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特別感謝・業務報奨金として社員全員に一律10万円支給する話

(※2020年4月のnote記事です)

こんなことをnoteに公表するのもどうかとは思うんですが、色々思惑もあり、書いてみようと思います。

木村石鹸では、今回、「特別感謝・業務報奨金」として社員全員に一律10万円を支給することに決めました。

かなり葛藤もあったんですが、支給すべきだと判断しました。

今、社員にはさまざまな面で大きな負担をかけてる状況です。リモート対応できる社員はごく僅かで、殆どの社員は出勤を余儀なくされてます。なんとかこの状況でも献身的に働いてくれてる社員に報いたい、応援したいと思ってます。

10万円、凄い、金持ち! コロナで儲かってんのか。と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、背景的なものや、なぜ10万円なのかも説明したいと思います。

石鹸メーカーだから、手洗いや消毒需要で特需、ウハウハなのかと思われそうですが、全然そうじゃないのです。まずはその説明から。

木村石鹸はコロナ特需でウハウハなのか?

新型コロナの影響は、終息の兆しも見えず、あらゆる業界に影響を及ぼしてます。僕らも例外ではありません。

木村石鹸と社名に石鹸がついてるから、この手洗いや除菌ニーズの高まりで、特需なんじゃないかと思われたりするのですが、実情は違います。

僕らは消毒液や薬用ハンドソープなどを作ってません。また、多目的型の除菌スプレーとか、次亜塩素酸水とか、あの手の除菌剤も作ってません。法律の縛りや設備、環境の制約もあり、作りたくてもそう簡単に作れる状況でもないんです。

なので、「コロナど真ん中」での特需はほとんどありません。

需要はあっても資材がない、モノがつくれない

ただ、OEMでやらせてもらってる各種家庭用洗剤などでは、「除菌」効果が謳えてるものは、何でも軒並み計画数を上回る注文がきてて、これは有難い状況ではあります。(多分、皆さんの衛生に対しての意識が高まってるんだと思います)

しかし、困ったことに、資材が手に入らなくなってきてます。スプレーなどに使うあの上の部分ですね、トリガーとかポンプとか。ああいうものが全然手に入らなくなりました。容器類も軒並み、手に入りにくくなってきてます。詰め替え用のパウチは、まだ大丈夫そうということを数日前まで聞いてたのですが、パウチも昨日聞くと、いつ手に入るか分からない、という状況だといことです。

営業は色んなメーカーや商社に連絡しまくって、なんとか調達できないか対応に追われてますが、なかなか厳しそうで、すでに欠品が出来てたり、また、予定数に対して供給制限をかけたりということを与儀なくされてます。せっかく需要はあるのに、モノが用意できない...  これはなかなか辛いです。

別の資材で間に合わせるのはなかなか難しい

商品の展開先などでは、商品の仕様が厳密に決まってるところが多く、別の似た容器が手に入ったからといって、その容器に簡単に変えたりすることはなかなか難しかったりもします。そもそも内容物と容器やポンプ、トリガーは相性があるので、必ず相性や安定性のテストが必要になり、容器変えるというのも、これはこれでかなり大変な仕事なのです。

満を持して発売開始した12/JU-NIという、木村石鹸が手掛ける初ヘアケア分野のブランドも、お陰様でかなり好評ではあるのですが、容器類がすべて不足していて、現状発売分が完売してしまうと、次にいつ発売できるか分からないというような状況です。

(12/JU-NIは、今、絶賛発売中... ただ、資材ないので売切れたら次はいつ販売できるか不明)

売上20%を占める中国市場のダメージ

国内だけでなく、木村石鹸は、売上の20%が中国で展開される家庭用洗剤類なんですが、これも年明け以降、売上が0になりました。商品を販売してもらってる会社自体がほぼ休業状態だったので仕方ないんですが。

中国側で販売を担ってる会社の方は、3月から会社は再開してるようで、この4月からはようやく注文が戻ってきてますが、元の水準に戻るにはかなり掛かりそうな気もしてますし、あまり期待はできないかなというのが正直なところです。

