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【2023秋M3振り返り・ライナーノーツ】

みなさんこんにちは、ゆうがおです。夏ぶりですね。

さて、さる10月29日に2023年度の秋M3が開催・終了いたしました。ゆうがおとしては3回目の参加、” hexatropica.”としてははじめての参加です。なんとお誕生日席までいただいて、さまざまな「あおい」ブースに囲まれた素敵な会でした。
なんと新譜は完売し(!?!?)在庫はマイナスに突入(!?!?!?!?)、作品としても過去最高ながら数字でも過去最高という恐ろしい会になりました。今でもなんとも信じられません。来てくださった方、お手に取ってくださった方、誠にありがとうございました!

 今回は制作としては”hexatropica.”としての参加だけでした。なかなか忙しいスケジュールの中、イラストの制作をしていただいたそらみけさん、最後まで付き合ってくださったサークルメンバーやゲストのFl00tさん、Sunajiroさんにはただただ感謝です。

さて、ではアルバムの話をして参りましょう。


「第六回帰線」

さる三月、Wanderer of the Horizonsを発表し、それと同時にアオイロホウキボシはその活動を終了しました。「WoH」はアオイロにおけるはじまりとおわりを象徴する、一つの到達点で、その物語としての、そしてアルバムとしての完成度はあまりにも高く、続編を作りたいというのに頭を悩ませるほどでした。

アオイロの解散が決定し、WoHの次回作の構想も、他の作品の構想も固まらないままの2023年、「かくりよ」の制作開始あたりから構想を練り始めたのが”hexatropica.”の設立と、その一作目としての「アルゴノーツ(仮)」でした。
「かくりよ」の制作時点ではすでに(少なくとも個人名義での)設立は決定しており、クレジットにはすでに”hexatropica.”の名前が存在します。

hexatropica. (ヘキサトロピカ)はもちろん造語ですが、元は日本語であって「第六回帰線」です。この単語は夢うつつのうちに浮かんだ単語であり、忘れることができずに脳に引っかかり続けていた言葉です。つまり、多分特に意味はありません。

そんな言葉を借りて、創作の拠点として、および権利関係を管理する屋号として立ち上げたのが「hexatropica.」でした。ちなみに、ロゴは6をもとに、「日の出」と「瞳」をモチーフとして作成しています。

その後、MoAIさん・tsukiさんが合流という形となり、案を出し合いながら秋の制作を決定しました。そうです、この作品はゆうがおの制作史上はじめて、元となった物語のない、企画先行のアルバム作品なのです。

モチーフは「海中・海上列車」および「青」。ゆうがお、というよりも前名義である「子狐空」時代の制作としての「あおいせかい」の印象を受け継ぎつつ、「らしい」ものを作ろうという方向で、当初は6曲程度のEPとして制作予定でした。

…….6曲で収まるはずがなかったのでした。

「エルゴノーツ」

そうして生まれた、hexatropica.の最初のアルバムがこの作品、「エルゴノーツ / Aergonauts」です。
「聴く絵本」として制作された、とかく青い物語。

はじめはコンセプト楽曲「遠くへ」タイトル予定楽曲「エルゴノーツ」しか存在しない、見切り発車で出発したこの制作は、やがてあおいせかいを渡る一つの旅路を描くものになりました。

ギリシャの古い物語に「アルゴナウタイ」という物語があります。「オデュッセイア」でも言及のある神話で、船に乗った勇者たちが金羊毛を取りに遠く海の向こうまで航海し、様々な災難に苦しみながら帰還するという旅路を描いた作品です。本作ではそのモチーフを受けつつ、「船=海を走る電車」として作られています。

「エルゴ」という接頭辞には幾つかの意味がありますが、このアルバムは「エルゴット・アルカロイド」「エルゴ領域」の二つを大きく見て、とっています。かたや麦角に由来しエルゴリンやエルゴタミンに代表される噂のアルカロイド、かたやギリシャ語の「力」に由来する、事象の地平面の外側にあるブラックホールの領域が一部。ミクロとマクロの世界でそれぞれ意味を持つこの言葉は、この作品の裏にある物語にぴったりです。

