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……吉田寮に住もう!

いくら仲介業者を変えても、仮住まいは見付からない。
錦林小学校の校区を確認すると、区内を示す地図上の赤い線が膨大な大学敷地内の吉田寮部分をわずかに掠めている。中国人留学生の子供が一人通っていることから、線が少しずらされているらしい。

……よし、吉田寮に住もう。
寮で仮住まいの仮住まいをしながら、物件を探そう。
ああ、でも本当にあんなところに住めるのだろうか……?

早速、吉田寮に連絡をしてみる。しかし、話がなかなか通じない。
私たちはその数年前から「障がい児を普通学級へ」という会に入っていた。そこで知り合ったМさんという人から、自分の子供たちを通わせている小学校に息子も来てはと誘ってもらっていた。
それで、錦林小学校の校区内に住まいを探していたのだった。

Mさんには障碍のある子供が3人いた。学校は決して受け入れに前向きではなかったが、受け入れた実績があった。私たちには、それだけでも大きな光だった。
彼女の話では、子供たちの介護に吉田寮生が2人、ボランティアで入っているとのこと。その二人に掛け合ってもらうことになった。
彼らとは以前、同じく京都大学の熊野寮に住んでいた時に知り合ったらしい。

彼らを通して、何度も話し合いの場にかけてもらった。依頼された経緯の説明文書を提出するも、寮生には事情が中々通じない状態が続いた。

秋が過ぎ、冬休みを目前に控える頃になっていた。

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