発掘した短歌

小説の他に、というより小説より先に現代詩というものに手を出していたのですが、どうも私にはその二つ、つまり散文的なものが向いているようです。
短歌にも憧れがあり高校の時に少し書いておりましたが、音数の決まった韻文というのは難しいものであまり手応えを感じません。いや、正しくは、自分で納得がいかないのではなく、他者からの評価が詩や小説ほど良くないように思われる、ということです。
しかし、当時の短歌を発掘してみるとこのまま捨ておくのも勿体ないような気がしてきましたので、いくつかここで供養しておきたいと思います。


街角でふと足を止めふりかえる路上を滑る望郷のうた

雨は振る君の涙はそのままにただひとりでに雨は降る降る

水たまり私の影は映さずにただ空は白く水面ゆがます

流れゆく君の涙は星屑を孕んで落ちる春の夕暮れ

胸の奥ひとりしまったあの夏は跳ねる水面と磯の香りか

金色(こんじき)のただよう旋律抱きしめて少女はうたう彼の涙を

自らのその重さにも耐えかねて桜の葉より落ちる朝露

夕焼けを背負って歩くその道にあの娘(こ)の姿今はもうなし

彼の人が行ったであろうこの道で恋馳せながらひとつためいき


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?