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興味の男女差

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第23回~28回
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記事一覧

【23】女性は数学が苦手? 「やりたいこと」の性差(1)

とにかく少ない理系女子  今回からしばらくは本筋から外れることになる。この連載は主に性的な領域においての男女差をテーマとしているのだが、それ以外の領域での性差についても思うところがあるので、この機会に書いてみたい。  世の中には男女比がどちらかに偏っている分野がたくさんある。大学の専攻はその典型的な例である。日本の(短期大学を除く)大学進学率は平成29年度のデータで男子が55.9%・女子が49.1%であり男女でそれほど大きな差はない〈1〉。        にもかかわらず、一

【24】女性は科学が苦手? 「やりたいこと」の性差(2)

「理系」か「文系」か、というよりも 前回述べたとおり、日本の大学では主に理系とされる学部には男性が多く、文系とされる学部には女性が多い。海外ではどうなのだろうか。その前に、この「理系」か「文系」かという区分をここではやめることにしよう。日本では受験科目で数学や物理や化学などが重視される学部を「理系」、国語や英語や日本史・世界史などが重視される学部を「文系」とみなすのが一般的である(そのため医学部や薬学部は「理系」とされる)。  でも、これはかなり雑な分け方だし人を必要以上に

【25】男女分業社会、北欧 「やりたいこと」の性差(3)

職業選択の男女差 前回と前々回では、なぜSTEM(日本で言う「理工系」)と呼ばれる分野には男性が多く女性が少ないのかを考えた。そして、この偏りは究極的には「(平均して)男性は『物』も含めた『無生物』全般にかかわることに惹かれ、女性は『人』も含めた『生物』全般にかかわることに惹かれる傾向がある」という「興味の性差」によってもたらされているのではないか、と結論づけた。今回からは、STEM系か否かに限らず職業選択全般においての男女差について考えてみたい。  世の中には男性の従事者

【26】分業してて何が悪い? 「やりたいこと」の性差(4)

そんなにダメかな…? 前回は先進的な男女平等社会とされる北欧諸国においても、労働市場でははっきりと性別による棲み分けがあり、むしろそれゆえに管理職など指導的なポジションに女性が多いのだという実情を述べた。  さて、このことをどう評価するかである。前回、KY氏の『ジェンダーギャップ指数というザル指標で見落とされてしまう差別』という記事をとりあげたが、タイトルのとおりKY氏はスウェーデンに見られる業種別の男女比の偏りを「差別」だとして批判している。  文面から察するに、KY

【27】「脳の男女差」とは? 「やりたいこと」の性差(5)

男脳も女脳も存在しない この連載は第1回からずっと「性差」について考え続けている。私も含めて多くの人は「男と女は外見だけじゃなく内面も相当違うよな」と漠然と感じている。体の作りだけでなく脳にも男女差があるように思えてならないのだ。しかし、内面的な性差というのはどうも捉えどころがない。  「あらゆる男性的な性質を備えた男性」などいないし、「あらゆる女性的な性質を備えた女性」もいない。また、いかにも男らしい男性が、ある面では女性的な振る舞いを見せたり、逆にいかにも女らしい女性

【28】言われなくても勝手にやる 「やりたいこと」の性差(終)

「生まれか育ちか」問題 前回の記事で私は、性差というのは人間の側からではなく性質の側から捉えるべきものだと述べた。ある性質について男女比の偏りが見られる場合、その理由として ① 脳の生得的な男女差の反映(Aの特徴を示す人はもともと男性に多く、Bの特徴を示す人はもともと女性に多い、というように) ② 「男性は○○で女性は△△」あるいは「男性は○○でなければならない、女性は△△でなければならない」といったジェンダーバイアスの影響 の2つが考えられるが、おそらくほとんどの性差