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採用の中長期計画、立ててますか?

ども、nakashimayugoです!

この記事は「採用の中長期計画、立ててますか?」という話をします。割と当たり前だけど、意外にできていない話なのかなと思います。

簡単に自己紹介とタイトル選定の背景を。私はフリーで採用や組織づくりなどをお手伝いしています。(お手伝いしている中にVCがあったりもするため)壁打ちも含めればこの一年で50社ぐらいの企業に関わらせていただいたかと思います。そんな中本記事の内容がボトルネックになっている企業が多いなと思い、アウトプットすることにしました。

この記事は「採用Advent Calendar 2021」の4日目です!クリスマスまでみんなでアウトプットしましょう!

◯そもそも"採用のPDCA"を回せているか

どんな仕事でもPDCAを回すことは大前提でしょう。しかし、採用においてはPDCAが回っている企業は非常に少ないように思えます。

採用活動には「この施策を実施すれば必ず採用が成功する」という”銀の弾”、”特効薬”はありません。そんなものがあればすぐに皆が真似して陳腐化します。そのためPDCAを愚直に回し行うこと・行わないことをきちんと決め実行することが一番の近道であり、ひとつひとつの施策の善し悪しよりもPDCAをきちんと回せているかが採用活動の成果を分けるといっても過言ではないと思います。

そして、PDCAのプロセスの基本パーツは下図のように計画立案と振り返りです。

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計画がないままに動いたり、動いたは良いが振り返りがなかったりすれば、採用活動にメリハリがつきません。結果、採用活動に論理性も戦略性もなくなってしまいます。たとえば以下のような状態です。

●計画がないので「なんとなく興味がある施策だから」「流行っているから」といった思いつきで取り組みが決まる
●振り返りがないので採用活動の問題について議論できず、「スカウト数を増やす」「媒体を変える」といった取り組みに終始する。業務がルーティン化する。
●採用のミーティングの議題はいつもバラバラ。アクションや候補者情報の共有で終わり、目標やそのギャップの話がない。

このような状態では業務効率は悪く成果がでないことは目に見えています。

これらのことから、計画をたて振り返るプロセスは採用活動においてなくてはなりません。この計画の"期間"の話を本題として書こうと思います。

◯中長期の計画の必要性

まず実態として、向こう1ヶ月程度の期間でしか採用計画をたてていない企業が多いように思えます。(あくまで主観ですが)半年や年間の計画をたてたとしても振り返りや更新がなされず形骸化しているように思えます。

これに対し、本記事では目安として半年以上の期間で採用計画をたてるべきだと主張します。ただし1ヶ月単位などの短期の計画ももちろん必要であり、下図のように長い期間から短い期間に落とすべきという話をします。

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補足をすると、中長期の計画自体が大事だというよりも、本来計画に必要な期間を考えたら、今より長いものが必要ではないか?という話です。

なぜ中長期の計画が必要かと言えば理由は2つの観点から考えられます。

(1) 一つのポジションにおける採用成功の観点
(2) 採用体制・採用力の強化の観点

これらについて見ていきます。

(1) 一つのポジションにおける採用成功の観点

当たり前のことですが、採用を成功させるためには、採用のリードタイムより長い採用期限が設定されている必要があります。たとえば「エンジニアリングマネージャーを、なんとか3ヶ月で採用してほしい!」というリクエストを考えれば、採用のリードタイムは少なくとも6ヶ月程度はかかるのに対し、3ヶ月という採用期限は短すぎます。

このような場合、無理なリクエストにきちんと必要なリードタイムなど説明し期限を延ばしてもらったり、(後述しますが)今後無理なリクエストが来ないようにリクエストが発生する構造から改善したりしなければなりません。

しかし「採用期限」をそのまま「採用計画の期間」として設定してしまい、矛盾が生じていたまま計画をたてているケースが非常に多いように思えます。下図のイメージです。

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このような場合、「とりあえず必要なスカウト数を算出するが、土台無理な話なので守らない」と計画が形骸化するか、目標達成から逆算した「何をすべきか?」ではなく「何ができるか?」と目標達成に向いていない計画になります。これでは目標管理ではなくリソース管理をしているに過ぎません。

それらの矛盾した計画の中では、取り組みの選定もバイアスがかかりやすくなります。"短期で成果が出ること"が取り組みや利用サービスの条件となりやすく、反対に中長期で成果が見込める、魅力の言語化や採用広報、タレントプールの運用、社内制度の改変などについては「大事だとわかっているが、今の計画では、実施する理由をうまく説明できない」となってしまいいつまでも取り組まれません。

ただし、"即効性"と"成功の可能性"は別物です。すぐに成果が見込めるスカウトや求人掲載をしたとしてもそれが成功するかはわかりません。むしろ"即効性"が高い施策ほどレッドオーシャンなので、"即効性"ばかり見ていては不利な戦いに突っ込むことになります。

