見出し画像

中小零細メーカーの生きる道

大手メーカーが流通PBを請けている

今までPBの製造って小企業とか、ブランドのない会社とかが請け負ってるケースが多かったのではないかと思いますが、ここ最近は知名度もある超大手が積極的にPBの開発・製造を請けるケースが増えてるようです。製造元の会社名も信頼の証として積極的に表示したりしてて、それはもはやPBというよりダブルネームみたいな感じでしょうか。

セブンイレブンでは、サッポロのPBビールがありますし、マヨネーズは味の素です。 山崎製パンもコンビニのPBを積極的に請けています。マルハニチロの缶詰や、ロッテのスイーツもPBがあります。

基本的には大手でも業界二位以下のところが多いようですが、山崎製パンのようにその分野の一位のところがPBを請けてるケースもあったり。これはどういうことでしょう。

どこも単独企業名で十分強いブランドもあり、保持してる商品群、ブランド群は、どこかの流通には必ず乗っかってます。コンビニにせよ、スーパーやドラッグストアにせよ、彼らの商品はきちんと棚を取ってます。僕らみたいな中小零歳メーカーにとっては羨ましい限りというか、僕らがそういう店舗の棚を取るのはほんとに大変なことなんです。取れても売れなきゃすぐ変えられてしまいますし。

セブンイレブンはどんどんPBが占める割合が増えてます。セブンがやれば当然追随する他コンビニも対追従します。(ほんとはナンバーワンがやることを模倣して二番手以下がやるってのは、あんまりよろしくないんじゃないかという気もしないではないけど)
PBといえば、ついこないだまではイオンの独壇場みたいな感じでしたが、最近は大手流通はどこもかしこもPBです。ドラッグストアや、ホームセンター、GMSやSSMもPBを増やしてて、PBを今後重要な戦略課題にしてます。

大手流通はこれからもPBをどんどん増やしていくはずで、売上に占めるPBの割合が増えていくでしょう。
今までなら、PB=安くてそこそこ品質、でもよかったのでしょうが、今やPBは品質や機能、味、内容においてもNB品に対抗できるものになってきていて、それによりPB自体のファン作り、ブランドづくりが積極的に行われているという感じになってきてます。
(AmazonがPB専門のストアを作るぐらいだ。PBが一種の、というかその名の通り「ブランド」化してる)

こうなってくると、その商品は、その分野の専門の大手じゃないとなかなか作れないわけです。そこそこのものなら、どこでもと言ったら失礼ですが、まぁ作れたのかもしれません。しかし、特色あるものを打ち出していこうとすると、やはり、大手が持ってるノウハウや生産能力が必要だったりするわけです。

というような理由で、超大手メーカーがPBの製造の請負に参入してきています。

でも、そもそも自社ブランドがある同じカテゴリーで、PBを請けたらメーカーは、自分で自分の首を絞めることになりかねません。にも拘わらず、なぜ超大手がわざわざPBを請けるのか? 請なきゃいいのにと思うのわけですが、結局、ここには超巨大化して、販売の接点を確保してる大手流通の強さというやつでしょうか。

流通大手の中でPBが売上に占める割合が高くなればなるほど、NB品の売場自体が小さくなっていくでしょうし、そうなればいくらNB品といえど厳しくなっていきます。なので、大手であろうと二番手、三番手はPBでの売上確保を模索するのでしょう。山崎製パンなんかは、逆に二位、三位の強豪がPBで流通に食い込んでくるのを防ぐ狙いもあって、PBを請けているのではないでしょうか。

色々な狙いがあり、大手が流通大手のPBを製造するケースは増えているわけですが、もうひとつこの市場の根本的な問題というか、メーカーと流通の関係において、非常に大きい問題があり、それが大手であろうと中小であろうと、メーカーがPBを請けることを選択させているのではないかと思います。

