よすけ

人生うまくいきたいもの書き。見たこと、聞いたこと、思ったこと。そういうものをつらつらと…

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人生うまくいきたいもの書き。見たこと、聞いたこと、思ったこと。そういうものをつらつらと。生きづらさの中に居心地を。いつか誰かの心の隅が動くように。

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  • よすけの短編小説まとめ

    書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。

  • 詩集『よすけ』

    書いた詩をまとめています。見たもの、思ったこと、聞いたこと、そういうものを拙い言葉で綴る。

  • 『写真で描写』シリーズ

    撮った写真から思いついた小説っぽい一節。想像できるような、できないような。いつかこの続きを書く。#写真で描写

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【短編小説】ここにいる、ここにいて

1,807文字/目安3分  仕事から帰って、晩ごはんの支度を始めようとしたら、彼が突然帰ってきた。 「ただいま」  そう言っていつもやっているかのように、傘を置いて、上着を脱いで、部屋へ着替えに行った。 「あ、おかえり」  遅れてその後ろ姿に声をかけたけど、間抜けな声しか出てこなかった。  平静を装って、料理の準備に戻る。今日は二人分作らなくちゃ。  彼が部屋から出てきて、わたしの隣に立つ。ふわっと風が動いて、どきりと胸が驚いた。 「今日は雨が降ると思って傘を持って行った

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【短編小説】ここにいる、ここにいて

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  • よすけの短編小説まとめ
    75本
  • 詩集『よすけ』
    33本
  • 『写真で描写』シリーズ
    15本

記事

    〈自由詩〉未来のために

    今日できないことは 明日やればいい 今週できないことは 来週やればいい 今月できないことは 来月やればいい 来年を待てばいい 一生かけて見つければいい 一生かけて あなたをつくればいい 過去は見なくていい 今に自信がないのなら 明日に託せばいい 未来はちゃんとある 心が晴れなくても 怒りをしまえなくても 明日を迎えていい あなたがあなたを好きになれなくても あなた自身を嫌いにならないで 好きはつくればいい 集めればいい 嫌いは遠くに追いやっていい

    〈自由詩〉未来のために

    〈自由詩〉心の隙

    やけに静かに思える時がある 昨日と同じ、いつもの朝 すれ違う人も同じ 猫が寝る場所も同じ 電車のタイミングも同じ 何一つ変わらない午前八時 自分だけが浮いている 世界が違って見える 澄んだ晴れの朝 楽しいことがあったような 思い出をどこかに残したような ふわふわと、空気がまとう 風に流れる だんだんと 沈む 遠ざかる 意識が宙に散る 人が人に見えなくなっていく それを嫌だと思う 満員電車でじっと囲まれる 急いでとにかく走る影 エスカレーターまでの行列

    〈自由詩〉心の隙

    〈自由詩〉少し先で

    意味なんて考えちゃだめ 意味を先に決めようとしちゃだめ そんな声を聞かせないでよ 歩けば見つかるもんじゃない いつのまにか近くにいるものだよ その意味は後ろにしかない だから待ってる

    〈自由詩〉少し先で

    【短編小説】へこっほこ

    1,912文字/目安4分  駅に向かう途中、レモン果汁が目に沁みるのは当然だと思った。  綱渡りの人生、バターロールは少しつぶした方がおいしく食べられる。あの時もきみはクリームパンの中のクリームをパンの表面にぬって食べていた。まだ絹と木綿の違いも自信がなかったぼくは、なるほどと思いながら、クッキーをビスケットではさんで食べたのだった。  まわりはちっとも信じてくれないけど、クッキーをビスケットではさんで食べるのは、少しも崩さずにアボカドの皮をむくくらい難しい。ビスケット

    【短編小説】へこっほこ

    〈自由詩〉エンドロール

     名前を呼ばなくちゃ  そうしないと振り向いてくれない  布団に隠れて  枕に顔をうずめても  誰も起こしてくれない  そのうち疲れ切って  窓を閉めて灯りを消す  特別だと思いたい  自分と同じ  群れの中に紛れたい  よくある話さ  新しさに目を向けるたびに  思い出がちらつく  強く輝き出す  さよならを言わなくちゃ  自分をまるごと愛せない  今日がお別れの時だ  そう思っても僕はいまだ  ここで文字を綴っている  君を忘れてしまって  よくもまぁ歩い

    〈自由詩〉エンドロール

    〈自由詩〉一途

     きみじゃなきゃだめ  そんなこと  たぶんないのかもしれない  きれいなものは他にもある  あたたかいにもいろいろある  まわりの誘惑と かくれた浮気心と  ぜんぶ押しのけて  きみに向いてしまう  諦めることができたら  振り切ることができたら  ジャンル分けできない  ナンバーもオンリーもない  会いたい 一緒にいたい  ある意味のあきらめ  それすらもみとめよう  きみがいい  だからきみをえらんだ  だからきみじゃなきゃだめ

    〈自由詩〉一途

    〈自由詩〉朝のこと

     今日の失敗  ことばの間違い  何もなかったような朝  駅前のひと騒ぎ  面白がる人だかり  何もなかったような朝  雲のない空  自分だけ静かな喧騒  本当に何もない  自分すらなくなったような朝  落ち着かない閃光  ひとりがちっぽけに感じる時  隙間に触れるのはせめて  優しさであってほしい

    〈自由詩〉朝のこと

    〈自由詩〉はや歩き

     嬉しい、楽しい、帰り道。  良いことがあった時、誰かに話したくなる。  綺麗なものを見た時、誰かに話したくなる。  心が動いた時、誰かに話したくなる。  誰かなんて、一人しかいない。  頭の中では、もう話している。  くだけた顔を見られないように。  なんでもないのを装って。  どんな顔を、するだろう。  どんなことを、言うだろう。  こんな、陳腐で安っぽい言葉を。  こんな、単純でちっぽけな幸せを。  ぜんぶぜんぶ、笑って聞いてよ。  あなたに会いたい。

    〈自由詩〉はや歩き

    【小説】ホワイト・ポートレート

    【小説】ホワイト・ポートレート

    連作『ここにいる、ここにいて』

    連作『ここにいる、ここにいて』

    【短編小説】こんばんは、カレー

    1,064文字/目安3分  くつくつと歌う鍋に、ゆれて踊る湯気。  部屋の中はカレーのにおい。  今日はわたしが先に家にいる日だから、晩ごはんの準備をする。  彼からはすでに『今から帰る』の連絡が来ている。帰ってくるまでの時間はわかるから、そこから逆算して調理を進めていく。家に着くちょうどのタイミングでご飯を食卓に並べられるように。  これは完全にわたしの自己満足。ささやかなプライド。  カレーはいい感じにとろみがついてきた。お米ももう炊けている。それと小鉢に酢の物。

    【短編小説】こんばんは、カレー