まとめると、「採用期限」をそのまま「採用計画の期間」として設定してしまうと、そもそも計画が矛盾していることが多く、結果的に「今できることをとにかく頑張るしかない」「即効性のある施策を選ぶしかない」と、結局効率の悪い採用活動になります。

実際にこのような取り組みで1年、2年と採用ができていないケースは多く見られ、そのような長い期間をかけてやっと「(事業部や経営側)無茶なリクエストを出したら効率が悪くなった」「(採用側)リクエストを鵜呑みにしたらうまくいかないことがわかった」と気づくことが多いです。

このように、「採用期限」をそのまま「採用計画の期間」とせず、採用のリードタイム起点で「今何ができるかではなく、採用成功のために何をしなければならないか?」と採用計画を考えれば、必然的に採用計画は半年以上の中長期のものとなります。

(2) 採用体制・採用力の強化の観点

ここまでは、一つのポジションにおける採用成功の観点から考えてきました。もう一つの観点である採用体制・採用力の強化の観点から考えてみます。

採用活動は基本的に採用のリクエストによって決まることがほとんどでしょう。たとえば「エンジニアリングマネージャーを採用したい。制約事項として、期限は半年、費用は500万円、使えるリソースはチームのAさん」といった形です。

ただしこのような目標管理の方法では、"一ポジションごとに発生するプロジェクトベース"の業務になります。言い換えれば個別のポジションの採用に最適化した計画・行動・評価となりますので、複数のポジションに汎用的に影響を与える採用体制の構築や採用担当者の育成・成長、採用ブランディングや事業部の巻き込みといった取り組みが、採用担当者の目標管理に乗ってきません。下図のようなイメージです。

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実際にそれらの業務が業務定義されず評価対象にもならず「なぜやるのか」「やったら評価されるのか」といったことが曖昧なまま片手間で、やる気のある人が自主的に活動するといったことも多いです。

しかし、定常的に採用ポジションが開くような成長企業では、 採用体制・採用力の強化は非常に重要です。

このことから、採用のリクエストを起点にした目標管理ではなく、それらを包含した形で状態目標をたてるなど採用体制・採用力の強化の観点から目標管理しなければなりません。たとえば「3年かけて優秀な人を自己応募で50人採れる体制・企業にするために何をすべきか?」といった目線・内容で目標を考えないといけないわけです。仕組みとしてはOKRを取り入れOで議論したり、「THE TEAM」の言葉を借りると意義目標を設定したりするとよいでしょう。

この理由からも、既存の採用ポジションとは関係なく、将来的な時間軸で計画をたてなければなりません。

◯中長期の計画をたてるために

(1) 一つのポジションにおける採用成功の観点(2) 採用体制・採用力の強化の観点、と中長期の計画をたてる目的について書きましたが、これらは意識をかえるだけでは改善しませんので、大事なポイントを見ていきます。

(1) について、なぜ「できるだけ早く採用してほしい」「3ヶ月で採用して」といった無茶な依頼がくるのかと考えれば、これは前提となる計画が短いか、計画されていないことが原因です。(もちろん突発的な欠員補充もありますが)

そもそも、採用のリクエストがどこからくるかと考えれば、企業活動の上位の計画です。計画の名前や意味、包含関係などは企業によりけりですが、一般的には下図のような関係になっていることが多いはずです。

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仮に「3ヶ月で採用して」というリクエストが来る場合には、その前提になっている人員計画が3ヶ月先までしか見えていないか、もしくは人員計画が形骸化していて計画を無視してリクエストされているということです。

このような状態の場合、きちんと上位の計画に入り込んでいって「あなた達もちゃんと計画してリクエストしないなら、こっちだって採用しないよ」と主張することが重要です。そもそも「急いでとってほしい」というのは事業部側の計画力が不足しているので、「なんでそんな急な依頼が来るのか説明してくれ」と説明を求めるべきです。また文句ばかり言うのではなく、事業部の半期や年間の戦略会議などに出席し「あなた達の考える向こう半年の戦略の中で、新しい人材は必要になるか?」と採用側から事前にリマインドをしてあげることも有効です。

これらの取り組みは自分自身の業務や評価を守るだけでなく、会社のためにもなります。

(2) については、これもやはり前提となる計画に入っていき、1年先や③年先に採用に求められるリクエストを言語化していかなければなりません。上位の計画が機能していなかったり、論理的に紐付いていなければ、下流工程にある採用活動がうまくいくことはありませんので、(1)と同様に整合性をあわせていく必要があります。たとえば以下のようなドキュメントで関係者と話し合ってみてください。


◯採用は「下請け」ではない

いろいろ書きましたが、中長期の計画がたてられないということは、これまで述べたように無理なリクエストに反発できていなかったり、上位の計画に入って行けていなかったりと「下請け業務」の構造になっているかもしれません。

中長期の計画というのはあくまで表出した形に過ぎませんが、採用担当者も現場も経営者も、採用は「下請け」ではないという意識で採用に向き合えば、その会社は強いんじゃないでしょうか。

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