満足。

【舞台の深み】
現代と重なるような時代の移り変わりに生きる人間たちと、フラダンスというパフォーマンスだと思う。この舞台は、かなりストーリーありきな芝居である以上内容の知らない観客にも理解できるように構成されないといけないが、ちゃんとストーリーの知らない自分にも内容がスッと入ってきたので、構成演出を務めた岡村さんはさすがだと思った。そして、ストーリーの途中で度々ダンスシーンが入れられたりと、観客を飽きさせない構成になっているのも見事だと思った。そしてキャストの熱量。それに尽きる。

【印象に残ったシーン】
印象に残ったシーンは、大きく二つ。一つ目は早苗(福島雪菜)がフラダンスを習いに行っていることが父親にバレて連れていかれるシーン、その後父親と共に夕張に行くことになり、紀美子たちとお別れするシーン。その時鳴り響いた汽笛が印象的でドラマ性を高めている。もう一つが小百合(富田望生)の父親が事故死し、周りからは親不孝者とフラガールになることを反対されるも、父親のためにもフラガールになることを決意するシーン。小百合の芯の太さを示した印象深いシーンだった。

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