「水域を船で渡る」という行為、「麦角アルカロイド」の生理活性、そして「ブラックホール」の存在から、この「どこか遠いあおいせかい」がどのようなものなのか、見当はつくはずです。きっと電車賃は相当に安いのでしょうね。

さあ、それでは、その旅路を楽曲ごとに追っていきましょう。

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1 蒼き水面の下より / From the Blue Waters

まだ、ゆめをみていますか
また、ゆめをみたいですか
そう ねがうのならば、
ともに ゆきましょう。

風がふきすさぶどこかで、遠くから笛の音が聞こえます。迎えるように湧き立つ音の波に、あなたは攫われてしまうでしょう。

ティーザーとして制作した、短いイントロです。トラックとしての役割は明白で、アルバムへの「招待」と、アルバムのメインテーマの紹介をしています。それ以上でもそれ以下でもありません。

ところで、「Blue Waters」について、どこかで見覚えがある人はあるかもしれません。いや、無いかな…….興味がある方は、ぜひ検索してみた上で、WoHの解説記事をお読みいただけますと幸いです。

2 遠くへ / Far Away (Vo.花隈千冬)

遠くへ、遠くへ
遠くへ、どこか遠い場所へ

とてもシンプルなボーカルを繰り返す、なんだか少し懐かしさが香る楽曲です。ゆらりゆらり、ふわりふわりと夢見心地な列車内、「遠くへ」という印象のみが脳裏にこだまします。一種、この楽曲もイントロのようなものです。

かすれたショート・ストリングスが奏でるメロディは、もしかしたらすっかりお馴染みかもしれませんね。このテーマが流れている楽曲に共通しているのは、ある遠い場所が関係しているということ。問答無用で時間を刻むビートと、風に吹かれたら消えてしまうようなはかないボーカルが取り柄の楽曲です。

どこからきて、どこへ行くのかもわからないまま、遠くへ遠くへと運ぶ列車。胎内の音にも似るという列車の安心感が、寝ぼけまなこのあなたを連れていきます。

そうして、エピローグが始まります。

3 エルゴノーツ / Aergonauts

さあ 列車はすすみます
無限のあおを 夢幻のあおを
遠くへとむかう あなたをのせて

Drums, 一部パーカス監修: tsuki

アルバムとタイトルを共有する、いわゆる「冠楽曲」です。水中のこもったエレクトロニカと、疾走感のあるロックと二つのジャンルのパートを行き来しながら旅路を奏でる楽曲です。

この楽曲はエレクトロニカ・ロックの印象が強いですが、この楽曲を作る際に背景にあったのは「合唱曲」、あるいは「アンセム」という考え方でした。サビにて笛が高らかに歌い上げる、今作のメインとなるメロディーは、そのキャッチーさと歌いやすさが売り。フェスにおいてみんなで歌うような、合唱でみんなでらららと歌えるような、そんな楽曲を目指して制作されています。今までよりもダイナミックなコードの動きも合唱やポップスのそれをリスペクトしているでしょう。

裏側でコンスタントに鳴るちょっと駅メロチックなジングルや、数多の過去曲の引用も注目ポイント。楽曲としての思想が近く、「旅の帰路」であった「流るる雲は何想う」(樹海の社、温泉郷)がアルバムのほぼ最後であったのに対して、この曲は三曲目。アルバムの役割がより見えてくるでしょうか。

だんだんと深まっていく海の中を、あなたをのせて列車は走ってゆきます。とはいえ、まだまだ浅海。目の前には色とりどりの生き物が現れるでしょう。

4  置き手紙 / To the Person I Was (by MoAI)

ゆらり、ゆらり
海底は いろにあふれる
くらり、くらり
なつかしさが あなたを呼んでいる

BPM80台の低速な楽曲。キャッチーなリードとゆったりとしたノリが懐かしいグルーヴです。主張しながらも邪魔をしないギター、弾けてまろやかなシンセ・プラック。気づいたら体がノリに乗っていることに気づくでしょう。前の楽曲で溌剌とした頭の中を、ゆるっとクールダウンしてくれるかのような気持ちの良い楽曲です。

