NYに引っ越した話#3

彼に別れを告げることはとても辛かったし、打算的だが、仕事を辞めるまでの3ヶ月間住む場所もなくなる事もあり、なかなか決心がつかなかった。

それでもやはり一度冷めてしまった気持ちのまま彼からの好意を感じることがとても辛かったし、そんな私の態度から彼も何か感じていたと思う。ある二日酔いの夜、意を決し、別れたいと告げた。彼は静かに”わかった”と言ってくれた。図々しく、残酷にも私はその後も退職して、実家に帰るまでの3ヶ月間このまま住まわせて欲しいと頼んだ。

出会ってからの3年半、私の言う事はほとんど受け入れてくれていた彼だったがその時だけは難色を示した。当たり前だ。しかし、最終的に了承してくれた。そこから数か月は今まで通り、一緒に食事したり、テレビをみたり、同居人として穏やかに過ごした。退職した日は退職祝いだとお花までくれた。こんな優しい人はもう出会わないだろう。

同居最後の日には駅まで見送ってくれ、改札で別れた。自分がひどいことをしたの自覚があったので、彼の前では絶対泣いてはダメだと、ギリギリまで我慢し、駅のホームで号泣した。

一旦関西の実家に戻った私はエージェントを通し、スカイプ面接などで、NYでのインターン先を見つけることができた。アパレル系に絞り、2件目で採用された。ちなみに1件目は英語力が足りないと不採用になった。採用された会社はNYの高級住宅街にある日本人経営のショップだった。

その後は、渡米費用を貯めるためにアルバイトなどしていたが、エージェントへの支払いや、引っ越し費用で思ったよりお金がかかることと、実家では思ったように働けないという理由で、年末頃の渡米予定を3か月伸ばし、再度東京へ出ることにした。友達のカップルが渡米までの3か月間下北沢の小さいアパートでの同居を申し出てくれ、行為に甘えた。

その3か月間は毎日本当に楽しかった。今では信じられないが、狭いワンルームにそのカップルと3人で同居し、毎日のように友達達と集まり、飲んだりクラブに行ったりしてあっという間に冬になった。喧嘩が多かったそのカップルも私という存在が間に入り、仲良く3人で過ごしていた。

渡米まで後3週間を切ったある日、3.11の大地震が起こった。





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