それは、返品の問題と、商品のライフサイクルが短くなってるという問題です。


メーカーを悩ます返品問題

1つ大きい問題は「返品」です。

大手流通側が、店頭に置いてみたけど、あんまり売れなかったと。この場合、流通側は売れ残った商品をメーカーに返品してくることがあります。
これは契約次第というところもありますが、消費財だと、返品条件ありで契約を結ぶケースの方が多いのではないでしょうか。
しかも、大抵の場合、送料はメーカー持ちです。もちろん間には問屋が入ってることが多いわけですが、ただ、問屋も返品あり条件で契約になるケースが多く、メーカーには返品あり条件での契約を要求してきます。なので、流通側からは問屋へ、問屋からメーカーへと、売れ残った商品は否応なく返品されてくるのです。

これはメーカーには辛いです。なにせ、最近の流通大手は、多店舗展開、ドミナント戦略をとってて店舗数が多いわけです。それぞれの店舗に仮に20個商品を納めても、1000店舗あれば、2万個必要になります。コンビニやドラッグストアがどれだけの数あるかごご存じですか?
コンビニなら2014年1月で、5万店弱、ドラッグストアでも2012年で1.7万店舗。ここにGSMやSSMも加わり、多店舗チェーン展開してるところは数多くあります。

もちろんこれだけの数あるからこそ、一気にものすごい数の商品が売れる可能性があるわけで、超大手になればなるほど、数を一気に捌ける力のある大手流通への商品展開が中心になってきます。そりゃサッポロや山崎製パンが一つの商品で年間売上2000万円でした、なんてことでは話にならないわけで、あれだけの母体を支えていくには億単位の売上をつくっていかないと厳しいでしょう。

一気に何千、何万店舗に商品を入れても、売れなければそれらの商品は返ってくる。扱う店舗が多ければ多いほど、配荷した商品数が多ければ多いほど、返品のリスクは大きくなるというのが現在の流通の状況です。

仮に、全国何万店舗を経営するコンビニエンスストアに配荷が決まったとしても、「返品あり」の条件では、多分、中小零細企業では、なかなかこれに喜んでいられる状況ではないと思います。売れるかどうかなんて、実際、わからないわけで、店舗での見せ方や、置かれる場所、消費者の意識、競合の状況、諸々の外的要因... 良い商品でも全く売れないかもしれない。

特に、季節性のある商品などは、そのシーズンが終わると、どかんと返品が返ってくる。返品率も含めて、商品価格を設定できればいいですが、多分、そこまで価格に転嫁できるような余裕はなかったりします。そう、返品というのは、メーカーにとってはかなり恐ろしいわけです。

だから、大手は流通側に販売奨励金やらなんやら色々な手当をつけたりきて、店頭での商品の積極的な扱いを促しますし、実際に店を回って、商品の陳列や魅せ方を店側に提案したり、改善を手伝ったりして、少しでも自社商品が売れるようにと色々な施策を打つのです。

TVCM使ったりするのも、もちろんメインは直接消費者に認知させるってことが目的ではありますが、流通対策の側面があることもまた一つの真理だと思います。

TVCMやってる商品とやってない商品で同じようなものがあれば、多少の機能や性能差があろうが、流通側はまず間違いなくTVCMやってる方の扱いを大きくします。売れる可能性が少しでも高いもので店のスペースを効率的に使いたいからです。消費者の認知度が少しでも高いもので面を取っておきたいという思惑にあるわけです。

まぁ最近は差別化のために、むしろあまり知られてないブランドを店自体がチョイスして、その目利き力を差別化要素にしてる小売も増えてきてたりもしますが、ただ、そういったこだわり店では、超大手の経営が成り立つような量や数が捌けないという問題もあります。

圧倒的な数を売るには、コンビニ、ドラッグストア、GMSなど、有る程度画一的な店作りや、定番品をきちんと配置してる店に、商品を流通させる必要があります。これは流通側も同じ事をが言えます。ニッチやこだわりのある人だけを相手にしてると、規模に制約がかかるので、どうしても最初からフォロワーをターゲットにしないと成り立たないのです。