イメージとしては、海底は海底でも大陸棚を下る浅海、まだ陽の光が淡く青く煌めいている、そんな場所です。列車から外に出たらお魚を捕まえられそうですね。日中の各駅停車に乗って、ぼーっと外を眺めているようなそんな柔らかなあたたかさ。
なんだかちょっとメルヘンチックな海中散歩、という感じもすてき。MoAIさんのすごいところは、音の選び方がとても丁寧なところだと思います。

そういえば、同日にMoAIさんが自身初となる無料配布EPを公開されていましたね。なんたって無料でお聞きいただけます、こちらもぜひ。

そうして、だんだんと列車は深海へと降りていきます。大陸棚を、傾斜を下り。

5 海の底のワルツ / Left in the Sea

きらり、きらり
あおいひかりが 海の底をてらす
こもれびのように おもいでのように

きらりきらりとアルペジオする柔らかいピアノと、海底を響くような重たいキック、ぼやけるパーカス。海底にゆらめく光の波をイメージしたインターリュードです。
海底を歩くような重たさがありながら、深度はあまり深くない、まだ光の届く浅い場所。

ところで、この曲をふくめて、今回は丸いシンセサイザーの音を多用しています。これらの音は主に二つのシンセサイザーを使って使用しています。
その二つとは、「ROLAND XP-80」と「KORG M1」。ご存知の方も多いのではないでしょうか。そうです、90年代の音楽を作り出した二大シンセサイザーです。
実は、この二つのシンセサイザーはゆうがおにとってもなかなかに縁のあるもので、両方ともかつて母が所持していたシンセサイザーなのです。M1に至っては、ゆうがお初めてピアノを練習した時に使っていたもの。M1の実機は手元になく、VST版ではありますが、一方XP-80は本作でも実機を使用しています。懐かしく温かみのある音色は、今作を彩るにぴったりです。

やがて、降っていく電車は大陸棚から海底谷へ、海溝へと差し掛かって、どんどんとスピードを上げていきます。さあ、深海への降下です。

6 窓を見ていた / Refract a Hindsight (Vo. 花隈千冬 / by tsuki)

いろがながれてゆく
いろがはなれてゆく
ぬけがらになったら そこにしずんでゆく

ストレートなエレクトロニカ。四つ打ちのビートでちかちかと色とりどりの光が目の前で踊るような、トランス・ハウスの香りがするダンス・ミュージック。

この曲はこの形に至るまでにそれなりに意見をぶつけ合っており、「降る」イメージをもたせたく暗いトランス寄りにしたいゆうがおと、車内の蛍光灯の冷たい明るさを孤独にあらわしたいガラージ寄りのtsukiさんが舌戦を繰り広げた(誇張)結果、なんだかすごい楽曲が飛んできました。ヤバい。

ゆらり、ゆらりと夢現の中に、白くぼやける窓に走馬灯のように景色が流れます。蛍光灯は冷たく明るく、窓の外は真っ暗。意識もなんだかぼやけてきて、でも呼吸は別に苦しくない。

全身麻酔を受けたことがあるでしょうか。私はおととし、左肺自然気胸の手術において受けましたが、静脈にするりと冷たさが入ってきた瞬間にぼやりと体が重くなり、手足が制御を離れ重たい肉になっていき、それをすぐに追って意識はすうと冷たいまま重力に引かれるようにずるりと気を失うのです。ちょうど、ベッドに飛び込んでシーツごと夢の中に落ちるようなCMの演出のように。
眠りとは違う、覚醒状態から引き摺り込まれる眠りは、奇妙かつ恐ろしく、そして刺激的な体験でした。

この楽曲にはその印象を強く感じます。ずるずると錘に結びついた体がゆっくり、しかし確実に海を落ちていくように沈んでいく。長いトンネルの中、目の前にはきらきらと幻覚のようなパステルカラーがちらつき、漆黒の中に冷たいまぶしさすら感じる。tsukiさんがあまりにも天才です。

降下は続きます。あなたが自由を失っても、否応がなく。

7 ゆきぐに / Marinesnow (by Fl00t)

トンネルを抜けると、ゆきぐにであった。奇しくもトンネルの直後をモチーフとし、温泉郷と列車のモチーフを同一するこのアルバムにおいてこの曲名を付したのは、さては文豪か。

