『波よ聞いてくれ』という漫画を読め

溢れんばかりの衝動、ラジオへの熱。パーソナリティのあり方。
『波よ聞いてくれ』という漫画を読んでいる。このマンガがすごい!にノミネートされているらしい。
この記事を書いている3月20日時点で既刊全5巻。まとめて借りて読むのにちょうどいいサイズ感。
とにかく、あらすじにある「ラジオ」の文字に惹かれた。昔、声優ラジオに頻繁にメールを送っていた頃を思い出した。当然、全部借りてみる。
あらすじは至ってシンプル。ひょんなきっかけでラジオパーソナリティとしてデビューすることになった主人公の奮闘を描く。
1巻2巻は、まだ序章。いざラジオで話してみたら意外と喋りが良くて、これから上手くやっていけるみたいな、いわゆる俺つえー漫画かなって思った。

でも3巻、4巻と巻数を重ねていくうちにその様相は次第に変化する。主人公の俺ツエー(本作の主人公は女性なので私ツエーのほうが現実に即しているかもしれない)から、ラジオ局で働くことの面白さ、そこで働くひとの哲学へとシフトしていく。
まずは3巻。新人女性AD、難波の過去回想のシーン。
そこで構成作家、久連木によって語られる「ラジオ局」の今。斜陽産業化していく中で構成作家と呼ばれる人間が感じる面白さ。
そして4巻、本作の舞台となるラジオ局、MRSの話し手、茅代が主人公に送る説教。

(前略)率直で不器用でいつもいつも美味しいところを要領のいいやつにさらわれる人。そういう人たちに「貴方だけじゃない」って言いたいのよ。「貴方は間違ってない」って語り続けたいのよ。

ラジオに関わる人たちの情熱のこもったセリフに、自分が初めてラジオにメールを送った日のことを思い出した。


自分にないものを持つ同期との差に苦しめられた大学3年の冬。
この悩みを、苦しみを、誰かに聞いてほしくて、でも口に出してしまうと恥ずかしくて、だからひっそりとメールにしてとあるラジオに送った。ファンクラブに入会している人だけが聞けるラジオだったから、多くの人に聞かれる心配もないし、何より自分の好きな声優さんにもしかしたらコメントしてもらえるかもしれないという邪な気持ちもあったけれども。
驚くべきことに、そのメールは(当時の)最新回で採用された。ひとしきり自分の悩みを読んでもらって、(当初の思惑通り)それにコメントも頂いた。

才能とかに関してはさ、努力ではなかなか太刀打ちできないなって思うことがおおいので(中略)天才に立ち向かうために努力する才能を身につけたいね。頑張るぞ、頑張ろうね。​

当時、めちゃくちゃに落ち込んでいた私は、このコメントに救われた。(失礼な物言いかもしれないが)「困っているのは君だけじゃない」と言われている気がして、めちゃくちゃ安心した。

おもえばそのコメントも、そのパーソナリティさんが「『貴方だけじゃない』と語りかけたいから」してくれたのだろうか。それとももっと打算的な理由からなされたコメントなのだろうか。
ともあれ、どんな背景があったかはわからないが、とにかく私はこのコメントに、救われたのだ。

長々とした自分語りもここまで。
とにかく『波よ聞いてくれ』という漫画は面白いのだ。
特に、ラジオにメールを送ったことのある君、パーソナリティの語りに救われた君、ラジオ局で働きたい君、そうそこの君にこそ、おすすめしたい。
ぜひ、読んでくれ。

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