ブラストビート哲学~超絶スピードドラミングが聴ける名盤25選~
どうも皆さん、YU-TOです。
色々な物事がカオスになっている昨今の世の中ですが、お元気でしょうか?。
そんなトチ狂った世の中だからなのかは分からないですが、1年程前に書いたこちらの記事が地味に伸びている。
やはり、まだまだ国内にも"ブルデス"というニッチな音楽に興味のある人が数多くいるのだなと妙な感動を覚える一方で、「どうせ怖いもの見たさだろ?」という捻くれた気持ちになってしまう自分がいる事にも気付く。
この手の音楽が好きな人は、どこか「世間に嫌われてナンボ」な考えを持っている事は確かだし、自分の中にも似たような姿勢が未だに健在な事をこの記事が話題に上がる度に思い知らされる。
ただ、記事を読んでくれることはかなり嬉しいし、ここ最近は"名盤紹介"的な記事が書けていなかったので、ここいらでまた、世間の常識から逸脱した極端な音楽を紹介する記事を書いてみたいと思う。
今回紹介する音楽のテーマはズバリ、「ブラストビート」だ。
"ブラストビート"とは、デスメタルやグラインドコアなどの音楽において良く使われるドラムビートの1つで、シンバル、スネア、バスドラムの3点を全て同時、もしくは交互に叩くというビートの事。
「それって"ビート"なの?」
と、ブラストビートを知らないポップスを専科とするドラマーの方から疑問を持たれた事も過去にあるが、確かにブラストビートを自信ありげにハッキリと「ビートです」とは言いづらい面もある。
そもそも、"Blast"という言葉は"爆発"または"爆風"という意味で、8分や16分などのリズムを表した言葉では無い。
例えば、"8ビート"とは"聴き手に8分音符を感じさせるビート"という事で、16ビートは"16分音符を聴き手に感じさせるビート"であるという事が、ドラマー界では一般的な通説だ。
その理屈で言ったら、ブラストビートとは"爆風を聴き手に感じさせるビート"という事になる(笑)。
もはや"リズム"では無い(笑)。
しかし、例えば本来は"混ぜる"という意味の"シャッフル"という言葉は当たり前にドラムのリズムを表す言葉で使われているし、"アンダンテ"などの音楽用語も意味は"歩くような速さで"など、すごく感覚的だ。
だから言葉自体はアホっぽくとも(笑)"爆風を感じさせる"というビートがあっても良いのでは?とも思う。
それに、ブラストビート自体がここ10年の間でかなりの市民権を得てきてる事は確かで、ドラムを演っている人でこの言葉を知らない人はほぼいないのでは無いかと思うほど、ブラストビートの知名度は飛躍的に向上した。
自分が専門学生だった19歳の頃でさえ、デスメタルを全く知らないような他学生達から「ブラストやって!」と言われていたくらいだから、もはやブラストビートは一般的なドラムビートの仲間入りをしたと言っても良いのではないかとも感じている。
とは言っても、ブラストビートが使われる音楽というのは、かなり限られてくるだろう。
デスメタル、グラインドコア、、、その辺りの過激な音楽で、いってもせいぜいパンク止まり。ごく一般的なJ-POPでブラストビートが使われる事はまず無い。
もちろん、"使ってはいけない"というルールがあるわけでは無いからJ-POPで使われても良いとも思うのだが、余りにも極端なビートであるが故、使った時点でそもそもの曲のアレンジを変えなくてはいけなくなってしまう。
例えばスラッシュメタルで良く使われる"2ビート"がJ-POPで使われる事はあるが、ブラストビートにそれは無い。
それだけブラストビートというのは知名度こそあっても、未だに"アンダーグラウンド"なビートという事なのだ。
言葉と存在は一般的になってきてはいるが、実際に音楽で使用される頻度は極めて少ないのが"ブラストビート"というドラムビート。
しかし、ブラストビートにはやはり"ロマン"がある。
もう"叩けるだけで凄い"というか、音楽からかけ離れたある種の"技"とも捉えられるビートで、デスメタルという"音楽"は聴かずともブラストビートには興味があるという人も少なく無いだろう。
