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16冊目_時間との賢い付き合いかた。「モモ」ミヒャエル・エンデ

時間がない、ひまがない、と皆が口にする。これほど足りなくなってしまった時間とはいったい何なのか?人間の心のうちの時間、人間が人間らしく生きることを可能にする時間、そういう時間が失われてきている。

時間をケチケチすることで、生活が日ごとにまずしくなり、日ごとに画一的になり、日ごとに冷たくなる。時間とはすなわち生活であり、生活とは人間の心の中にあるもの。時間を節約すればするほど、生活はやせほそって、なくなってしまう。 「よい暮らし」のためと信じて時間を倹約し、追い立てられるようにせかせかと生きる。子どもたちまで遊びを奪われ、「将来のためになる」勉強を強制される。・

人びとは時間を奪われることにより、ほんとうの意味での「生きること」を奪われ、心の中はまずしくなり荒廃していく。みせかけの能率の良さと繁栄とはうらはらに、都会の光景は砂漠と化していく。 ・

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この本を読みながら、自分の人生のことを考えていた。

小学生の頃から習字/そろばん/学習塾/野球/柔道と週7で習い事まみれ。中高は引退するまで部活漬け、引退翌日からは受験勉強漬け。大学の頃は反動でサークルとアルバイト漬け。常に予定を埋めていないといけない、何か行動して時間を経験に換えてないといけないような、そんな強迫観念にとらわれていたのだと思う。

さらに最初に入った会社はそれこそ日本一の超能率主義カンパニーで、「最小の資本で最大の付加価値を生み出す」を合言葉に1時間あたりに生み出すべき利益のことを常に考え、ひたすら仕事しまくっていた。土日は平日の疲れやストレスを回復するため、浪費することに必死で、無茶苦茶稼いでいたけど、心はまったく豊かではなかった。そのときはそれが当たり前だと思っていたけれど。この本の、灰色の男たちに操られた人間の描写そのまんまだった。

それから10年、少しづつ環境を変えて、いまや意識的にゆるふわと生きることができているのだけれど、それでも何にもせずに居ることが得意ではない。なんだかんだと出かける理由をつくり、家にいても読書やギターやゲームなど、何かしらしていないと落ち着かない。

うちの奥さんは、逆に何もしないで過ごすことに抵抗がない、別にだらけているわけじゃなく、予定がないことに焦らず、むしろ喜びを感じながら、毎日毎時をていねいに自然体で生きている。家にいて家族とのんびりするのが最高。まるでモモww 自分の生活をバランスしてくれた奥さんと出会えて良かったなぁ。ほんとうにありがてえ、と思う。

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