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現王者か、前王者か-。大阪を制したその先の頂を見据えて(2019年度秋季大阪府大会決勝【大阪桐蔭-履正社】試合回顧)

こんにちは、じーやまです!

本日は10月13日(日)に大阪シティ信用金庫スタジアム(舞洲)で行われた、2019年度秋季近畿地区高校野球大会大阪府予選・決勝の大阪桐蔭-履正社戦について、試合レポートを書いてみようと思います。

片や、昨年の秋、今年の夏の大阪大会を制し、さらには夏の甲子園を制した現王者の履正社

片や、この1年は履正社に覇権を譲ったものの、2018年に史上初となる2度目の春夏連覇を達成した前王者の大阪桐蔭

現王者か、前王者か。
白熱の激戦を制したのは-。

……ということで、毎度ながら長文かつ拙文になりますが、最後まで読んでいただけると幸いです!

※選手名は敬称略とさせていただきますので、ご了承ください。


目次

1.試合経過
-⑴スタメン情報及び序盤の回顧
-⑵中盤から終盤にかけての攻防
-⑶9回裏・履正社意地の同点劇
-⑷延長突入〜試合終了
2.勝負を分けた3つのポイント
3.両チームから学ぶ"王者の野球"
4.大阪を制するものは…


1.試合経過


乱打戦となった第1試合が終わり、厚い雲に覆われた上空から秋らしい柔らかな日差しが微かに差し込む中、プレイボールを迎えた決勝戦。

昨年秋の府大会決勝以来となるライバル対決のスターティングメンバーは以下の通り。


先攻:大阪桐蔭

1.池田(中)
2.吉安(捕)
3.西野(三)
4.仲三河(右)
5.船曳(一)
6.加藤(二)
7.伊東(遊)
8.上野(左)
9.藤江(投)

後攻:履正社

1.池田(二)
2.島野(一)
3.小深田(三)
4.関本(捕)
5.大西(右)
6.田上(中)
7.両井(左)
8.中原(遊)
9.岩崎(投)


【序盤の回顧】

序盤の3イニングは先発した両エースの好投により、緊張感に包まれた静かな立ち上がりに。

履正社先発のエース・岩崎峻典は最速145キロのストレートのカットボールを中心に投球を組み立てる世代屈指の好投手。

夏の甲子園でも、背番号17ながら準決勝・明石商戦で先発し、10奪三振1失点完投。続く決勝戦でも同点に追いつかれた7回裏に登板し、二死1.2塁のピンチを抑え、胴上げ投手に。

この試合では、左右両方の打者に対するインコースへの制球の良さが目立ちました。

対する大阪桐蔭の先発は藤江星河

スラリとした細身の体型は、左右の違いはあるものの、2017年のセンバツ優勝投手となった当時のエース・徳山壮磨を彷彿とさせ、最速142キロを記録するストレートとスライダー、チェンジアップを武器にする左腕。

この試合では、注目の4番関本を三振に打ち取るなど、右バッターのアウトコースへのチェンジアップが冴え渡り、降板する7回途中までを2失点に抑える粘投を見せました。


また、試合を通じて両チームの二遊間を中心とした好守も光りました。

第1試合の3位決定戦では両チーム計7エラーを記録するなど、台風の翌日ということもあり、非常に難しいグラウンドコンディション。
そんな中でも延長突入までノーエラーに抑えた両チームの守備陣は見事。

特に印象に残ったのが、大阪桐蔭のショート・伊東光亮

ノックから軽やかなフットワークと握り替えの早さが目立ち、試合でも安定した守備を見せ、同校の先輩である水谷友生哉福田光輝泉口友汰選手のような守りの要としての活躍が期待されます。


【中盤から終盤にかけての攻防】

試合が動いたのは5回表の大阪桐蔭の攻撃

一死後、9番藤江がヒットで出塁。続く1番池田陵真も2球目をライト前に運び、一死1.2塁のチャンスを作ります。

池田選手は1年生ながら名門の核弾頭として、この試合まで打率7割を超える驚異的な成績

この試合は厳しいマークに苦しみ、第1打席、第2打席と連続三振を喫するも、第3打席でしっかり対応してきたのは流石。

小柄ながら鋭いスイングが持ち味で、まだ1年生ということもあり、今後の活躍が期待される選手です。


2番吉安の二ゴロで二死1.3塁となったところで、3番西野力矢が初球を捉えてレフトへの適時二塁打を放ち、大阪桐蔭が1点を先制。さらに続く4番仲三河優太が3球目の甘く入ったボールを完璧に捉え、場外に消える特大スリーランを放ち、この回一挙4得点。

