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#38 世界遺産について考える(4)「遺産」ということば

割といつも理屈くさいのが多めな感じなので、今回は少し軽めの内容にしようと思います(書いてるうちに結果的に面倒くさい文章になったらごめんなさい)


■世界「遺産」

世界遺産って、英語の「World Hertage」をそのまま和訳した言葉です
一般的な理解としては『世界遺産=人類共通の宝物』とされていて、検定のテキストでもそれを前提としてますよね

なんで「遺産(heritage)」なんだろうって思ったことありませんか?
日本の文化財だと「国宝」で『宝』ですよね
英語だと「national treasures」で、まさに『宝』です
文化財だと「cultural property」で、こちらも『財産』ですね

世界遺産も「World Treasures」でも良かったと思うのですが、「heritage」が採用されていて、そのまま「遺産」ということで日本においてもそのまま受け入れられています

■「遺産」という言葉を使う意味

『遺産』というと、個人であれば主に親や祖父母といった血縁から引き継いだ財産ですけど、より広い意味では前の世代から引き継いだものでプラスのものもあればマイナスのもの(いわゆる負の遺産)もありますよね
世界遺産については、まさに過去の世代から引き継いできた文化財や景観などを対象としていますので「遺産」という言葉でも違和感がない感じです

「宝物」というと、現役世代が作り上げたものであっても、貴重なものや価値のあるものであれば「宝物」認定されそうな気がしますが、自分たちが作ったものを「遺産」と呼んでしまうとちょっと違和感があります
個人の財産であれば「私の遺産は長男に譲る」といった感じで使いますけど、やはりその方が亡くなった時点ではじめて「遺産」になるので、現役世代で自分が作ったものを「遺産」として守るっていうのは違うような気がします

「遺産」という言葉を使うことで、過去の世代(もしくは地球)が作り上げて保護保全してきたものをしっかりと譲り受け、更には次の世代にも引き継いで行こうという意思が込められているのかなと思います

■負の遺産について

世界遺産条約では正式に定義されてはいないものの、日本国内においては「負の遺産」という用語を使っています
過去に人類が犯したネガティブな事件の象徴的な物件で後世における戒めとなるようなものですね
人種差別や虐殺、戦争、核開発といったところが一般的に「負の遺産」にカテゴライズされています

一般的な言葉として「負の遺産」という場合には、過去の世代が残した負債・借金などを指すことが多いです
将来世代がその「負の遺産」を清算するために金銭的・物理的な何らかの負担をしなければならないものになります

世界遺産における「負の遺産」は、一般的な「負の遺産」と異なり将来世代が何らかの追加負担を課されるものではなく、単なる戒めとして存在するものなので、むしろそのまま「戒めの世界遺産」として呼ぶ方が適切かもしれませんね
そういった意味での「負の遺産」であれば、日本でも明治期に行った「廃仏毀釈」なんていうのは貴重な文化財に対する明確な犯罪行為で、「戒め」とすべき事象のような気がします

一方で、一般的な意味に近い「負の遺産」という意味では過去の人類が行った開発行為や乱獲によって「絶滅危惧種」となった動植物の保護区などはまさに「負の遺産」と呼ぶべき世界遺産ではないかと思います


(結果的にはやっぱり面倒くさい文章になりましたね 笑)

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