だが、本当の意味で"ブラストビート"というロマンを理解するには、やはりそれを使った"音楽"がどんなものなのかを理解しなければならない。
ドラムだけでは音楽にならないし、とてつもなく速いビートが音楽の中で消化されるからこそ"ロマン"が生まれるのである。
そんな"本物のブラストビート"が何なのかを知ってもらうには、"百読は一聴にしかず"でブラストビートを余す事なく使用したカッコ良い音楽を徹底的に聴いてもらうしかない。
なので今回は「YU-TOがセレクトするブラストビート名盤」を25選という数にわたって紹介していきたいと思う。
ここで紹介する音源を全て聴いてもらえれば、"ブラストビート"の魅力が嫌でも分かってくるだろう。
是非、最後までお付き合いください。
1.NAPALM DEATH 「SCUM」
正確に言うと"最初に叩いた"という訳ではないらしいのだが、世界で最初にブラストビートを世に知らしめたのはNAPALM DEATHのミック・ハリスだ。
この作品で聴けるブラストビートは、もはや"ビート"とは名ばかりの今にも崩れ落ちそうな前につんのめったドラミング
それもそのはず、ここでミックがブラストビートを叩いたのは"ヤケクソな怒り"からであった。
ある日のスタジオでどんなに速く叩いてもメンバーから、「ダメだ、全然遅ぇー。もっと速くしろ。」と罵られ続け、
「だったらこうしてやるよ!!!!。クソが!!!!!」
と、このビートを叩いたらメンバーから「最高にクールじゃないか!!」と称賛されたというのが、このブラストビートが生まれた原点であるらしい(笑)。
綺麗で整ったブラストビートが主流な昨今だが、その原点は"ヤケクソ"だったという事実は、ブラストビートを叩くドラマーならば誰もが心のどこかに持っておくべき姿勢なように思う。
もう見て下さいよ、この表情(笑)。
これがブラストビートの原点です。
2.S.O.D 「Speak English or Die」
ANTHRAXのチャーリーべナンテとスコットイアン、BRUTAL TRUTHのダンリルカ、M.O.Dのビリーミラノらによるプロジェクトバンド。
このアルバムに収録されている"MILK"でチャーリーがぶち込んだブラストビートは瞬く間に世界中に広がり、ブラストビートの知名度向上と発展に貢献した。
ここで聴けるブラストビートも、もやはズレているのではないかと思うくらいにめちゃくちゃな代物だが、この勢いの凄まじさは正に"爆風"そのもの。
「朝起きてシリアル食おうと思ったけど、ミルクがねぇ!!。母ちゃん買っといてよ!!。」
という、どうしようもない甘えん坊の駄々コネソングで、ここにもブラストビートの1つのルーツを感じる。
やはりブラストビートの根源はこういう下らない事というか、真面目じゃないふざけた感覚なんだということを、この曲を聴き返す度に思う(笑)。
3.SLIPKNOT 「IOWA」
不穏なイントロ(515)から一気に雪崩れ込む"PEOPLE=SHIT"で、ブラストビートという存在が一気に市民権を得たと言っても過言では無いだろう。
自分は、、、もう世代的に仕方が無い事だが、ブラストビートを叩いていると大抵は「SLIPKNOT好きでしょ?」とか「ジョーイみたい!」と散々言われてきた。
その度に「違うわ!!」と思っていたものだが、遠く海を越えた日本でもブラストビートの存在を広めたジョーイ・ジョーディソンの功績はやはり大きい。
ここで聴けるブラストビートは上記の2作品と比べたらカッチリしたものになっているが、それでもかなりテンポの上下が激しく、とてつもない勢いを感じさせるブラストビートになっている。
"人間=クソ"という、どうしようもないタイトルの曲にピッタリな"怒り"を感じさせるガムシャラなフィーリングがあり、実は自分の思うブラストビートのルーツに近いものだったんだなと、ここ最近になって分かった次第。
必聴作品。
4.VADER 「LITANY」
このVADERの「LITANY」だが、"賛否両論"な作品として界隈で語り継がれている。