仲三河選手は投手としても注目を集めますが、今大会は外野手として、この試合を含めて3本塁打の活躍

この試合では7回にも2点タイムリーを放つなど、5打数4安打5打点1四球の大暴れ。

打席結果はさる事ながら、それぞれの打席での内容も素晴らしいものがありました。

6打席それぞれの球数は9球→3球→3球→6球→6球→6球の計33球。選球眼に優れている上に、難しいボールをしっかりとカットできる。
打者としてもプロの注目を集める存在になることは間違いないでしょう。


試合はその後、6回裏に球数が100球を超えかかった藤江投手を履正社打線が捉え、5番大西の適時三塁打、代打弓埜の犠飛で2点を返すも、その直後の7回表に仲三河の本日5打点目となるタイムリーで2点を奪い、6-2と大阪桐蔭が4点をリードする形で試合は9回へ。

このまま終わるかと思われましたが、9回裏にドラマが待っていました-。


【9回裏・履正社意地の同点劇】

9回裏、履正社の攻撃は打順よく1番の池田凛から。

7回途中から大阪桐蔭のマウンドには1年生の竹中勇登

小柄ながら、130キロ台後半〜140キロ前後(目測)の直球で押すタイプで、7回裏1死1.2塁のピンチで登板し、4番関本を併殺打に打ち取りました。

そんな竹中から先頭の1番池田、2番島野が続けてライトへのヒットを放ち、無死1.2塁の状況で打席には今日無安打の3番小深田大地

夏の甲子園でも3番を任され、打率.360を記録して優勝に貢献した強打者。この試合は大阪桐蔭バッテリーからのマークに苦しんでいたものの、インコースに甘く入ってきた3球目を捉えてライトへ適時二塁打

さらに、無死2.3塁の状況で4番関本勇輔が初球を叩き、打った瞬間それとわかる起死回生の同点スリーラン。打者4人、僅か10分にも満たない猛攻で、履正社が土壇場で試合を振り出しに戻しました。

関本は元阪神・関本賢太郎氏の長男として注目を集める選手。打者としてはコンタクト能力が非常に高く、この試合も三方向にそれぞれ本塁打、二塁打、シングルヒットを打ち分けています。

また、捕手としてもキャッチングに光るものがあり、強打の捕手として、プロの注目を集めること間違いなしの逸材です。

その後は竹中が後続を断ち、試合は6-6のまま延長へ。

まさに意地と意地のぶつかり合い。
秋季大会とは思えないレベルの高い攻防となりました。


【延長突入〜試合終了】

9回表から履正社は、エース岩崎に代えて背番号17の辰己颯がマウンドに。

延長10回表、大阪桐蔭の攻撃は先頭の7番伊東が2球目を叩いてライト前ヒット。
続く8番上野が犠打を決め、1死2塁-。

と誰もが思ったその時、上野がバントを決めた投球に対してボークの判定。無死2塁で仕切り直しという形になりました。

そんな不測の事態が動揺を生んだのか、再び上野が犠打を試みると、これを投手の辰己が3塁に送球。しかし、タッチすら間に合わずセーフに。さらにサードの小深田が1塁に送球するも、これがまさかの悪送球になり、思わぬ形で大阪桐蔭が勝ち越します。

更に、続く代打の前田がタイムリーを放ち勝負あり。その後、ワイルドピッチで1点を追加した大阪桐蔭が10回裏の履正社の攻撃を退け、試合終了。

想像を超える激戦となったライバル対決は、9-6で大阪桐蔭が制し、秋季大阪府大会優勝を飾りました。

ランニングスコアは以下の通り。

大阪桐蔭 000 040 200 3|9
履正社 000 002 004 0|6
(桐)藤江、竹中-吉安
(履)岩崎、辰己、衣笠-関本
本塁打:(桐)仲三河③ (履)関本③


2.試合を分けた3つのポイント


甲子園決勝レベルと言っても過言ではないハイレベルな一戦となった二強対決ですが、勝負を分けたポイントは3つあると僕は考えています。

1つ目は大阪桐蔭打線の低めのカットボールに対する見極めの徹底。

序盤3イニングは岩崎に対して仲三河のヒット1本に抑えられていた桐蔭打線ですが、4回からは岩崎の投球の要といっても過言ではない低めのカットボールを完全に見切り、無得点に終わった4回には3四球をもぎとっています。