優しいピアノの音色と静かながらゆったりと鳴り響くパーカスの音、溶けてしまいそうなシンセベル。丁寧に作り上げられた脆く淡いぼやけた像は、はたして海底に着いた列車の旅路と、暗い窓の景色を映すようです。

歌物と歌物の間という、このポジションは、なかなかに難しいお題だったと思います。事実、多忙の中で制作していただいたこの曲はアルバムで最後に完成した楽曲とはなりましたが、それに恥じないすばらしいガラス細工のような美しさがあると思います。Fl00tさん、ありがとう。

そうして夢うつつの間を彷徨ううちに、そこが海底であることに、そこが真白な場所であることに気づくでしょう。

8 前照灯 / Headlights Vo. 花隈千冬 (by MoAI)

誘導灯が淡く照らす くぐもってひびくジョイント音
深層海流に揺られ 少し眠っていたようだ

前照灯とは、列車における前(と後ろ)につける白いランプ。暗い夜などに、少し先の線路を確認できるようにする役割があります。

海底には日光は届かず、人間にとっても未知で神秘の暗い世界です。光合成ができないため藻類が育たず、一見では死の世界のように見えるでしょう。住んでいる生き物も、水圧に対応して不思議、あるいは気味が悪くみえるものばかり。そして、共通して、目が退化しているのです。

全体的には懐かしいシンセ・ポップスの雰囲気に乗せて歌われるこの楽曲。遠くへ、遠くへと強迫的に、半ば逃亡のような“旅路”の昏さを白鍵という明るい音の上に乗せて読み上げると、一際孤独感と工業的な白さを感じますね。

そうして、ゆらゆらと意識は暗がりに溶けて、また瞼は閉じて。

9 眩光 / Glare (by tsuki)

やわらかい砂の底から、
ひとつ 飛び上がってみたとき、
目を焼くような光と青が、あなたを迎え入れる。

ふらっと目を閉じて、揺られる電車に視界がぼやけた時、今自分がどこにいるのか確認することがあるでしょう。そうして深く暗い海の底、トンネルの深みから、突然に眩い光が差し込んだ時、きゅうと瞳孔が閉まるとともに明るい刺激に心が震わされる。

色を失っていって、クラゲのように、死滅回遊のように揺蕩う海の底から、何らかの力で光の元へと引っ張り上げられたとき、やがて暗がりに溶けていた全身に輪郭が戻ってきて、世界が色を取り戻し、自分が随分と長い間息をしていなかったことを知るのです。

tsukiさんによるこの幻想的で印象的な一曲は、これもまた意見を交えながらなんとか作り出したもの。白くモノクロームな海底と、きらきらとした水面。その遷移を感じ取っていただけるでしょうか。

そうして、だんだんと物語は、列車は、終わりに向かって加速してゆき──

10 青を裂く / Tear the Blue (by Sunajiro)

さあ、ゆこう
うみのむこうに
ゆめのむこうに

──眩い光の波の中を、青の中を、果ての世界を、いま、まさに!

そもそも、高校以降の楽曲制作活動において大きなきっかけをいただいたのはすなじろさん(の別名義)の作品でした。やがてひょんなことからご縁があり、狂ったように「夕暮れに染まる街」を聞いて下校した高校二年の秋などは忘れられない記憶で、もはや今の作曲においてすなじろさんの影響は計り知れません。

エルゴノーツの制作に関しても、そらみけさんのイラストとともに大きく影響を受けたのがすなじろさんの作風、そしてアルバム「Hydrocity」でした。なんでこんなにも青いのだろう?なんでこんなにも心地よいのだろうと、大変に衝撃を受けた記憶があります。

そんなことを思いつつ、「お呼びすればよかった……..」とMisskeyでつぶやいたところ、

:mada_tasukaru:

というわけで急遽お願いして制作していただいたのがこの楽曲です。

強く影響を受けた「Hydrocity」と同様に、「せつなく、遠く、青いドラムンベース」をお願いして作曲をしていただきました。列車は海面へと姿をあらわし、その上を疾走します。煌びやかな青が、夜明けの色が、眩しい世界が色とりどりと目の前を流れて、風に髪がはためく。寂しさもちょっとあるけれど、それでもいいと前へ進む。