その主たる要因は、地響きのように響き渡るドラムの音のデカさ(笑)。
もはやギターとボーカルを掻き消すが如く鳴り響く超速ブラストビートは、迫力を通り越して唖然としてしまう。
実際、ドラマーのドックは生音の鳴りもかなりの物だったらしく、それと相まってのこのブラストビートであったのだろう。
ドックは2005年に亡くなってしまったが、この作品で彼が残したプレイは無意識の中で自分のブラストビートの指標となっている。
無機質で機械的ではあるのだが、この他の追従を許さない圧倒的スピード感は正に"無敵"で、ただただ正確なだけのブラストビートとは一線を画すプレイだ。
実は最近、コピーに挑戦しようとしたのだが叩けなかった(泣笑)。
とにかくブラストビートが速い上に長い、、、。ひたすらに叩きっぱなしなので腕がすぐに悲鳴を上げてしまい、改めてドックというドラマーの異常さに舌を巻いた次第。
R.I.P
5.GUTROT 「Excruciatingly Euphoric Torment」
この作品、正式にはDYSENTERYというバンドとのスプリット盤なのだが、この作品を手に入れた時は、ほぼGUTROTしか聴いていなかった。
ドラマーのザックは、当時のブルデス界隈では"天才"と呼ばれる程の実力を持ったプレイヤーで、後にThe Black Dahlia Murderに加入した事からも、その実力が本物であったことは確かだ。
この作品での彼のプレイは、もう"Incestual Rimjob"に尽きる。
曲の後半にひたすら鳴り響くグラビティブラスト(注:スネアのリムにスティックを引っ掛けて片手で16分連打をするブラストビート)はスネアの鳴りが余りにも綺麗で、聴いた当時衝撃を受けた。
シンバルの使い方も多彩で、ブルデスドラマーらしいグシャっとしたドラムではあるのだが、どこか知性を感じさせるプレイもあって侮れない。
スナッピーを抜いた"カンっ!"というスネアの音色も、「ああ、当時のブルデスってみんなこうだったな、、」と懐かしさを覚える(笑)。
6.SUFFOCATION 「Effigy of the Forgotten」
SUFFOCATIONといえば「Pierced from Within」が世間的な代表作ではないかと思うのだが、"ブラストビート"という観点から見れば個人的にはこの「Effigy of the Forgotten」を名盤として名を挙げる。
当時のドラマーはマイク・スミス。
彼の叩き出すブラストビートは、ハイハット、スネア、バスドラムの三点を同時に叩く"表打ちブラスト"のみ。その半ば開き直ったような単純さが聴いていて非常に心地良い。
SUFFOCATION独特の重苦しい疾走感と極悪さは、確実にマイクの手によって醸成されているのではないかと思う。
6/8拍子を巧みに使ったリズムアプローチも緊張感があり、後に多くのフォロワーを生み出す"SUFFOCATIONサウンド"はこの頃に確立されたと言って良い。
またこのスコットバーンズが手掛ける籠った音作りも、味わい深くて良いんですよね〜。
7.TERRORIZER 「WORLD DOWNFALL」
グラインドコアの大名盤。
MORBID ANGELのデイヴィット・ヴィンセントやNAPALM DEATHの故ジェシー・ピンダート等も在籍していたスーパーバンド。
ドラマーはex-MORBID ANGELの超人ドラマー、ピート・サンドヴァル。
MORBID ANGEL時代と比べたら人間味のあるドラミングだが、パンキッシュな勢いのあるスピード感が凄まじい。
小気味良い裏打ちブラストビートがとても気持ち良く、かなりガッチリしたドラミングで、整合感のある素晴らしい演奏を当時からピートは披露。
このTERRORIZER時代、ピートは全てのアプローチを片足のみで演っていたと語っているが、どう考えてもツーバス・ツインペダルでないと不可能なフレーズもあり、「本当かよ?っ笑」と自分は未だに疑っている(笑)。
ちなみに、アメリカでTERRORIZERとフェス共演した際はバリバリ2バスで叩いていた(笑)。
