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信玄の湯を巡る #静かな温泉旅 (1)Introduction

山梨県出身の有名人物と言えば、戦国武将の武田信玄。
今でも山梨県内では「信玄公」と呼ばれています。ここでもリスペクトを込めて、信玄公と呼ばせていただきましょう。

そんな信玄公、よく温泉に入っていたそう。
甲府の、信玄公の暮らしていた館から数キロ離れたところには、湯村温泉があります。
山梨県南部の下部温泉では、信玄公は戦で受けた刀傷を癒したそう。
この湯村温泉と下部温泉と、昭和の時代に発見されて発展した石和温泉とで、「甲州三大温泉」というそうです。

三大温泉で一番有名なのは、やはり石和温泉でしょうか。
新宿からの特急列車が石和温泉駅に止まると、多くの観光客が降りていきます。
戦後、果樹園の中から温泉が湧き出したのが石和温泉のきっかけ。
平坦な甲府盆地の中に、大きな旅館がいくつも立っています。

フルーツ狩りも楽しめますし、温泉街の中にワイナリーがあり、温泉とワインとを一緒に楽しめるのも魅力。
どちらかといえば、石和温泉はひとり旅より友達や家族との旅行向けのイメージかもしれません。

さて「三名泉」の残り2つ、湯村温泉と下部温泉は、石和温泉に比べれば少しマイナーな印象。
今回は、そんな2つの温泉地の好きなところを書いてみようという試みです。

「信玄の湯」湯村温泉

湯村温泉は、弘法大師が杖を突いたら湧いてきたという、歴史の長い温泉。
戦後に石和温泉が有名になるまでは、湯村温泉のほうが知られた存在だったようです。
遠く離れた兵庫県にも同じ名前の湯村温泉があり、もしかしたらそっちのほうが知られているのかも。。

さて、甲府の湯村温泉は、交通の便の良さが特長です。甲府駅から路線バスで15分ほど。
信玄公が住んだという「躑躅が崎館」(現在の武田神社)からは5キロほど離れています。
戦国時代当時、館からどれくらいで湯村へ着いたでしょうか。アクセス、躑躅が崎館から馬5分、とか。。

今の湯村温泉は、郊外の住宅街の中に温泉宿が点在していて、温泉街らしさはあまり感じられません。
廃業した温泉宿がちらほらあったりして、少し寂しいたたずまいでもあり。そんな中で営業を続けている宿の多くは「自家源泉」を持っています。
要は、宿の敷地内から、温泉が湧いている。
湯村のお湯は少しぬるめで、硫黄泉の香りが漂うのが特長ですが、宿によって温泉の感じが微妙に違うのかもしれませんね。

アクセスが良く、温泉も良いので、これまで何件かの湯村の温泉宿に泊まってきました。
まだ明るい時間に湯村の宿にチェックインして、近くの飲食店で夕食をいただいたり。
あるいは夕方に甲府駅に着いて、駅の近くで夕食をいただいてからバスで湯村に向かったり。

湯村温泉は甲府の郊外にあるので、宿から歩いて行ける場所にお店がたくさんあって便利です。
そして、甲府の街は食のワンダーランド。
甲府の街ナカで、山梨グルメと甲州ワインとを楽しみたいところです。ほうとう、甲府鳥もつ煮だけではありません。
そんな甲府の街でグルメを満喫した後、市街地のホテルでもいいのですが、温泉宿に泊まってのんびり過ごすなら、湯村温泉が良さそうです。

なお、湯村温泉は近年「信玄の湯」を名乗っています。温泉街のリニューアルも予定されているのだとか。

「信玄の隠し湯」下部温泉

さて、場所は変わって、下部温泉。
下部温泉は甲府から南に向かい、富士山を挟んで反対側にある温泉地です。
ここも信玄公ゆかりの温泉で、かの有名な上杉謙信との戦いで受けた傷を、ここ下部温泉に入って直したのだそう。
信玄公は、領地の中にこういう温泉をいくつか持っていました。これらの温泉は「信玄の隠し湯」として知られています。
ここ下部温泉が、一番有名な「隠し湯」といえるのではないでしょうか。有名な隠し湯、というのはおかしな表現ですが。。

甲府から下部温泉までは、特急電車で40分ほど。
下部温泉駅は無人駅で、ぱらぱらと観光客が降りていきます。
駅前には大きなホテルや日帰り入浴施設、金山博物館などがありますが、メインの温泉街はそこから1キロ以上離れた川沿い。
駅前と比べて、奥の温泉街はひっそりしています。

今から20年近く前、とある本を読んで下部温泉を知り、ガイド本「るるぶ山梨」を片手に電車に乗って出かけてみました。

下部温泉駅を降りて川沿いの道を歩いていくと、旅館街が見えてきます。
「るるぶ」に載っていた宿に日帰り入浴をお願いし、さっそくお風呂に入ると、お風呂に注がれているのはお湯ではなく、水。
温水プールくらいの温度で、最初は違和感がありましたが、少し長く使っていると、気持ちよく。
上がる頃には、じんわり体が温まる不思議な感じ、これが温泉のパワーなんだなと感じることができたのが、自分の温泉旅のきっかけのひとつ。
それまで、温泉の効能なんてよく分からずにいたのです。

少し後、今度は宿に泊まってゆっくり下部のお湯ならぬ、お水のお風呂に入りました。
じっくり考え事をするには、ちょうどいいお風呂でもあります。
信玄公は、戦で受けた傷を下部で治したそうですが、確かに翌朝、擦り傷がきれいになっていたような気がしました。

湯村温泉と下部温泉、温泉街の雰囲気も温泉の感じも違いますが、ともに信玄公ゆかりの、歴史の長い温泉地です。
かたや「信玄の湯」、もう片方は「信玄の隠し湯」。
どちらにも何度も足を運んでいますが、それぞれについて好きなところ、良いところを、少しずつ書いていければと思っています。


ここまでご覧くださり、ありがとうございました。 今後も静かな温泉旅をしつつ、noteを書いていければと思います。 サポートいただけたら嬉しいです。