いずれにしても、需要が戻ってきても、今度は、その商品をつくるための資材がない、原料がない、という状況ではモノは作れません。

先行きも見えないし、かなり不安一杯です。

大きな投資をした三重工場はこの1月から稼働
固定費の増加

会社的には、この1月から新しい三重の工場の稼働を開始したばかりです。

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かなりの投資をして工場起ち上げて、いざ、やろうという時に、出鼻をくじかれました。でも、当然、固定費はものすごく上がってます。工場はもちろん、売上を伸ばしていくこと前提に建ててますから。かなり苦しいです。なにもかも二重化になりますし、人も増えてますしね。

ちなみに、工場見学もサービスとして展開していこうと考えた工場にしてて今年の夏ぐらいに受け入れできるように準備しようと思ってたんですが、その計画も崩れさり、今ところそっちのことを考える余裕もないので、しばらくはペンディングにしました。

メインバンクからの緊急融資、手元資金は確保

なんとか乗り切らないといけないので、メインバンクから急遽短期の融資は受けました。ただ、もう融資枠的にはかなり限界まで使ってます。毎月の返済だけでもけっこうな額で、これもなかなか痺れます。

ひとまず直近での資金ショートだけは防げるかとは思いますが、会社としては出来るかぎり出費は抑えて、この乗り切りたいわけです。

政府の助成金・補助金類もチェックはしてますが、今のうちの状況では、とりあえずメインバンクからの融資のほうが早いし、良さそうということで判断しました。

毎年4月に出してる成果配分が無し

毎年、木村石鹸では4月に「成果配分」を出してます。これは年2回の賞与とは別で、いちおう業績と鑑みて利益が出てたら還元するというものでした。

今期も前半(木村石鹸は6月決算なので7~12月が前期)は調子が良かったので、本来ならこの4月には成果配分を皆に出してたはずです。

しかし、年明け以降の急激な環境変化、社会情勢、経営環境を鑑みて、今回、成果配分は一旦見送りにさせてもらうことにしました。成果配分を出すようになってからは、出さなかったのは初めてです。

僕が木村石鹸に来た2013年段階でも、成果配分は、当たり前のように4月に出す習慣になってました。正直言うと、2013年もその前年も、会社の業績は全然良くありません。というか、2007年以降、売上はキープしてるものの営業利益率はずっと右肩下がり。2013年は営業利益0%、つまり利益なしという状況でした。それでも成果配分は出してたんです。

なのに、今回、成果配分を見送りにしました。社員の中には、当たり前にもらえるものだと考えてる人もいたと思います。それがないというのは、ショックかもしれません。あてにしてた人もいたでしょう。

ただ、やはり今の状況では厳しいのです。成果配分は総額ではかなりの額になります。この見通しが不透明な今の状況では支給は難しいなと判断しました。

リモートワークと公共交通機関を利用しない勤務形態へ移行

4月7日、緊急事態宣言が出るということで、そのタイミングから、本社でもリモートワーク可能な職種については、リモートワークへの切り替え、リモートワーク不可能な職種については、公共交通機関を使わない出勤形態への切り替えを社内にアナウンスしました。

製造など、リモートワークは不可能ですし、かといって出勤しないことには、モノも作れません。

基本、プライベートなどでの不要不急の外出を抑えれば、もっとも感染リスクが高いのは、出勤時の公共交通機関の利用だと考え、電車通勤してる人には、自動車通勤、あるいは自転車通勤に切り替えてもらうことにしました。

自動車が必要な人には社用車を貸し出し、ガソリン代、交通費、駐車場代などは当然、すべて会社持ちにしてます。

幸いにも、ほとんどの人が自動車の運転が可能だったり、なんとか自転車で通勤できる距離だったりで、対応することができました。

政府の言う7割、8割の自粛は到底できてない状況ですが、製造メーカーで、それやったら、ほぼ売上は0になります。製造はリモートでは無理です。大手なら、交代制とかでシフト組んだりもできるかもしれませんが、そもそもいつも人数ギリギリでやってる僕らみたいな零細企業には、そんな余裕もありません。