しかし、そんな事を抜きにしてもこのアルバムでピートが叩き出しているブラストビートは本当に素晴らしい。
生音を鳴らしきって叩く気合いの入った突進感は正にブラストビートのあるべき姿。
そんな彼と共演して、ドラミングを真近で観れた事は自分の人生の誇りである。
もちろん、バッチリ写真とサインも頂いた(ただのファン 笑)。
8.SKINLESS 「From Sacrifice to Survival」
大丈夫、重々承知している。
これはSKINLESSの中では"駄作"の部類に入るという事は(苦笑)。
だが、リリース当時に賛否両論を巻き起こしながらもSKINLESSの名を一気にメタルシーンに広めたアルバムであることは間違いないし、ヘヴィさと極悪さは減退したものの、良く練られた曲構成とリフのキャッチーさはかなりのレベル。
その変化に貢献しているのはORIGINでの活動でも知られるジョン・ロングストレス。
彼のバリエーション豊かなブラストビートの数々は彩りがあり、今までのSKINLESSには無かったテクニカルな要素を楽曲に与えていると思う。
ジョンのドラムは、、、まあ個人的には「軽っ!!」と思ってしまう事もあるが(失礼 笑)もう兎にも角にも速い、速過ぎる。
瞬間最高速度がBPM300を超えるなど当たり前。鳴り止まない超高速バスドラムの連打にも目を(耳を)見張る。
ヤケクソなブラストビートとは違うタイプのドラミングだが、テクニカル系ブラスターの先駆け的存在なジョンのドラミングも必聴。
9.Disgorge[US] 「Consume the Forsaken」
CAブルデス界帝王の3rdアルバム。
とりあえず、ひたすらブラスト、畳みかけるブラスト、次の曲もブラスト、最後までブラスト(笑)。
もはや「ブラスト叩いてないと死んじゃうの?」とも思ってしまうくらいにブラストビートが鳴り止まない。
ブラストビートってどうしてもテンポが速いが故に叩き方が軽くなりやすいのだが、Disgorgeのリッキーは全く違う。
2005年にドラムセット真横でそのドラミングを観させてもらったのだが、「こいつ、完全にイカれてる、、」と真剣に思ってしまった(苦笑)。
身体を前のめりにして、鬼のような表情で手首が消えて見える程のスピードでブラストビートを叩く様は、人間とは思えない化物のようだった事を未だに覚えている。
正に"一芸を極める"とはこの事で、恐らく他ジャンルのプレイは得意でないようなプレイヤーに思えるが、それでもここまでブラストビートという"技"を極められたというのは凄い。
しかし流石にもう、このアルバムを通して全部聴くのは拷問に近い(苦笑)。
それだけ本当に"地獄"という存在を表現出来ている作品というか、そこまでの領域に達っしているエクストリーム極まりない作品であると思う。
もしも、「YU-TO、100万出すからこのアルバムの曲を全曲完コピしてレコーディングしてくれ!」という仕事が来ても多分断る(笑)。
キツ過ぎる、流石に(笑)。
10.TOTAL RUSAK 「Exploding the Cranial」
インドネシアのブルデスといえばJASADが有名だが、個人的にはこのTOTAL RUSAK。
もうギターはほとんどノイズに近い音色で何を弾いてるのかすら分からない(笑)。
ドラムは"カンっ!"というスナッピーを抜いた浅胴スネアが鳴り響くインドネシアンブルデス特有のサウンドで、"スココココココっ!"と常軌を逸したテンポのブラストビートが全編に渡って鳴り響く。
訳のわからないノイジーなサウンドながらも、時たま入る小刻みでリズミカルなブラストにはハッとさせられるし、とても斬新なアプローチでもあると思う
どこかラテン的な香りのするリズムでのブラストビートは昨今では中々お耳に掛かれないアプローチで、「ちょっと真似してみようかな、、」という考えが過ぎってしまった(笑)。
こちらも全曲通して聴くのが辛い作品ではあるが、リズムアプローチが面白いので案外ドラマーは聴いていて楽しい作品なのではないかと。
