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長文が読めない問題と文字スクロール動画

最近自分の父親に現場猫を見せることにハマっている。

マンガってある程度形式に慣れておかないと読めないので、父親には初めに読む順番を教えてから見せている。一般的なマンガだとコマで区切られていることも多いから場面の切り替えとか時間の経過とかもそこで汲み取ることができるんだけど、現場猫の場合は区切られていない同一画面上に複数の時系列がある時が多いので、結構マンガに慣れてないと読むのは大変だと思う。

ただ、うちの父親はまさしく現場猫のような現場で働いているので、わかると「あるあるだ〜!」と笑ってくれる。わからないと「?」って顔をするので横から説明をする。そうすると大体理解してくれる。
例えばこの投稿。漫画を読み慣れてる人ならすぐ読めるけど、読んでない人にとっては縦型の絵巻物のようなものだと思う。なので、こちらが状況説明とかしないと読めなかったし、慣れてないが故に順番もわからず、順番もわからないと行間読めなくなりおもしろさがわからなくなるので、読めないのもわかる。

んで、その作業を繰り返していくうちに、「これって文字スクロール動画と同じ構造では……?」と思った。
特にそれを思ったのがオモコロのこのマンガを読ませた時。

私の父はネタの要点が全くわかっておらず(おそらく自分も経験したのに!)、漫画を読んだ後に「父親がいない子が初めて父を見たのかあ」と言っていた。で、まさか自分(うちの父)が文章と絵に乖離がある理解をしているとは気がついていないので、漫画を間違ったまま解釈してしみじみまでしている。
この文章は
◯ 父親の「いないいないバァ」
× 父親のいない いないバァ
二つのやり方で文章を区切ることが一応できて、うちの父親は下の×の方で理解していた。正確に言うと「いないバァ」という言葉はおそらくないんだけど、それも理解できないからなんとなく放置したか自分の脳内でもうひとつの「いない」を補完していると思う。

このことがあって、おそらく読解ができるのって一部の人間で、読めない人が結構多いんだと思った。しかも、脳内で毎回推敲を行うのは結構重労働(だと思っている)でつまらないので、読むこと自体を放棄するか適当に理解したつもりになっているのではないかとも。私が仕事で勉強を教えていても3割くらいは長文が読めないので、決して少なくない人数の人がそうだと思う。たぶんこの記事を読んでくださっているのそのごく一部の「読めて推敲できる層」なのだけど、私たちが読むことから得られる刺激や知的快楽を全然得られない「読めない人たち」は、単純に娯楽の選択肢が狭まってしまう。

でも、そういう文章が読めない人たちの知的欲求を満たすのが文字スクロール動画なのではないかと思った。わたしは文字スクロール動画はなかなり嫌悪しているのでリンクは貼らないのだけど、陰謀論関係に多い画面に文字を流すこういう動画↓(サムネ作ったw)

文字スクロール動画は文字の区切る位置は音声で教えてくれるから楽でわかりやすいし、文字が画面いっぱいに並んでいるうえ次々に流れていくので読んだ感じがして知的欲求も満たされやすい。理解しないうちに進んでいくからなんかめちゃめちゃ知った気にもなるし、実際に読んでないのに読んだ気になる。何が残ったか? 疑問は残ったか? と聞かれても、たぶん思考を誘導されているのでうまく答えられなかったり疑問も残らないと思う。

文字を読めない人はいろんな種類があると思う。文字そのものが読めなかったり、行間を読めなかったり、文字から場面を想像できなかったり、推敲する訓練をしないで大人になったり、目が悪くなったり、寝たきりだったり。そういう人たちの知的欲求を満たすのが文字スクロール動画なんだと思った。

一方、文字が読める勢は動画はかったるいと思う。自分のペースで情報や知識を吸収できるし、文字で読むなら3秒のところが動画だと1分以上かかるとかザラにあるから。文字だと全体を俯瞰して見られるのが動画だと場面区切りになってわかりにくくなる。そもそも文字さえあれば脳内で場面を再生することができるので、文字が読める勢にとっては文字だけでいい。でも、きっとそれは文字を読めない勢には理解してもらえないと思う。

むかし、「漫画はバカの読むもの」と言っていた人たちは、もしかしたら漫画が読めなかった人たちもいたのではないだろうか? マンガには絵という介助があることで甘えに見られていたかもしれないけど、そもそも読めないからマウントをとっていたのかもしれない。そういう人たちも映画や舞台芸術は好きだったりするし。アニメは読むけどマンガは読まないのも、もしかしたらそういう事情もあるかもしれない。あとは漫画の形式って独特なので、それに慣れないから読みづらいのもあると思う。

文字が読めるのがいい、行間が読めないのはかわいそうっていう話ではなく、このあたりの思考のクセや特徴をお互い把握していかないと全体が歩み寄ったり摺り合わせしていくのって結構難しいなと思う。平行線で近づくこともなければ交差することもない。でも、無理に交差しないほうが平和なこともある。うまい拮抗点や打開策を見つけられれば社会や人間関係が前進するきっかけにもなるんだろうけど、それがわかってリーダーシップ取れると今後の世の中で強いだろうなあと思った。

※サムネはおっぱいが出てると見られやすいことからおっぱいのイラストを選んだだけで、特に文章とは関係ありません。

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