自社ブランドの商品というのは、常に返品のリスクと格闘しています。

これがPBの場合は、基本流通側の買取になります。もちろん、その分、とてつもなく安値で供給する必要はあありますが、基本、作ったものはすべて買い取ってくれます。これはメーカーには非常に助かります。

工場のラインつくって、大量に商品を生産したものの、全く売れずに返品の山、なんてことになれば、会社にはとてつもないダメージです。PBはそのリスクはありません。薄利多売にはなりますが、確実に売上は上がります。

もちろん流通が買い取ってくれても、先で消費者が買ってくれなければ、そのPB品は長くは続かないでしょうから、結果的にメーカーも儲からない、という構図はあります。しかし、それでもPBのほうが、NBよりはリスクは低いわけです。

プロダクト寿命はどんどん短くなっている

もうひとつの大きな問題。それは、商品寿命がどんどん短くなってきているということです。
たとえば、コンビニに置かれてる商品。なんと平均すると一年で七割が入れ替わると言われてます。

1960年代まではある商品が、利益を生み出してくれる期間はだいたい20年ぐらいと言われてたわけです。今はこれが2年ぐらいまで短くなってしまっていると言われています。

こうなってくると、メーカーは研究に研究を重ねて新しい商品を開発しても、その開発費を賄えないうちに商品寿命が来てしまうことも出てきてしまいます。

真似されるスピードも早くなってきてるので、まったく新しい概念やコンセプトのヒット商品が出ても、たちまち市場にはよく似たそれよりも安い商品が出回っていくのです。

メーカーは長期的な売上を生み出してくれるブランドを作りたいと考えてますが、生み出した商品でブランドに育っていくものはごく僅かです。消費者の目移りは激しく、特にフォロワー層の消費者は価格にシビアで、ブランドチェンジをあまり厭わない、みたいな調査結果もありました。

というような背景で考えると、PBで流通と共にというか、商品開発していける方が圧倒的にリスクは低いということになります。流通側にはメーカーとは比べものにならないぐらいの消費者の生のデータも日々更新され蓄積されていくわけで、それらを商品開発や改良にも活かしていけます。

小さいメーカーが取り得る選択肢の話

こういう背景のなかで、小さいメーカーが取り得る選択肢というのは、大きくは次の2つのいずれかなんじゃないかと思います。(特に消費財系のメーカーの場合)

1つは、技術力、製造品質や能力など、開発・製造よりの力を高めて、積極的にPBを請けていく。大手企業の裏方として生きていくという道。

もう1つは、自社でブランドをつくり、ネット通販などを通じて、直接消費者に自社製造の商品を販売していくという道です。

リスクが高く、難しいのは後者ですが、前者も価格競争は激しいし、海外の安い工場との戦いもあるわけで簡単というわけでもありません。大手のPBを請ければ、それはそれで安定するかもしれませんが、一方、生殺与奪の権利を特定の会社に握られてしまうというのは、ビジネス的には苦しいところも多いと思います。

後者は、運も左右するでしょうが、基本的には、時間がかかります。 一発大ヒットみたいなものが出れば別ですが、企業として築きたいのは、お客さんとの長期的な関係性だと思うので、それをビジネスとして成立するレベルの規模にまで持っていくというのは、ただお金をかければできるというものでもないでしょう。

根気も必要だし、すぐに結果が出ない中での様々な取り組みが求められます。
そしてある程度の規模に到達しないと、非常に効率は悪い。人手はかかるけど、なかなか成果には繋がらない。ただし、しっかりとしたロイヤリティが築け、関係ができると、それはある種の資産となる。特に、直接消費者との関係を持つことができると、リスクの分散にもなる。次のビジネスや商品を展開していく上でも、その資産を活かすことができる。

多くの中小・零細メーカーは、この2つの選択肢の挟間で揺れ動いてるんではないかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?