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DAOの立ち上げについて - Web3技術コミュニティ UNCHAIN の分析

最近、DAOやNFTサービスの立ち上げに関わり始めたので、web3の技術や概念をわりと真剣に調べてきました。そして、立ち上げの段階で考えるべきこととその順序に目星がついたので文章化してみました。
話のベースは日本発のweb3技術コミュニティであるUNCHAINに入って活動しつつ、わかってきたこと、僕が感じたことになります。

UNCHAINは株式会社shiftbaseが運営するWeb3技術の学びのコミュニティで、僕が知る限りのWeb3コミュニティとしてはいちばん魅力的です。立ち上げ3ヶ月とは思えないほどうまくいっていっており、ビジネスとしてはまだ赤字だとおもいますが些細なことだと感じます。

DAOを立ち上げようとなったら、まずガバナンスやトークンエコノミーの設計に取り掛かりはじめたくなってしまいます。
それらはDAOの運営には欠かせませんし、今までの組織やサービスの開発にはないとても魅力的なもので、すぐにでも考えたくなってしまいます。しかし、ガバナンスやトークンエコノミーは手段で目的ではなく、最初から深く考えようとしてはいけないと感じます。
そこで、UNCHAINが立ち上げ3ヶ月ながらに活発なコミュニティになぜなったのか、いかにして可能だったのか、UNCHAINのメンバーたちとの議論を素材に僕なりに考えてみました。

  1. 特定の方向への推進力があり、コミュニティのヴィジョン、ミッション、コア・バリュー、そしてパーパス(MVVP)が明文化されていること。

  2. 初期のコミュニティメンバーにMVVPが十分に浸透し、途中参加者がすぐに感じとれる濃い文化形成ができていること。

  3. コミュニティに入ることで得られる価値/利益がはっきりしており、それを無料で得られること。加えて、コミュニティ内トークンを稼ぐことで貢献の証を貯められること。

  4. 参加者を飽きさせないための、絶え間ないアップデートと、運営者と参加者のインタラクションの量が多いこと。


特定の方向への推進力があり、コミュニティのヴィジョン、ミッション、コア・バリュー、そしてパーパス(MVVP)が明文化されていること。

普段つかっているサービス・商品の提供会社のヴィジョンやミッション、コア・バリューを知っていますか?
普段つかっているPixel 6をつくっているGoogleのことさえ、僕はほとんど何も知りませんし、これが普通だと思います。スマホが届いたときに入っていた箱にそんなことは書いていません。
それに対して、UNCHAINの場合はコミュニティに参加したらまず読むことを勧められるNotionページに、なぜUNCHAINが存在するのか、何を目指すのか、参加者になにを求めるのか、そういうことが書いてあります。
普段取扱説明書を読まない僕にとってはそれさえも面白かったです。

体系的に技術を学べる類似サービスはたくさんありますが、どこにもなかった新しい体験で、新しい学校に入学したような感覚に近いなぁと感じます。

初期のコミュニティメンバーにMVVPが十分に浸透し、途中参加者がすぐに感じとれる濃い文化形成ができていること。

MVVPが明文化されていることと、それが組織に浸透することはまた別の話です。いくつもの企業が組織拡大にしたがって文化形成に悩むように、それはコミュニティも同じだと思います。
UNCHAINでは最初に引き入れたメンバーに対して、2日に1回という驚くべき頻度でAMA(ask me anything)を実施していたようです。新しく使い始めたサービスの運営が2日に1回のペースで顧客と話す機会を設けた経験や事例は他にありますか?僕はありません。
そのなかで、徹底的にしつこいほどメンバーに対してMVVPを共有して濃い文化の土壌をつくっていたようです。

初期の段階で運営者自身に不動のMVVPがあった訳ではなく、コミュニティメンバーとインタラクションする中で洗練し、具体化してきた側面もあると推測します。このようなメンバーとともに組織やサービスの土台を一緒に築いていくことはWeb3コミュニティの醍醐味であると思います。

僕は500人目ぐらいに参加したメンバーですが、Discordに入った瞬間すぐにどういう場なのかを体感しました。Notionで基本的なことを読み、メンバー同士のインタラクションをみた瞬間、どう振る舞えばいいのか、何をすればいいのかがわかり、
それに加えて、早くなにか動き出したいと思うようになりました。

コミュニティに入ることで得られる価値/利益がはっきりしており、それを無料で得られること。加えて、コミュニティ内トークンを稼ぐことで貢献の証を貯められること。

なにか動き出したいと思ったとしても、手がかりがなければ何にも手がつかないことはよくあります。例えば、環境保護活動に関するとても魅力的な話しを聞いて感銘を受けても、なかなか動き出せないことはよくある話だとおもいます。

