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毎日超短話393「ソレ」 #毎週ショートショートnote

中学のときは学年1位も取ったことあるんだよ。という話を、誰かに会うたびに「ソレ」は言っている。その話をしすぎて、それを知らない他のソレたちはいないくらい。

高校に入ってからのソレは、まるで中学のころの面影はない。なにしろまだ一度もテストを受けていないのだ。学年1位だったその年の最終テストで見事な失敗をした。それがトラウマになっている。

校長先生のお話です。と、生徒会長がアナウンスする。校長先生の話ほど長いものはないとソレは思いながら、「虹のすべり台」を見ている。

えー、みなさん、我がスベり高等学校は、ご存知の通り、地球に生まれるための最後の学校です。ここから虹のすべり台をすべって、地球のお母さんのお腹の中に入っていきます。決心がついたものは、いつでもすべってください。卒業条件はありません。自分次第です。失敗して戻ってきてもよいです。

先を急いで一度失敗した、ソレ。
それでも生まれたい。
約束した人がいるから。

ソレは泣いている。


(お題【スベり高等学校】)


こちらへの参加です。
たらはさん、ご自愛くださいね。


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