慣れない仕事環境の中も頑張ってくれてる社員たち

リモートワーク対応可能職種は、リモートワークに切り替えてはいますが、僕らはそんなにITリテラシーが高い人たちばかりでもありません。家で仕事するのも慣れてないことで大変なことばかりです。

急遽、自動車通勤になった社員たちにも慣れないことをやらせていて負担を与えてしまってます。

もちろんこういう状況下でも、皆、懸命に仕事に取り組んでくれています。新型コロナのリスクや不安などもありながら、なんとか状況を打開しようと、業務にあたってくれています。何もかも経験したことのないレベルで、日々色んな問題が起きて対処に追われてますが、現場は、本当にものすごく柔軟に、自分たちで考え対応しています。

まだまだ様々な問題は次から次へと押し寄せてくるだろうと覚悟してます。そんな中、それに立ち向かい、創意工夫で乗り越えていけるのは、それは社員が向き合ってくれてこそ成し遂げられることです。

この騒動がひと段落ついて、平成を取り戻した際にも、やはり社員がいてこそ会社をもう一度、立て直すことができるだろうと思うのです。

なんとかその社員の働きや頑張りに報いたいなと思いました。

例年のような成果配分ではないけれど、「特別感謝・業務報奨金」という形で、一律10万円を支給することにしたわけです。

会社的には成果配分の総額よりは、今回の「特別感謝・業務報奨金」の方が少なくはなります。各人10万円という額は、毎年の成果配分から考えると、少ないけれど、各社員個人にとっても最低限納得いってもらえる額なのではないかなと思って決めました。

今、会社が社員を応援するということで出来る最大限のことで、且つ、リスクが取れる範囲を悩んで悩んでこの額に決めました。

企業としては出来る限りの出費は抑えたい。でも、そうやって給与や賞与が絞られて、不安を抱えた人が増えれば、消費も冷え込みます。最終的には、僕ら企業にも跳ね返ってくる話です。

無駄な出費は抑えないといけないですが、社員にお金を出すことは、多分、決して無駄な出費ではないと思ってます。かなり悩んで、この決定が良いのか悪いのか、正直、決断下した後でも不安です。

木村石鹸でもいつ感染者が出るかもわかりません。操業停止を余儀なくされる場面が出てくるかもしれません。先のリスクを挙げていくと、いくらでも挙げられるので、手元に資金は多くあるに越したことはない。

百戦錬磨の経営者なら、こういう意思決定を「甘い」と言うかもしれません。結果はどうなるかは分からないけど、僕は社員を応援したいと思うし、この社員なら、この事態にも前向きに取り組んで、乗り越えてくれると信じてます。

下心もあるので、こういう記事を書いてます

noteに書いたのは、もちろん下心もあります。このような取り組みはメディアも取り上げてくれやすいのではとも思ったり。

資材や原料がなく、売るものがないとしたら、今出来ることは、知名度を上げたり、ブランド力を向上させることぐらいです。コロナを生き残れれば、その知名度やブランド力が、資産になってくれるかもしれません。

また、これからは人の採用がもっとも問題になるだろうと思ってます。僕らも製造に従事する社員はなかなか応募しても人はきません。

「木村石鹸で働いてみたいな」と思う人が一人でも増えれば、それは今後、会社としての競争力になるかもしれません。

というような下心もあって、こんな記事を書いてます。

この取り組みや内容に共感頂けたらシェア頂けるととても嬉しいです!

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木村石鹸の商品はこちらでご購入頂けます。在庫なくなると、しばらく発売できない、という商品もありますが、今ある商品は頑張って売っていきたいと思ってます。良ければ買って下さい!

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(※noteの埋め込み機能が使えなかったんでURLのリンクだけ)




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