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金融機関が融資先をランク分けする理由

障害福祉業界を明るくしたい行政書士の篠原です。

前回の復習は金融機関が決算書の実態を見ている話をご紹介しました。

今回も財務コンサルタント養成講座の復習をアウトプットします。

今回は金融機関は決算書を基にどのように融資先の格付けを行なっているかご紹介します。

前回の復習と合わせて読むと理解しやすいので、今回の復習は前回の復習を振り返りながら読むことをお勧めします。

債務者格付け

今までの復習の中でも何度か登場した「債務者格付け」。

この格付けは金融機関が独自の査定方法を用いた融資先のランク付けとなります。

債務者格付けにより取引内容が変わってきます。前回ご紹介した決算書の実態を基に格付けを行います

より上位のランクであれば、融資を受けやすく金利も低く設定されますが、下位のランクになると、新規融資は受けづらく金利も高く設定されてしまいます。

債務者格付けにより下位のランク付けになると、融資が受けづらくなる

債務者格付けのランク:債務者区分

ランク付けの種類ですが、5種類あります。

正常先業況が良好で財務内容に問題のない債務者
要注意先貸出条件、履行条件、財務内容に問題のある債務者
※要注意先の中でも3ヶ月以上支払いが滞っている債務者は「要管理先」
破綻懸念先経営難の状態で経営改善計画等の進捗が芳しくない債務者
実質破綻先深刻な経営難の状態で再建の見通しがない債務者
破綻先法的・形式的な破綻事実が発生している債務者

この復習では大学受験の模擬試験の判定と合わせて①〜⑤をA判定からE判定で表現します。

A:正常先、B:要注意先、C:破綻懸念先、D:実質破綻先、E:破綻先

前回の復習でご紹介した「金融検査マニュアル」の廃止に伴い、決算書の評価の見直しが金融機関には求められています。

ですが、金融機関独自の評価基準を定めるには数年の試行錯誤が繰り返されることが予測されるので、しばらくは今までの評価基準と同じ取り組みとなるかと思われます。

債務者区分の目的

このようになぜ融資先をランク付けするかというと金融機関の経営状態も影響していることになります。

金融機関も他の会社と同様黒字が求められます。債務者区分のC〜E判定の会社は金融機関にとって倒産する可能性の高い会社となります。

そんな会社に融資を出したとしても返却される見込みがないことを始めから備えて貸倒引当金を計上します。

貸倒引当金は将来回収できない可能性のある金額をあらかじめ見積もって計上するものです。

金融機関の場合は貸倒引当金を融資の回収不能に備えて計上しますが、取引先の場合は貸倒引当金を売上の回収不能に備えて計上することがあります。

融資を取り扱う金融機関の場合、融資先が多いと、その分貸倒引当金の計上額も多くなります

貸倒引当金は備えとして計上するため、金融機関が使える資金が少なくなってしまいます

このようにC〜E判定の会社に融資を出してしまうと、金融機関の財務内容に悪影響を及ぼすことに繋がります。

つまり、債務者区分のA・B判定の会社でなければ、新規融資を受けられることはないと思っておくと良いでしょう

B判定の中でも要管理先の場合は新規融資を受けられる可能性はありますが、保証人や担保を付けないと難しいでしょう。

債務者区分の判定方法

初めに断っておきますが、この債務者区分の判定方法は各金融機関によって内容が異なります。

あくまでおおよそのイメージとして捉えましょう。

主に債務者区分の判定は「定量判定」「定性判定」→「最終判定」→「開示判定」の順番で進みます。

「定量判定」では金融機関が前回の復習でお伝えした決算書の実態を把握することで借入のボリューム、融資の返済可能期間、債務超過の解消期間等を判断します。

「定性判定」では業績改善度合、業績悪化度合等の決算書では表せない融資先の本気度を判断します。

これらの判定を基にA〜E判定のいずれかの判定を行い、B判定の場合には最後の開示判定で「要注意先」か「要管理先」のどちらかに区分されます。

貸倒引当金の計上額のイメージ

金融機関は融資先の貸付残高合計に貸倒引当率を掛けた金額を貸倒引当金として計上します。

A・B判定の会社の場合は倒産のリスクが少なく、これからも継続して事業を行なっていくことが見込まれるため、あくまで将来貸し倒れる可能性を見越して貸倒引当金を計上します。

将来の動向が読み切ることができないため、貸付残高全額に貸倒引当率を掛けて貸倒引当金を計上します。

貸倒引当率はA・B判定で変わってきます。以下が引当率です。

正常先:約0.2%要注意先:約5%要管理先:約15%

C〜E判定の会社の場合は倒産のリスクが高い、又は既に倒産している会社のため、実際の損害を基準に貸倒引当金を計上することになります。

回収できない可能性の高い債権額に貸倒引当率を掛けて貸倒引当金を計上します。

回収が確実な債権には貸倒引当金の計上はしません。

回収できない可能性の高い債権の例は、担保割れした融資無担保無保証の融資となります。

C〜E判定の貸倒引当率は以下となります。

破綻懸念先:約75%実質破綻先・破綻先:約100%

全額2000万円(①信用保証協会付き融資:1500万円、②無担保プロパー融資:500万円)の融資を受けた会社を例にします。

この会社がA〜E判定の場合の貸倒引当金の計上額は以下となります。

A・B判定は①②の合計額に貸倒引当率を掛ける。
A判定:2000万円 ✖︎ 0.2% = 4万円
B判定:2000万円 ✖︎ 5% = 100万円(要注意先)
    2000万円 ✖︎ 15% = 300万円(要管理先)
C〜E判定は②の額に貸倒引当率を掛ける。
C判定:500万円 ✖︎ 75% = 375万円
D・E判定:500万円 ✖︎ 100% = 500万円

この計算からもわかるようにB判定から下位のランクだと2000万円以上の融資で1社につき百万単位の貸倒引当金を計上しなければならないため、金融機関にとっても負担となります。

こういった現状から融資先には決算書の実態が良好である会社に融資を出すことが先決されることになりますので、知っておくと良いでしょう。

今回は金融機関が融資先をランク分けする方法と理由をご紹介しました。

次回も財務コンサルタント養成講座の復習を兼ねたアウトプットを投稿しますので、お楽しみに!

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