11.DEHUMANIZED 「Prophecies Foretold」
NYDMの隠れたヒーロー。いや、ブルデス界隈からすれば問答無用のNYDM帝王。
グルーヴィーなミドルパートが多めであるが、軽いスネアの音色で叩き出される表打ちブラストが気持ち良く、勢いのある疾走感を感じられてカッコ良い。
"ドロっ"とした雰囲気ではない乾いたスポーティーな雰囲気はいかにもNYのデスメタルらしく、どちらかというと聴きやすい部類に入るであろうサウンドだ。
ドラマーは、一時期SKINLESS にも在籍した事もあるジョージ・トレス。
ハードコアを彷彿とさせる重いビート感が特徴的なドラマーで、分かりやすいド直球でシンプルなアプローチにはとても好感が持てる。
ブラストビートに疾走感を出すのって、実は曲構成によるところが大きく、全編ブラストビートな楽曲だと逆に疾走感が損なわれてしまうのだが、DEHUMANIZEDはその対比の出し方が上手く、聴いていて飽きない。
この手のサウンドの初心者の方にも安心してお勧めできる1作。
12.CINERARY 「Rituals of Desecration」
DISGORGE[US]とBRODEQUINのメンバー等によるプロジェクトバンド。
ドラマーはDISGORGEのリッキー。
ここでも鬼のようなドラムを披露しているが、DISGORGEの時と比べたら案外シンプルというか、割と"ビート"っぽいドラミングを披露していて、実はこっちのリッキーのドラムの方が自分は好み。
音楽自体も自分はDISGORGEよりもCINERARYの方が好きで、以前やっていたINFECTED MALIGNITYでも結構影響を受けていたりした。
DISGORGEに比べたらこっちの方がリフや曲構成が分かりやすく、洗練された雰囲気があるような気がする。
ここでも変わらず表打ちブラストしか叩かない一芸を極めたリッキーだが、このスネアがデカ過ぎる音質も相まって歯止めの効かない重戦車っぷりは更に加速。
この漢気のあるブラストビートは全エクストリームドラマー必聴だと思いますね。
13.LUST OF DECAY 「INFESTING THE EXHUMED」
国内ではあまり名前は聞くことがないバンドであるが、アメリカ出身ブルデスバンドの1stアルバム。
ドラマーのジョーダン・ヴァレラは人呼んで"ブルデス界の手数王"。
とにかくアホみたいに手数が多く、ブラスト⇆フィルの終わることの無い永遠のループは聴いていて呆れかえる程(笑)。
しかし決してバカっぽいアプローチに終始する事なく、時たまかますハイハットの開閉を駆使したトリッキーなプレイや、耳に残るコンビネーションフィル、ベルを駆使したテクニカルなビートには感心させられる。
「ブルデス界でドラムが凄いアルバムって何?」と聞かれたら、割とこのアルバムの名を挙げるくらい、ドラムプレイが際立った作品だ。
ドラムは軽い音色で、決してヘヴィではないが、ここら辺の要素もまたアングラなブルデス感が色濃く出ていて、なかなか乙である。
14.GORGASM 「MASTICATE TO DOMINATE」
ブルデス界隈では割と有名なバンド。
とにかく目まぐるしい。目にも止まらぬ速さとは正にこの事。
拍を取らせる事を拒否するが如き展開の多さで、超速な上に変拍子多用、グルーヴなど皆無なその傍若無人っぷりは正に"BRUTAL"。
演奏はこの手のバンドの中ではタイトな方で、かなりガッチリしている。
これの1つ前の作品で叩いていたのは確かデレク・ホフマンで、このアルバムで叩いているドラマーの名前は忘れてしまったが、初めてこのアルバムを聴いた当初から「凄いな、、」と目を付けていたドラマーだった。
別段テクニカルというわけでも無いのだが、巧みにストップ&ゴーを繰り返しつつ様々な種類のブラストを駆使して縦横無尽に曲中を駆け回るその叩きっぷりは只者では無い事が一聴しただけで分かる。
デスメタルドラマーは必聴。
15.DEPRECATED 「Deriding his Creation」
