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小さくてもやり続ける。

令和元年七月吉日。
今日、東京に来れたことは今まで生きてきた中で最高に幸せな時間だった。
2時間あれば映画が観れる。2時間あればトークイベントが聞ける。2時間あればフルコースのディナーを味わうことができる。
細川剛さんの仕事はデザインだけど、肩書きは会社員、だと思った。もし、これが失礼にあたるならデザイナーと呼ばれることに人は何か違う付加価値を与え過ぎている。もちろん、ある意味で与えるべきなのだが……。
一方、前田さんはフリーランスデザイナー、肩書きは自由業、といった感じ。もちろん、どっちがいいとかわるいとかない。

全くタイプの違った2人が同大学同学部で学び、徹底してデザインとはなにか、と20年間考えてきたことを2時間で聞ける、なんてやはり夢のような時間だった。

このイベントで2人が仲良しなのがよくわかった。でもそれ以上に思ったことは、そうだ、2人は仕事としてデザインをしてきた人たち。そこにはとてつもないお金とそれに伴う責任があっただろう。

もし、それをデザインやりたいんです、だけな僕がやっていたらと思うとゾッとする。
何がやりたいのか、どうしてやりたいのか、そして、できる根拠を示せるのか。
僕はデザイン3年くらいやったけど何もわからなかった。密度も濃度も純度も低かったからかもしれないけど、今ようやくデザインの入り口に立ったなと感じた。だからこの1ヶ月、転職活動をしてデザインができるところを、給料が下がってもいいから探した。
そんなことを許してくれる妻にまずお礼を言いたい。親や妻の家族も僕がアドバイスを求めない限り、直接は口を出さなかった。ありがたかった。
一か月間、妻のパート代と貯金でしのいだ。申し訳なかったと思う。僕と妻は同じ職場の技術職と事務職で、職場に1か月間休職している夫の代わりに一所懸命働いてくれたと思うと感謝しかない。ありがとう。僕は何もできないことを再確認した。それが今回、仕事を休ませていただいた最高のプレゼントだった。
今でもデザインをやりたい気持ちにウソはない。だから、また逃げるかもしれない。でも今度は会社の中で逃げようと思う。うちの会社は業務上、Adobe CCを契約しているし、僕は動画編集の仕事を任されているので、うまく説得できればモリサワパスポートを契約してくれている。(モリサワはもうないけど)その環境を活かそう。自分ではできないこと、お金でソフトをそろえたりマックをそろえたり、はできないけれど、それを会社にやってもらおう。
その中で例えば事務の仕事で何か張り紙を作りたい。けれどもワードエクセルしか入ってなくて、おもしろいものはできない。そんなときはデザイナーではないデザイナの僕に声をかけて、とか言っておく。そしてそこからコミュニケーションをとる。苦手も克服できる。社内通知やらなにから、作らせていただけるのなら喜んでとびつこう。それが前田デザイン室で学んだこと。𠮷田を、𠮷田哲也を新たな段階に移行することができた最高のものだ。僕は躊躇もするし、正直、ずるくてだるがりなところもある。それを認める。自分の弱点を認めたら、強い。だって、それを小さく小さくしていって、消すことはできなくとも、無視できるくらいにはなればいいだけだし。
その逆も然り、今は小さな自信しかなくても少しずつ実績を積むことで必ず大きな自信になる。やればやるほどスキルは上がるし、経験値もあがる。わるいことなんてほとんどない。時間がないくらい。ヤバイ。
最後に、こんな素敵な時間と空間を提供してくださった前田さんと細川さん、そして妻にお礼を言いたい。ありがとうございます。僕は小さな会社の小さな会社員として働き続けます。その小さな会社が当時31にもなって、妻と子供を養ってもいない、いい年こいて、やりたいことしかやらなくていい、ことからやりたいこともやらなくていいこともやるからやりたいことがもっとできるんだよ、と救い出してくれたことの恩を返すことができるまで。


アナタのちからを僕に分けてください。