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Duolingoのグロースモデルを分析:どのようにしてDAUを450%増加させたのか(翻訳)

この記事はMindvalleyのChief Growth OfficerのMarisha Lakhianiによる『Breaking Down Duolingo's Growth Model: How they Achieved 450% User Growth』の翻訳記事です。

本文

この分析では、言語学習アプリのDuolingoが、4年間でデイリーアクティブユーザー (DAU) の成長を450%達成した方法を詳しく見ていきます。

2018年半ば、同社はDAUの成長が鈍化しているという課題に直面しました。これは、迅速な収益成長を期待している投資家にとって懸念事項でした。

同社は「リーキーバケット(水漏れするバケツ)」の問題に直面し、新しいユーザーの獲得よりもリテンションを優先するようになりました。

フェーズ1:データとモデルに使用

最初、チームは新規ユーザーの獲得が既に自然に行われており、それを急激に増やす手段が明確にないため、リテンションの向上に注力しました。

Duolingoがすでに実装しているゲームのような要素(ホーム画面での進行状況、継続日数、実績システムなど)の成功を見て、ゲーム化がリテンションの向上に役立つのではないかとチームは考えました。

また、トップのデジタルゲームがDuolingoよりも高いリテンション率を持っていることに注目し、ゲーム化がより大きな影響をもたらす可能性があることを示唆しました。


初め、DuolingoはA/Bテストをサポートするためだけにデータを収集していましたが、それを洞察を得るために使うことは考えていませんでした。このデータを使って、ノーススターメトリクス(NSM)を特定するためのより洗練されたモデルを作成することを考えました。

彼らはZynga¹ の週次リテンションメトリクスを使用して、エンゲージメントレベルに基づいてユーザーをセグメント化し、モデルを作成しました。その後、このモデルを日次ビューに変更し、さらにいくつかのメトリクスを追加しました。このモデルは一連の流れになっており、新規ユーザー、現行ユーザー、再活動ユーザー、復活ユーザーという4つの主要なカテゴリーが、DAUに合算されます。

¹ FarmVilleやWords with Friendsなどのソーシャルモバイルゲームで知られるアメリカのゲーム会社

残りの3つのカテゴリーは、デイリーでアクティブでないユーザーを表しており、それぞれが異なる程度の非活動期間を持っています。

これらのカテゴリーからはDAU(日次アクティブユーザー)、WAU(週次アクティブユーザー)、MAU(月次アクティブユーザー)を簡単に計算することができ、時間の経過とともにそれらをモデル化するのが容易です。矢印で示される率を操作することで、時間の経過とともにこれらの率を移動させることの複利効果と累積効果をモデル化することができ、これはプロダクトチームがDAUを成長させるために活用できる手段です。

チームは各率についてシミュレーションを実行し、3年間で1つの率を毎四半期に2%動かし、他のすべての率を一定に保ちました。この分析に基づいて、CURR(Current User Retension Rate=既存ユーザーの継続率)が彼らが求める戦略的なブレークスルーを実現するために動かさなければならない指標であることを認識しました。

彼らは新しくリテンションチームを作成することを決定し、CURRをそのノーススターメトリクス(NSM)として採用しました。これにより、新規ユーザーのリテンションに焦点を当てるのではなく、既存ユーザーのリテンションに焦点を当てるように彼らの考え方が変わり、DAUにはるかに大きな影響を与えました。

フェーズ2:ゲーミフィケーション

#1 ランキングボード
CURRという指標が何年も変わっていないことを発見した後、チームはリテンション向上のためにゲーム化に焦点を当てることを決めました。FarmVille 2でのランキングボードの成功を基に、チームはDuolingoにも同様のシステムを実装することを決定しましたが、言語学習の文脈に合わせて適応させました。

ランキングボードは、指標にすぐにプラスの影響を与えました。全体の学習時間が17%増加し、非常に熱心な学習者の数が3倍になるなどの結果が生まれました。チームは、指標を向上させるための要素としてこの機能を最適化し続け、これはリテンションチームにとって大きなブレークスルーとなりました。

#2 プッシュ通知
リテンションチームは、ユーザーを毎日アプリで活動させることを強く望んでおり、プッシュ通知の効果を調査し始めました。Duolingoは以前から通知がアプリの成長に役立っていることを知っていましたが、その効果は最近停滞していました。しかし、新しく活気を持ったチームと新しいアイディアで、このアプローチを再評価することを決定しました。

リサーチの過程で、チームはGrouponのCEOの過去の失敗を参考にしました。彼は、Eメールやプッシュ通知を過度に送るリスクについて警告していました。Grouponは、1日に送るEメールの量を増やすと指標が大幅に向上しましたが、時間と共にこのアプローチは彼らのチャネルを破壊し、ユーザーが永続的に離脱する結果となりました。

Duolingoは、ユーザーを失うのを防ぐための基本ルール「チャネルを大切にする」を定めました。チームは通知の内容などを工夫することはできましたが、通知の数を増やすには、正当な理由とCEOの許可が必要でした。

#3 連続記録(Streaks)
リテンションチームはDuolingoの特定の機能が継続利用との強い関連があるかを調査し、10日間連続でアプリを使用したユーザーは途中でやめることが少ないことがわかりました。この発見にはバイアスが影響していたものの、連続利用の記録機能(streak機能)の強化に注力するきっかけとなりました。

この機能を強化するための改善のチャンスは意外と多く、最初の大きな成功は「連続記録を守るための通知」でした。この通知は、ユーザーが連続記録を失いそうになった時に警告します。これにより、連続記録機能の最適化が大きな可能性を持つことが明らかになりました。

その後も連続記録機能の改善が続けられ、カレンダー表示、アニメーション、連続記録のフリーズ変更、報酬などが追加されました。これらの最適化により、ユーザーの継続利用が向上し、連続記録はDuolingoの最も効果的なエンゲージメント機能の一つとなりました。ユーザーは自分の連続記録を誇りに思い、その結果モチベーションや継続利用が向上しています。

リテンションチームは、既存の機能からも大きな成果が得られることを示しました。チームは、大きな革新と迅速な最適化の両方の価値を学び、成功のためにはそのバランスが重要であることを認識しました。


結果

4年間で、CURR(既存ユーザーの継続率)を向上させる努力により、21%増加し、毎日のユーザー離脱率は40%以上減少しました。これにより、DAU(デイリーアクティブユーザー)は450%増加しました。7日以上の連続利用を持つDAUの割合は、ほぼ3倍に増加し、より質の高いユーザーベースを持つことを示しています。この成長は、Duolingoの成功したIPO(初回公開)に寄与しました。

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