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【解説】地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化の現状

こんにちは、業務可視化・改善コンサルタントのスズキユウです。

令和7年度末を目標に、地方公共団体の行政20業務を対象にした基幹業務システムの統一・標準化対応が求められています。
しかし、総務省・デジタル庁の推進に対して実態は進んでおらず、まさに「笛吹けども踊らず」といった状態となっています。

今回は地方公共団体の標準化対象業務Fit&Gapを支援している立場から自治体の現状と課題をまとめてみたいと思います。


地方公共団体の基幹業務システム統一・標準化とは

令和7年度末までに地方公共団体は行政手続20業務を、これまで各団体が個別に調達してきた基幹業務システムから、ガバメントクラウド上に構築された国が定める標準仕様に基づいたシステム/サービスの利用に移行しなければならないという定めです。(令和3年法律第40号 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律)

この法律が制定された背景には、下記の理由があります。

  1. 標準仕様に基づいたシステム/サービス利用に統一することによりベンダーロックインを解除し、自由競争によるシステム開発・運用コストを削減する

  2. ガバメントクラウド上に構築したサービスに移行することにより、システム調達コストを低減する。

  3. 全国的に業務を標準化することにより業務の効率化と属人性の解消、団体間での業務の共通化を実現しやすくする。

つまり、今後日本が直面する人口減少・生産労働人口の爆縮による労働力不足、税収減といった地方自治体の運営危機に対して、システム調達・運用コストの低減と広域連携の容易化を目指したものと捉えることができます。

地方公共団体情報システムの標準化対応の現状

地方公共団体のシステム標準化が目指していたものは、特に以下の問題を背景としていました。

  • ITベンダーに極度に依存することによるシステム運用費用の高騰

  • 特定のITベンダーに依存することによる競争の低下と委託費用削減の難化(ベンダーロックイン)

しかし実態として、大多数の地方公共団体は既存のITベンダーに丸投げをしてきたことから判断・活動ができず、昨今はITベンダーは対応不能の回答を得て手詰まりとなっている状態です。

ITベンダー側としても国の仕様提示が遅れており対応できない。各団体一斉の対応を実現できる対応するリソースがないという状態であり、本件から手を引くという会社も発生しています。
結果としてなし崩し的に国も条件緩和の発表を行うという結末となってしまいました。

令和5年10月現在、標準化法に基づき令和7年度末の移行期限は変更されていませんが、システム調達不能を理由とする移行延期は許可されている状態です。(それ以前に未対応の団体が多いため、延期というなのまま数年が経過すると予想されます)
また、本来の目的であったベンダーロックインの解消は全く果たせなかったという結末を迎えました。

問題を直視し対応を行なっている自治体の事例

このような状況下でも、来るべき未来に向けて対応を検討し、実施している団体も少なからず存在します。

大阪府大阪市

大阪市は政令指定都市として周辺自治体をリードすべく、DX推進組織を設立して行政DX・システム標準化対応を行なっています。

特に推進基盤となる業務可視化・改善検討はiGrafxを標準ツールとして導入し、職員主導で推進しています。


埼玉県吉川市

吉川市も職員主導のDX推進計画を策定し、行政DX・システム標準化対応を推進しています。吉川市では職員主導の業務可視化を重要視し、BPMNの導入と庁内ルール策定、職員向け研修の実施を行なっています。


iGrafxが提供する標準業務テンプレート

iGrafxは優れた操作性と、Excelから国が定めたBPMN業務フローを作成できる簡便さによって広く支持されています。


今回の基幹業務システム統一・標準化においては、各省庁からPDFで提供されている標準業務フローを編集可能なiGrafxテンプレートファイルに移行し、公開されている全業務を無償提供しています。

このテンプレートを活用した現状業務可視化、標準業務とのFit&Gap分析手法を習得できる研修も提供しており、特別な知識がなくても短期間で標準化対象業務のBPMNフロー作成と分析を行うことができます。


本質的な地方公共団体の課題解決のために

基幹業務システム統一・標準化対応は国の推進不備と団体のITベンダー依存を浮き彫りにしてしまいましたが、本来の目的は2040年問題を頂点とする人口減少下における行政サービスの維持です。

地方の小規模自治体にとっては行政サービスの崩壊すらあり得るこの問題に対して、真摯に取り組む自治体も存在します。

例えば先日紹介した青森県中泊町のように、その意思と取り組みは自治体の規模とは関係ありません。


終わりに

ここ数年、特に地方都市を中心に地方公共団体への支援をさせていただいた経験から、各団体の行政DXや標準化対応に向けての温度差の開きを深く実感しています。

一方で地方公共団体周辺のITベンダーやコンサルタントともお話しする中で、何か時代の転換点のようなものを実感してもいます。

一つ言えるのは、来るべき将来に危機感を抱えている職員は少なくないということかと思います。ただ、その職員さんに私たちが提供しているような「誰でも簡単に実現できる」手段が届いていないのが現状です。

今回、私たちの活動における一つのまとめとしてこの記事を作成しました。

次にこのような記事を書く機会がきたときに、本来望んでいたような状況になっていることを祈ります。

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