感情演技について
「感情演技」という言葉を聞くと、その言葉を知らない・初めて聞くという方は、どうしても
「感情的に演技をする」
という印象を持たれるかもしれない。
それは、俳優の中にも、監督の中にも居ると思います。
でも、感情演技とは、
その役が、その映画の中で、最終的に何を成したいか、どういう目的を持っているか、という事を脚本から読み解いて、そのために一つ一つのシーン、それこそ一つ一つのセリフの感情を読み解いて、その感情を自分に引き起こさせる自分の中の体験と結び付けて、役と自分を同化(パーソナル化)させて、
「役として自然に演技をする、自然に生きる」
事を指します。
大げさに泣いて叫んでいる演技が、感情演技ではないのです。
昔、インディーズ映画に出演していた時、
「自然な演技しかできないんですよ」
と言って、どの役でもうつむき気味にボソボソしゃべっている方が居て、その時は僕もまだ感情演技について勉強していなかったのですが、何か違うなと感じていました。
この感情演技をきちんと勉強すると、演技で大事なのが、
・目的を把握する
・目的を達成するために「行動」する
だと分かります。
そのために、考えて考えて考えて、トライ&エラーを繰り返し、どの「行動」がその時の感情にアクセスするかを掴んで、でも、最終的に演技をする瞬間にそれまで考えていた事を捨て去って、相手に、出来事に「反射」できる状態でいられるか、そういう準備を俳優はする必要があります。
しかし、現場で準備していったものが監督が求めるものと違う事はよくあります。
その時、監督も「感情演技」について知っていると、俳優と「目的」についての部分から話し合う事ができます。
また、俳優も監督の演出について学んでおくと、監督の言わんとする事から、自分の中で設定した「目的」と、そのために引き出した自分の「体験」を見直し、再設定する事ができます。
しかし、現場で監督とそういう事が話せる事はあまりなく、基本的には、
「もっとこうして」
「もうちょっと抑えめで」
「ここは、もうちょっと待ってから」
という演出がほとんどです。
しかし、その演出をすると、何が起きるかというと、
役をA、それを演じる俳優をBとすると、
「もっとこうしよう」というB
「もうちょっと抑えよう」とするB
「もうちょっと待とう」とするB
が出来上がります。
そう、本来画面に映るべきAの要素がどんどん減っていってしまうのです。
監督が演出だと思った発言で、Bの「ニュアンス芝居」が強まっていく悪循環。
それは、監督、俳優双方にとって良くない事でしかない。
だからこそ、俳優と監督の間で、「共通言語」となるものを学ばないといけないなと感じています。
ハリウッドの監督たちの間では、自身の演出力強化のため、演技について学ぶ事が広まってきているそうです。
日本でも、この「共通言語」を持てるようにならないと、と思います。
しかし、これも演技の導入部分に過ぎないし、この方法が当てはまらない方もいます。
みんなそれぞれ模索している。
もっと学ばないといけない事ばかりです。
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