UNCHAINにはすぐに始められるweb3の学習コンテンツがあります。
僕が入ったときには8つのコンテンツがあり、イーサリアムのチェーンに情報を残すところから、NFTを発行したり、NFTゲームの基礎をつくったり、そこそこ濃い内容が体系的に学べます。
そして、ひとつのレッスンが終われば翌週に500CHAIのコミュニティトークンがもらえます。今は取引所に乗せられていないので、学習したという記録でしかありませんが、いずれ時が来ればCHAIに金銭的価値が見出される可能性は大いにあるので、先にレッスンやコミュニティへの貢献によってCHAIを貯めていた人は利益を得られることになります。

重要なところはこれが無料だということです。
例えば、最近クリプト界においていろんな話題になっているSTEPNは始めるために1足2万円ぐらいのNFTシューズを買う必要があります。つい先月までは7万円ほどでした。
参加障壁があまりにも高すぎるように見えますが、それはSTEPNのトークンが取引所にのっており、歩けばすぐに回収できたからです。*現在は通貨の値段が大幅に下がったため状況は異ります。

ところが、UNCHAINでは無料で最先端の技術が学ぶことができ、それに加えて、ピアラーニングの機会とトークンもついてきます。貰いすぎのような気もしますし、運営者やshiftbaseに投資している人は仏様かなにかと思えてきさえします。
これはMTT理論の基礎があれば説明がつくと考えています。今僕たちがつかっている円やドルなどの国民国家が発行する通貨の成り立ちは、国家のペイフォワードによる国民の負債から始まっています。例えば、私たちは道路や水道管のインフラ整備などによる先行投資によって生活環境向上という利益を得て、その対価として国に税金を払っているんだというように考えます。
このフレームで見れば、UNCHAINから技術の学習環境という利益を無料で享受し、いずれ価値が生まれるかもしれないトークンをもらっているユーザーは何か恩返ししたいと思い、自分が教わったことを次の人へ還元したり、学習コンテンツをより良くするためのアイディアをgithubのPRや感想として残したりするようになります。それは言うまでもなく、コミュニティの成長につながっていきます。

参加者を飽きさせないための、絶え間ないアップデートと、運営者と参加者のインタラクションの量が多いこと。

UNCHAINのdiscordは常に動いています(日本時間は確実に)。新しい企画がどんどんリリースされます、今はPolygonチェーンを使ったハッカソン企画が動いています。メンバー同士のボイスチャットや議論に運営の方が積極的に入ってきます。
これまでのサービスと同様にユーザーを飽きさせないための絶え間ないアップデートはweb3サービスにとっても重要だということは言うまでもありません。特にコミュニティにおいては会話の量や質ですぐにユーザーに状況が悟られてしまいます。
継続的なコミュニティ運営のための工夫はまだ整理できていないですが、これから注意深くみていきたいとおもいます。


以上のことは書くは易し、実践するためにとてつもない労力がかけられているとジンジン伝わってきます。
そして文章化してみると、web3といってやることが全く新しくなるわけではなく、web2からの連続だなぁとも感じます。

最後に、UNCHAINのトークンCHAIがどのように金銭的価値を持つか僕なりの妄想を書いて終わります。
いまUNCHAINで提供されている学習コンテンツはとても完成度が高く、実装のための知識がスラスラとついてきます。しかし、それは僕がいわゆるweb2サービスの開発で実践を積んできたからで、プログラミング自体はじめての人にはなかなか難しいんじゃないか、というところもあります。
さらに、本当に実践で使える知識を身につけるためには、さらに教材を充実させることや、ほんとうにサービスをつくってみることが必要です。
教材の拡充や実践の場の提供などは、運営者の方々はもちろん、コミュニティメンバーがそれぞれの貢献の領域で活躍しながら、鋭意準備中にあります。
そうして出来あがっていくサービスやコミュニティはこれからweb3を学びたい人にとってはお金を払っても入りたいとおもう価値がつくはずで、それと同時に流通しているCHAIにも金銭的価値が見出されるようになります。

これは僕の妄想なので、本当はどういうシナリオを描いているのかわかりませんが、UNCHAINは今よりもずっと大きくなると確信しています。

現在、web3への一般からの認識や議論は基礎技術や技術の使い道にとどまっているい印象をうけますが、実際にうまく動いているサービスが徐々に増えてきています。いくつかのプロジェクトに実際に関わりながらそれらを学び、立ち上げようとしているDAOプロジェクトにも活かしていきたいと思います。

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