ポーランドのDECAPITATEDと名前が被るが(笑)、こちらはアメリカのカルフォルニア出身のブルデスバンド。
実はこのアルバム、今でこそ配信で聴けるようになっているが、結構レアな1枚で自分は原盤は持っておらず、知り合いから焼いてもらったCDRをずっと聴いていた。
スピードはそこまででも無いのだが、GORGASMに負けず劣らずこちらも展開が目まぐるしい。
この"そこそこのBPMでスピード感を出すブラスト"の感じは、やはり同郷のDEEDS OF FLESHを彷彿とさせ、当時"CADM"と呼ばれていたブルデスのドラミングスタイルそのもの。
昨今ではこういうスタイルのドラムって中々無いような気がする。
ただただテンポが速いだけでは無い、こういうスタイルのブラストビートも独特な疾走感があって自分は好きだ。
16.DISAVOWED 「PERCEPTIVE DECEPTION」
オランダのブルデスバンド。
界隈では名盤と称される1枚で、実は2006年に来日経験もある。
超が付くほどストレートなブルデスサウンドで、裏打ちと表打ちを交互に行き来して構築されるブラストのアプローチはブルデスドラミングのお手本と言うべきプレイ。
とにかく1曲を通して、、いやアルバム全編を通してずっとブラストを叩き続け、細身な身体を前のめりにして手首だけを使う硬い動きでブラストを叩く当時のドラマー、Robbeを映像で観た時は「腱鞘炎にならんのかな?」と思ったものだ(笑)。
この作品はブルデスドラマー時代、フレーズを構築する上でかなり参考にしていて、自分がレコーディングした当時の作品には結構な割合でDISAVOWEDから丸パクリしたフレーズが散りばめられている(笑)。
王道なフレージングが多いが、その分意外なほど聴きやすかったりもするので、割とブルデス初心者の方にもおすすめ。
17.VILE 「DEPOPULATE」
ブルデス界隈の中でも割と"クリーン"と言うか,洗練されたブルータリティーを追求しているのがVILEだ。
ブルータルながらもギターリフが割とメロディアスで、ドロドロした雰囲気というよりは流れるような流麗さがあり、曲の流れが非常にスムーズ。
バンド名は恐らくCANNIBAL CORPSEのアルバムタイトルが由来だと思うのだが、どちらかというとVADERのような、ヨーロッパのデスメタルに近い雰囲気があるように思う。
ドラムは主に裏打ちブラストを使った疾走系だが、フィルを巧みに利用して繰り出す展開の付け方が上手い。
そこまで速くないブラストを堅実に叩くドラマーという印象で、時折変拍子も絡めるアプローチは知性をも感じさせる。
18.CRYPTOPSY 「AND THEN YOU`LL BE」
CRYPTOPSYといえば「NONE SO VILE」が名盤と称されるが、個人的にはこのアルバムがベスト。
もう速いとかそういう次元でなく、ただ"カオス"。
ドラマーは言わずと知れた超絶ドラマー世界代表、フロ・モーニエ。
独特のフォームから繰り出される高速表打ちブラストは彼の代名詞だが、ブラストだけが彼のドラミングの魅力では無い。
幅広い音楽に造詣が深いフロのドラミングは実にカラフルで、「そう来るか!」と思わせてくれるプレイのオンパレード。
フュージョン的なハイハットの入れ方やラテンを彷彿とさせるリズムアプローチはいつ聴いても感心させられるし、そこに絡むブラストビートの疾走感をより一層際立たせている。
そしてよく聴いてみると、実はグルーヴィーなプレイも上手い。
単に手数足数が多いだけではない"引き"を心得たドラミングで、無敵の超絶ドラマーっぷりを遺憾無く発揮。
いやはや、流石です。
19.324 「ACROSS THE BLACK WINGS」
ここら辺でいくつか国内のブラストビート名盤を挙げてみたいと思う。
「今までライブを観た中で一番凄い国内ブラスターは誰か?」と聞かれたら、即答で「324の坂田さん」と答える。
とにかく生音がデカい。スネアロールを絡めつつとてつもない勢いで突っ走りまくるブラストビートは、最初観た時空いた口が塞がらなかった。
