なぜ今昆虫食なのか? ニュースの「?」を論文を読んで「!」に変えよう。
先日,Titiby に載っていた記事「コオロギ養殖「クリケットファーム」に破産決定」を読んで,今更ながらに昆虫食に関心をもった。
なぜ,今,昆虫食なのか
そんな疑問に答えてくれる論文をたまたま目にしたので紹介したい。
論文は以下のリンクから読むことができる。
すごい昆虫
井内 (2022) によれば,昆虫がこの地球上に現れたのは今から4億年前という。4億年前といえば,人類誕生のはるかまえ,恐竜の生まれるずいぶんまえのこと。昆虫は激変する地球環境にも適応して生き延びている。巨大隕石の衝突で,あんなに繁栄していた恐竜でも絶滅した(繁栄の様子は見たことないけど)。考えてみれば,隕石衝突後の地球を昆虫は生き延びたわけだ。この調子で人類が絶滅した後も昆虫は生き延びているにちがいない。
この昆虫を今なぜひとは食べようとているのか。
それは昆虫食が私たち社会の問題を解決するかもしれないからだ。私たちの社会の問題とは何だろう。例えば次のようなものを挙げることができる。
養殖などの餌代の高騰
環境問題の悪化
メタボリックシンドロームのひとの増加
なぜ,昆虫を食べるとこの問題の解決につながるのか。井内 (2022) に沿って説明しよう。
餌代を抑えることができる
冒頭で述べたように,昆虫は地球の環境変動にもかかわらず,40億年を生き延びてきた。なぜ,昆虫がそんなに環境に適応できるかといえば,ひとつには体温調節のためのエネルギーを必要としないからだそうだ。私たち人間が食事からエネルギーを得ても,それがすべて成長のためのエネルギーとして使われるわけではない。成長以外にも,体温を一定に保つためのエネルギーとして使われる。しかし,昆虫は体温を一定に保つ必要がない。取り込んだエネルギーを全て成長に使うことができるという。
とすると,養殖をする際,食料にかかる金銭は,牛や豚,鶏に比べ,昆虫は圧倒的に安上がりだということになる。
環境にもやさしい
しかも,井内 (2022) によれば,養殖の際,ゲップやうんちなどで排出される二酸化炭素の量も,昆虫は,牛などに比べて圧倒的に少なく,環境にもやさしいという。
しかも,牛などの家畜の飼育に比べて,昆虫の場合,土地などの必要な面積も何と20分の1程度で抑えられるという。
メタボリックシンドローム解消にも
しかも,しかも,昆虫は高タンパク, 低脂肪で,ビタミン・ミネラルも大きく含んでいるという。タンパク質でいうと,牛とほぼ変わらないという。低脂肪ということは,メタボリックシンドロームへの対策としても昆虫食はかなり期待できるということだろう。
中国では蚕のフンをお茶にして飲むという習慣のあるところがあるらしい。井内 (2022) は殿様バッタのふんの効用を調べているが,なんと,メタボなネズミに,殿様バッタのふんを飲ませると,中性脂肪やコレステロールを低下させることができたという。昆虫はそのまま食べてもおいしいが,そのフンまで食べて健康になる可能性もあるらしい。
とってもすばらしい。こんなにすばらしい昆虫食であるが,なかなか根付かないよう。
昆虫食の広め方
けれども,諦めてもらいたくない。
心理学研究に載っている論文に以下のものがある。
後半に,どうやったら昆虫食が広まっていくのか,心理学の手法で何ができるのか考察されている。読んでみると,とても面白いし,そこまでしないと昆虫食は広まらないのかーとも思う。
諦めてほしくない。新しい試み,特にそれが難しければ難しいほど,がんばってほしいなと思う。
日本人はタコを食べるんだから,昆虫だって,昆虫のフンだって,なんでも食べれそうだけど,文化って不思議なものですね。
たぶん,昆虫食によって,若返り−5歳とか,美肌効果とか,健康寿命が長くなるとか,受験勉強がはかどるとか,そういう効果があることが報告されたら,みんな競って食べるんじゃないかな。きっと。
美味しそうなクッキー
昆虫食というと,昆虫そのままを揚げたりしたものがあります。昆虫が苦手というひとには,ちょっと手が出にくいですね。一方で,全然,昆虫を意識しないで,おいしく,栄養もとれる商品もあります。例えば,上のクッキー,コオロギを全然感じません。こういうものを,小学校の給食なんかで出していくことで,昆虫食へのハードルを下げることができるんじゃないかな。美味しかったら,また食べたいと思うでしょう。
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