カットボールを見切られた履正社バッテリーは、右打者に対してこの試合よく決まっていたインコースのストレートを効果的に使おうとするも、5回二死1.3塁のピンチで3番西野にそのインコースを捉えられ、レフト左に適時二塁打。

続く仲三河が場外スリーラン、得点には繋がらなかったものの、5番船曳も中安で続いたあたりからも、履正社バッテリーにとっては先制を許した以上にダメージが大きい一打であったと推察できます。

これが試合を分けた第1のポイント。


2つ目は桐蔭バッテリーの小深田対策。

この試合での大阪桐蔭のエース藤江は、右打者に対しては外のチェンジアップが決まったものの、左打者に対しては外のスライダーを見極められ、苦しい投球が続きました。

藤江が降板する7回途中までで、1番池田は1打数無安打3四球、2番島野は3打数1安打1四球、7番両井は3打数3安打と、左打者に多く出塁を許しています。(ちなみに両井はこの試合5打数5安打の活躍)

そんな中、相手3番の小深田に対しては内外のボールを効果的に使って5回裏二死満塁のピンチで三振に、7回裏無死1.2塁のピンチで中飛に打ち取りました。

前述した通り旧チームから3番を打ち、独特なルーティンからも注目を集める小深田選手。
たった一打で試合の流れを変えられるようなスター性を持った選手を、ピンチの場面でしっかり抑えることができたのが第2のポイントです。


3つ目は10回表の履正社守備陣の僅かな綻び。

10回表の無死1塁からの犠打は、投球前にボークがあったとの判定で、まさかの打ち直しに。

僕も見たことがない非常に珍しいケースで、同点に追いついた直後の10回表ということもあり、履正社守備陣に僅かながら動揺を生んだのは確かでしょう。

決勝点となった続く無死2塁からのバント処理も、フォースプレーなら際どいものの、タッチプレーなら確実に間に合わないタイミング

不測の事態が混乱を招き、状況把握を誤ったとも捉えられるプレー。送球してしまった辰己投手だけでなく内野陣、そしてベンチの適切な指示があれば防げたプレーかもしれません。

仮に犠打が決まっても高確率で1点は許していたと考えられます。しかしながら、残り1イニングで1点差と3点差では状況が全然違う。10回裏の履正社の攻撃を考えても、勝負を分けたプレーであることは間違いないでしょう。

ということで、あくまで個人的な解釈ですが、以上の3つが僕が考える勝負を分けたポイントです。


3.両チームから学ぶ"王者の野球"


大学進学を機に大阪に住み始めてから大阪桐蔭の試合を見るのはこれで6回目
毎回驚かされるのが、試合前に行われるシートノックの質の高さです。

全国から集められた精鋭ということもあり、動きのキレや肩の強さに注目が集まりがちですが、試合前から相手を圧倒する声の圧力、3塁封殺&タッチプレーやディレイドスチールに対するカットなど、あらゆるプレーに対する万全の対策

そして、その全てに正確な体内時計が伴っていることが見て取れるクオリティの高さ。

まさに"日本一のノック"と呼ぶに相応しいものでした。

また、この試合でも強打者の池田、西野が犠打をきっちり決めるなど、細かいプレーも確実にこなし、スコアボードを見たらわかる通り、相手が得点した次のイニング全てで得点

機先を制し、一度たぐり寄せた流れは決して渡さない。

大阪桐蔭の真髄とも言える"王者の野球"を見ることが出来ました。

対する履正社は静かに淡々と試合前のアップをこなし、自分の動きをしっかりと確認。

9回に4連打で4点差を追いつくなど、リードを奪われても慌てず騒がず。まさに泰然自若の姿勢でゲームを進めました。

大阪桐蔭が"動の王者"なら、履正社は"静の王者"といったところでしょうか。

そのような点からも、学ぶことが多い一戦でした。


4.大阪を制するものは…


大阪桐蔭高校の優勝で幕を閉じた2019年度秋季大阪府大会。

センバツに出場するためには近畿大会を勝ち上がらなければならず、両チーム共に戦いはまだ続きます。

しかしながら、秋季大会とは思えないレベルの高い激戦に、両チームの確かな実力を感じました。

水島新司作の漫画・ドカベンに

-神奈川を制するものは全国を制す-

という言葉がありますが、思わず

「大阪を制するものは………」

と言ってしまいたくなるような一戦でした。
ナイスゲーム!

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