その感覚が一番忠実に味わえるのがこの「ACROSS THE BLACK WINGS」で、目の前に迫ってくるような生々しいドラムサウンドが凄まじい。
ブラストだけでは無く、鬼のような2バス連打も1級品で、トリガーとは無縁の生音1発録音的なプレイは"本気"っぷりの格が違う。
破茶滅茶なスピードプレイに聴こえても実はうねるようなグルーヴと音楽的なフレーズセンスを兼ね備えたドラミングで、個人的には"完璧"とも言えるくらいに完成されたエクストリームドラミングだと思っている。
素晴らしい。
20.FORCE 「FORCE」
HELLCHILDやMULTIPLEXのメンバーらによるプロジェクトバンド。
重々しい雰囲気漂うグラインドコアで、1曲1曲が短い曲ばかりだが、不思議と洗練された雰囲気がある。
ギターリフがリズミックでミドルパートも多用し、リフ自体もかなりキャッチーな為、単調さを一切感じさせない。
夏目氏の繰り出すブラストビートは実にタイトで、「この人、絶対に他ジャンル叩かせても上手いな。」という事が容易に分かるドラム。
少し跳ねたように叩く2ビートと、しっかりと"16分ウラ"を感じさせてくれる裏打ちブラスト、音の長さをしっかりと操るようなアプローチがとてつもなくカッコ良い。
作品自体が廃盤で、もちろん配信なども無いのが残念、、、。そして1度は生で観てみたかったものである。
21.MORTALIZED 「ABSOLUTE MORTALITY#1」
京都のグラインドコアバンド。
とにかくもうドラムが異常で、とんでもない手数のオンパレード。
ジャズ的なアプローチも数多く見受けられ、細かいスネアのゴーストノートには知性すら感じるほど。
そして、よく聴いてもらえれば分かるのだが、全てワンバスでのプレイ。ブラストビートもこのテンポを全てワンバスで演っている。
数回生で観させてもらった事があるのだが、終始ドラムに目が釘付け。
目にも止まらぬ速さで叩いてるのにも関わらず、グルーヴを全く失わない本物の超絶プレイは未だかつて観たことの無いようなプレイだった。
この手のバンドの中では数少ない「また観たい!」と強烈に思えるバンドの1つだ。
ドラマーの池田さん、お元気にされてるかな?。
22.FACT 「Never Turn Out the Light to Keep Myself」
ここ日本におけるブラストビートの市民権獲得を決定的なものにしたのがFACTの存在なのでは無いだろうか?。
彼らの存在感が一気に増したのはこの次のアルバムである「FACT」である事は確かだが、"ブラストビート"という観点から言うと、このアルバムが名盤であると個人的には思う。
高速ブラストにポップパンク的な歌メロが乗るという斬新な曲調は、初めて聴いた当初かなりの衝撃を受けた。
硬いタイトなドラムサウンドも当時の国内バンドでは珍しく、「こんなバンドが日本に、、、!」と驚きを感じるくらいのクオリティで、その後の活躍には「まあ、そりゃそこまで行くよな」とあまり驚かなかったような記憶がある。
メタルに興味のない層にもブラストビートの魅力を存分に伝えられる可能性を持った1枚。
23.DYING FETUS 「Destroy The Opposition」
ここまで、数々のブラストビートの名盤&名手達を紹介してきたが、結局のところ誰のブラストビートが1番が好きなのかと言えばケヴィン・タリーのブラストビートがやはり世界で1番好きだ。
「ブラストビートはグルーヴしない」というセリフは、お願いだからケヴィンのこのアルバムでのプレイを聴いてから言って欲しい。
この躍動感に溢れたブラストビートは、自然に身体が動いてしまうくらいのグルーヴの心地良さ。
単なるデスメタルドラマーでは絶対的に思い付かないであろう、ギターリフのカッコ良さを底上げするフレーズセンスも唯一無二。
どんな超絶プレイヤーでも、ましてや機械になど絶対に叩けない、ケヴィン印の超絶ドラミング。
24.MISERY INDEX 「OVERTHROW」
