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ペイ・フォアード可能の王国

第2回アドラー心理学ゼミの中で、話題の取り上げられた映画作品。
この映画の日本語訳は、「恩送り」です。

この作品の中の恩送りとは、他者に恩を売って、その見返りを得るのではなく、受けた恩を他の人に返すということです。

少し映画の内容を説明すると、主人公の少年が新任の教師から社会科の課題として、「社会を変える方法を考え、それを実行してみよう」というのを与えられます。それを実践するために、悪い世の中を変えるには、一人の人が3人に善い行いをする。善い行いを受けた3人は、それぞれまた別の3人に受けた恩を送り続ける。そうすればネズミ算式に善い行いをする人が増えて、世の中は善い人だらけになるというユートピア思想のアイデアを発見し、それを実践するというお話です。

では、なぜこの作品とアドラー心理学が結びつくのかと言うと、今回テーマで取り上げられた、共同体感覚とウエルビーイングに関連するからです。

ウエルビーイングの条件として、自分の持ってい能力を活かし、他者に貢献することを、一つの条件としてあります。また共同体感覚は、自分居場所を見つけそこで役割を果たすことも、この感覚を養う上で必要な要素です。

この主人公は、困っている人を助けようとする優しい心を能力として、自分の能力を活かし、助けるために実行します。また自分の悪い家庭環境に劣等感を感じて、それを克服しようと努力したのかもしれません。 

これをアドラー心理学に劣等感と補償の理論に置き換えれば、自己理想(幸せな家庭環境)という目的のために、他者に恩を送り続ける努力(補償)をするのだと思います。そうすることによって劣悪な環境が変わると信じたのでしょう。

この映画の中の話はユートピア思想で、机上の空論のような話かもしれません。しかし、もしこの理論を多くの人が理解し実践したならば、不可能をも可能にする希望が込められた作品ともいえます。

共同体感覚の話に戻ると、アドラーは、この共同体感覚という思想を取り入れたことで、科学的ではないとアドラーのもとを去った人もいるようでした。しかし、それでもアドラーは「共同体感覚は、生まれつき備わった潜在的な可能性で、意識して育成されなければならない」と主張し、アドラー心理学の根幹としたようです。

ですから、この作品は、アドラー心理学の共同体感覚とウエルビーイングを語る上で、納得しやすい作品でもあると思います。

最後に、この映画はバットエンドで終わります。しかし、同時にこの世の儚さと、今を生きる大切さも教えてくれる作品です。



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