「ゆうがお」の原点の一つであるアーティストに参列していただけたのは、ただただありがたく、ただただ感謝をするばかりです。

列車はやがて、その終着点へとやってきます。

11 エルゴ・ターミナル / Aergo Terminal

とおくとおく、
なつかしいうたが きこえる
それは こもりうた
ねむる だれかのための こもりうた

この楽曲は過去作品「子守唄 / Requiem」の引用です。
「子守唄」という楽曲は、2009年に五線譜に残した短いピアノのフレーズをもとに、2018年の暮れに公開するにあたって無題の原曲を改題・延長して制作された楽曲です。今回はそのうち当時の原・原曲部分のみを使っています。

厳密には最初の作曲ではないのですが、音楽的なデータ(音の並び)として残されているものとしては最古の作曲です。実に、14年前。

そうして、列車を降りた「長い髪のあなた」は、ハサミを手に、自らの長い髪を、その手で、

12 レイカ / REICA Vo.花隈千冬

ストーリーのその先、
エンディングのその向こう。
レイカ、無限の青へ、旅は続いていく。

Drums: tsuki

いつか、誰かが夢を見た、何処か遠くで描かれた物語。
まだ青く、青いままに、熟れることなくぶら下がったままの、そんな淡い想像の中にあった物語。
きっと、誰しも一つや二つ、描いたことはあるでしょう。ノートの端っこに、パソコンの隅っこのフォルダに、あるいはどこか別の場所に。

だからこの歌は、そんなすべてにさよならを告げる、独善的な鎮魂歌です。

そうして、旅は続きます。
それでも、旅は続きます。

13 ソライロ / Solairo -Beyond the Blue Waters- Vo. 花隈千冬、小春立花

ソライロの願い、この海を超え
また、君に届けるよ

Piano:Yuhgao

tsukiさんによる拙作「ソライロ」のアレンジ。
そもそも「ソライロ」の作曲自体は2013-2014年という圧倒的な古株であり、現時点で覚えている(残っている)作曲の中でも最初の十曲のひとつです。当時「あおいせかい」の原点となる創作のイメージソングとして制作された、そのはじまりにかなり近い楽曲であり、またその後の様々な「空」系楽曲の原曲の立ち位置にもあります。
このアレンジ自体も、アオイロでの「ソライロ」公開後、一ヶ月と経たずにtsukiさんが制作されていて、日の目を見ておりませんでしたので、それを収録にあたり調整したものとなります。

このバージョンでは最後の転調と、それから最後の歌詞一行が省かれているようです。どんな意図があるのでしょうね。

原曲がストレートなエレクトロニカだったのに対し、このアレンジでは「日が傾いていく、少しセピアに褪せたさま」(tsukiさん談)をイメージしているようです。ゆえに、このアルバムの最後に収録することにいたしました。

時の海を超えて、どれだけすり減ってもその一部だけでも届くのであれば、彼は納得してくれるでしょうか。
それとも、いろんな物語を放棄し、裏切る結末となったことを責めるでしょうか。
いずれにせよ、もう二度と届くことはなく。


さて、以上が「エルゴノーツ」のあらましでした。
過去最高に「我」を出した作品であり、過去最高に苦しんで向き合った作品でしたが、なんとか形になりました。
今一度、お手伝いいただいたすべての方々に感謝を。

hexatropica.の滑り出しとして、最初のアルバムとしては満足の出来であったと思います。お陰様で反響も大変多くいただき、手に取っていただけた方も大変多く。どうか皆様にも、素敵な旅路が訪れますように。

物理製品版やDL版をお聞きいただいている皆様は、おそらくブックレットの文章もお読みいただいているでしょうが、今回はそれについてはあまり触れずに解説という形になりました。
もとから「意味のない」物語ですから、自由に文字列から物語を想像していただけたらと思います。

次にM3に出るのはいつだかわかりませんが、でもたぶん、なんだかんだ春に出るんじゃないでしょうか。

きっと次は、雲をも突き抜けるような、高い、高い作品をお見せできると思います。

では、冬もお元気で。

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