ケヴィンがDYING FETUS脱退後に他メンバー達と始めたバンドで、ケヴィンはもう在籍していないが、バンド自体は未だに健在。
DYING FETUSと比べたらスピーディーなプレイが中心だが、それでも彼独自のグルーヴィーなドラミングが遺憾無く発揮されている。
ブラストビートというのは非人間的であるが故に、ドラムという楽器の本来の役割から逸脱してしまうことが多いが、ケヴィンはあくまでも"ドラム"として機能した上でブラストビートをしっかりと叩けるプレイヤー。
高速フィルも単に乱打するだけでなく、ギターリフに呼応するようなフレージングになっていて、彼の音楽力の高さは相当なものである事が分かる。
ケヴィンがバンドに復活を果たした2004年リリースの「Dissent」でも素晴らしいプレイを披露していたが、このアルバムもその「Dissent」も配信でのリリースは無し。
こんな素晴らしいプレイが、この時代において無かった事にされてるような気がして非常に遺憾なのだが、聴いたことのない方々はYouTubeなどで探して是非とも聴いてみて欲しい。
必ずぶったまげるだろう。
25.SOILS OF FATE 「Crime Syndicate」
こちらはスウェーデン出身のニュースクールデスメタルバンド(死語 笑)の2ndアルバム。
この作品、実はケヴィンがドラムを叩いている。
まるで犬が吠えてるようなヴォーカルへの悪評はリリース当時からあったが、ケヴィンの軽快なグルーヴのブラストはここでも健在で、そんなヴォーカルへの不満など吹っ飛んでしまう。
DYING FETUS時代よりも更にグルーヴパートとブラストパートの対比をハッキリと付けていて、機械的で単調になりがちなこの手のスタイルの楽曲に、生命の息吹を吹き込んでいるとすら思える"良い仕事"っぷり。
このSOILS OF FATE、前作はものすごく機械的で無機質なドラムで、「悪くは無いけど何かつまらない」みたいな印象のバンドだった気がする。
しかし、このアルバムではガラッと雰囲気が変わり、アルバムジャケットにも反映されているような、ストリート的極悪感が加って、それがそのままバンドの個性となった。
そこにはやはり、ケヴィンの叩き出す躍動感あふれるストンピーなドラミングが大いに貢献しているように思う。
"ドラムが変わればバンドは変わる"
それを体現できるのが、ケヴィン・タリーという"私的最強ブラスター"なのである。
あとがき
YU-TOのおすすめする"超絶ブラストビートが聴ける25選"、いかがだっただろうか?。
かなりマニアックな作品も多かったと思うが、この25枚は自分が"ブラストビートとは何ぞや?"という事を学んだ作品である。
凄まじいスピードながらも唯の技の域に留まらず、音楽表現としてブラストビートを消化している作品を厳選して選んだつもりだ。
ドラマーにとって叩く事自体が酷であるブラストビートだが、その分だけのロマンがこのマニアックなドラムビートにある事も確かだ。
時に音楽から逸脱してしまい、曲芸的な扱いをされてしまうブラストビートだが、見方を変えればそれを"音楽のリズム"として消化できているプレイヤーはそれだけの実力とセンスを兼ね備えているということ。
そして、実はブラストビートは打ち込みで再現しようとすると1番安っぽく、「これ機械だな。」と素人でも分かってしまいやすいビートなのだ。
8ビートや16ビートは打ち込みでも人間味のあるアクセントやニュアンスを付けることが容易なのだが、それをブラストビートでやろうとするとかなり難がある。
そして、実際に録った音を解析してみると、クリック(メトロノーム)に対して正確じゃない方がカッコ良く聴こえるという発見をした事も過去にあり、実はブラストビートは1番人間味が出るビートであるのかもしれない。
機械的で無機質な非人間的なビートに思えて、実は人間が叩かないとカッコ良さが出せないビートであるブラストビート。
この事実こそが、ブラストビートのロマンそのものなのかもしれない。
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