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小説家だけど中学時代に作った絵本を公開します

「文豪の未発表原稿が発見された」というニュースが定期的に新聞やテレビを賑わせる。僕も小説家の端くれとしていつ文豪にアサインされるとも知れぬ身だが、死後にこうした原稿がマスメディアの餌にされるのもしゃくなので、生きている間に積極的に公開することにしている。

ということで今回は中学2年生のときに作った絵本を公開しよう。先日福島の実家に帰省した際、本棚の裏から発掘されたものである。多分探せば似たようなものがもっと出てくる。

『りんごくんのだいぼうけん』

担任教師のハンコが押されている。どうやら中二病をこじらせてノートに書いた小説ではなく、学校の課題で作ったものらしい。文房具屋で売っている画用紙絵本ノートに直接カラーペンで書かれている。うまいことすれば将来20万ドルくらいの値がつきそうだ。いえぃ。

自己評価欄に「A+」と既存の枠をはみ出したプラスを追加し、感想に「名作だ。」とだけ書くという社会をナメた態度をとっているが、これは当時の僕が「学校の授業というのはナメてかからないといけない」という中学生特有のメンタリティを抱えていたことによる。もし当時の自分にアドバイスができるとすれば、「面白いのでガンガンやれ」である。

さっそく中身を見てみよう。生意気にも表紙はハードカバー。僕は商業作家として小説を7冊世に出したが、まだハードカバーは1冊もない。「ハードカバーが似合うハードボイルドな小説家になったら出してもらおう」と思っているが、いまだに半熟温玉作家である。

いきなり地図。絵本なのに冒頭で世界観の説明を始めるあたり、すでに設定厨の気質が伺える。ここからいったいどんな冒険が繰り広げられるのか……と思って次のページをめくると、

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