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不思議で楽しいColor Lithophaneの話

この記事は3Dプリンター Advent Calendar 2023 8日目の記事です。

Lithophaneってなによ

Lithophane(リトファン)とは光を透過させることで絵を浮かび上がらせるアートです。
直接繋がる日本語の単語がないのですが、透かし絵みたいなものです。
始まりは中世ヨーロッパだそうで、光が透けるぐらい大理石を削ったり、鋳造の陶磁で作ったりして、素材の厚みで透過する光の量をコントロールし、陰影を表現する手法です。

ユリウス・シュレーダーの描いたフリードリヒ2世の肖像画から作られたLithophane
出典 : https://en.wikipedia.org/wiki/File:Lithophanie1_auflicht.jpg
光に透かすとこうなる
薄い部分は明るく、厚い部分は暗く
出典 : https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lithophanie1_durchlicht.jpg

1800年代に流行したそうですが、19世紀の終わりにはほとんど作られなくなったようです。
それが、現代になって復活の兆しを見せています。

なぜか?

CNC工作機械が誕生したから!

CNCとはComputerized Numerical Control、つまりコンピュータ制御の工作機械のこと。
みなさん、おうちに3Dプリンタの1台ぐらいありますよね。それです。
(この記事はごくごく一般的なご家庭を対象にしています)

画像処理から製作までコンピュータがやってくれて、一家に1台3Dプリンタがあると言われる現代ではLithophaneのハードルがぐっと下がったわけです。

これは初めて買った3Dプリンタで月をプリントしてるやつ

で、更に、今までモノクロが主流だったLithophane界(?)にカラー化の波が押し寄せています。なぜか?

Bambu LabのAMSが登場したから!

Bambu Labの紹介は省きますが(詳しくは↓のnote読んで欲しい)
めちゃくちゃ簡単に多色で3Dプリント出来るマシンが登場したために、3Dプリント界隈にマルチカラーのビッグウェーブがやって来ました。

娘のために作ったやつ

ただ、AMSには基本的に4種類のフィラメントしかセット出来ません。

このフィラメント入ってるやつがAMS(Automatic Material System)

初代PC-9801でも8色使えるのに4色て!ってなるんですが、
ここで登場するのがCMYKという色の表現方法。
印刷技術に関わるもので、具体的にCMYKは

  • シアン (Cyan)

  • マゼンタ (Magenta)

  • イエロー (Yellow)

  • キー (Key、通常はブラック)

この四つのインクを組み合わせて、色彩の範囲(ガンマ)を作り出すためのモデルです。
これは減法混色と呼ばれる原理に基づいており、各色のインクが光を吸収し、反射される色を通じて目に見える色が決まります。
長々書いてますが、インクジェットプリンタの仕組みですよね。
↓こんな図を見た事あるんじゃないでしょうか。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SubtractiveColorMixing.png

まぁ、つまりCMYの三色があればどんな色でも表せるということです。
ただ現実には三色だけでは深い黒を再現出来ないので、K(基本的に黒)を加えてCMYKとしていると。
ちなみにKはKuroのKでも、BlackのKでもないですが、詳しくはググって下さい。

なので、CMYKの4色のフィラメントを用意すればどんな色でも出せるんでは!?となるわけです。

上の画像をみて、いやいやCMYKじゃなくてCMYWになってますやん
と、思うかもしれませんが、一旦置いておきます。
ここからはフルカラーのLithophaneを作る仕組みについて説明します。

画像を3DプリントするためのLithophaneモデル化するのは、有志が無料で公開してくれているWebアプリがあるのでそれを使います。
詳しくはBambu Labのwikiを見てくれ。

で、出来上がったモデルと断面を見てみましょう。

出力されたSTLファイルはこんな感じ
重ねた時の断面

5層使ってCMYWの4色を使い分けています。
ブラックを使わない代わりに白を重ねることで明暗を付けてKey Colorにしています。
ChatGPTに組み合わせを計算させたら92通りらしいので、92色です。多分。
Pythonでササッとコーディングしてくれるので助かりますね。

# 各ケースにおける組み合わせの数を計算(色の選択肢が4つに増加)

# 1. すべての層が同じ色(4通り)
case1 = 4

# 2. 4層が同じ色で、1層が異なる色(4 * 3 = 12通り)
case2 = 4 * comb(4, 1)

# 3. 3層が同じ色で、残りの2層が異なる色(4 * 6 = 24通り)
case3 = 4 * comb(4, 2)

# 4. 3層が同じ色で、残りの2層もそれぞれ異なる色(4 * 6 = 24通り)
case4 = 4 * comb(4, 2)

# 5. 2層が同じ色、別の2層が同じ色で、残りの1層が異なる色(4 * 6 = 24通り)
case5 = 4 * comb(4, 2)

# 総合計(合計 92通り)
total_unique_combinations_4_colors = case1 + case2 + case3 + case4 + case5
total_unique_combinations_4_colors

で、プリントしたものがこちら。

バックライトを光らせるとこうなる。

これ現物を見ると「おお~~~!」ってなるんですけど、写真だとなんか感動が薄れるような…。
白い板が鮮やかに発色するのは見てて綺麗で楽しいです。

ちなみにこのフレームは私のオリジナルなので、気になった人は是非使って下さい。

Lithophaneの材料はBambu Labストアでバックライトも含めたセットで売ってるのでそれを買いましょう。
↓このリンクから買ってもらえると僕が小躍りします↓
http://shrsl.com/2adq3-2yn7-1cwx9

※他社製の似た色のフィラメントでも出来ると思いますが、反射光と透過光ではフィラメントの色が変わるので「思ってたんと違う」場合があるので注意。

白いのに白くない例

勘の良い人は気づいているでしょうが、1層毎に4色切り替えるので、ノズルに残ったフィラメントを排出するパージ作業でめっちゃ時間とフィラメントを消費します。そこがちょっと難点。

もじゃもじゃが山のように出てくる

まぁ、やってみたら結構楽しいので、気になった方は是非トライしてみて下さい。

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