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【原寸大!】ぐりとぐらのパンケーキの会 実践編 Ⅰ

来たる当日。全体の集合時間は11時。

企画者の僕と桜島は、その数時間前の8時半に落ち合った。思えば誰にも指摘されなかったが、ぐりとぐらを忠実に再現するために、赤と青のドレスコードに身を包んだお互いを確認してから竹林へと向かった。

 朝の空気に包まれて露のきらめく竹林から、数日前に伐採しておいた数本の竹材を回収した。これを使って、パンケーキを焼くための蓋を作るのだ。そのため、まず竹材の端に押し当てたナタの背をゴムハンマーで叩いて割っていき、太さ3cm、長さ1mほどの竹ひごを量産した。

 次に、その竹ひごを使って、パンケーキの目標サイズの直径80cmよりもやや大きい直径90cmほどの円を竹ひごで作る。竹はよくしなるので、両端を持って”くの字”になんども曲げていくと、癖がついて円形にできる(最初は竹の熱可塑性を利用してガスバーナーで曲げようとしたが、部品が壊れていたのか思わぬところからも火が出て爆発しそうだったのでパワープレイに切り替えた)。

 竹の重なった部分にドリルで穴を開けて針金で固定する。鉄板に触れる部分なので、ビニール紐はNGだ。ついでに、竹自体も燃えないようにアルミホイルでくるんで、銀の輪っかができたら次の工程に移る。

 続いては、銀の輪っかに竹ひごのアーチを架ける。このとき、アーチの高さが大きすぎると蓋の内部の体積が増えてパンケーキの表面が蒸されにくくなるため、なるべく低いアーチにするのを心がけた。

 1つ目のアーチの両端を先ほど同様針金で固定したら、同じ要領で8本のアーチをかける。さて、最後にアルミホイルで全体を覆おうかというところで気づけばもう10時半。無情に進んだ時間に寝首を掻かれ、いそいそと片づけて友人らと待ち合わせるために駅へと向かった。

とりあえずここまで完成!


 スーパーでの買い出しで大量の粉、卵、牛乳を仕入れたら、会場の設営に取りかかる。今回集まった友人は全部で10人。そして、ミッションはメインのぐりとぐらのパンケーキ作りの他に、サブミッションとしておでん作りと椿油作り(はじめは釧路らと企画して椿の種を集めていたところに、別で同時発生的に伊勢佐木からも椿の種を見つけたから作らないかと提案されて同日開催に至った)が設定されていた。

 ここで指示を求められたとき、行うべき工程が自分の頭の中にしかなさすぎることに愕然とした。企画のサプライズ性を重視したかったために「ぐりとぐらのパンケーキを作る」こと以外はみんなに知らせていなかったのだが、それがいざ作業をはじめるにあたって仇となった。

こういうイラストを共有すればよかったと後悔

 いま思えば、作業の前に全体の流れとやってほしいことを伝える時間を設けて、竈のイメージ図などを共有すればよかったと後悔した(前回の流しそうめんのときの反省が生かされていなかった、、、次こそは!)。

*そしてここからは、同時進行した作業パートごとに活動を追っていきます。

パート①椿部 3,4人
1m四方のテーブルの上で、おでんの具材の大根、こんにゃく、はんぺん、ちくわぶ、ちくわ、厚揚げなどを大量に切ってくれた。そして、おでんの花形・餅巾着作りも、半分に切った油揚げにお餅を入れて乾麺のパスタを縫い針みたいにして留める、とアバウトな説明しかできなかったけれど完璧に作り上げてくれた。

 そして、おでんの具材を切り終えたあとは椿の種の殻を割ってくれたのだが、ここで痛恨のミス!中の薄皮は相当品質にこだわらないかぎり剥かなくていいというのを伝えそびれて激労を強いてしまった。ごめんなさい(結局、椿油の搾取は時間が足りなくて持ち越しになった。せっかく薄皮も剥いてくれた種は、それだけ分けて純度の高い椿油も絞りたい)。

パート②鉄板部金網課兼蓋仕上げ部時々キャッチボール部 1,2人
 前回の記事で説明したパンケーキを焼くための簡易鉄板の第1層を作るために、6つの45cm×35cmの金網を針金で連結してくれた。と、この前に針金をおそらく朝の作業場に忘れてくるという2つ目の痛恨のミス!近くの百均まで自転車を走らせて買いに行ってくれた、、、ありがとう。金網の連結が終わったら、未完成だった竹の骨組みをアルミホイルで覆って蓋を完成させてくれた。

パート③鉄板部アルミプレート課兼生地部兼型部 2,3人
 上記の簡易鉄板の第2層を作るために、6つの45cm×35cmのアルミプレートの四隅をハサミで切って手で平らにならし、さらに金槌で叩いて淵の厚みをできるだけ薄く加工してくれた。そして、アルミプレートをホッチキスで連結させるとき、さきほど入れた切れこみがうまく噛み合ってスムースな乾接合が可能になった。できあがった簡易鉄板は、仕上げにあまったアルミホイルで表面を覆い、端をホッチキスで留めて完成させた。

鈑金加工が徐々に上手くなっているのが見て取れる

 加えて、バケツで生地を作った。生地製作は、第一竈部と椿部の人員も何人か加わっての合同事業となった。割り入れた16個の卵を泡立て器で混ぜていると、卵の体積が大きいためにただかき混ぜるのみではいくらやっても割れない黄身が1個生まれ、室蘭が蠱毒に使える!と冴えたことを言って笑い合った。

 そこに2.4Lの牛乳と、3.2kgのホットケーキミックスを加えてかき混ぜる。200gに個包装された白い粉が16袋も積み上げられて投入されていく現場は、どこかアングラな雰囲気を醸しだしていた。

怪しいなぁ、、、

 また、生地作りと並行してパンケーキを焼くときに生地を囲う型も作ってくれた。牛乳パックをハサミで展開し、生まれた4辺の短冊を半分の太さに切り分ける。こうして1つの牛乳パックから、縦約3cm、横約20cmの短冊が8本できるため、これを2セット作る。

 そのあと、短冊の両端に上下から1.5cmずつ半分まで入れたスリットを噛み合わせて連結させていき、約250(80π)cmまで伸長する(円型のパンケーキを作る今回の企画では円周率が頻繁に登場し、単なる四則計算以外の数学を実生活で役立てられる貴重な機会となった)。伸長した帯の両端も噛み合わせて輪っかを作ったら、全体をアルミホイルで包んで燃えないようにしたら完成である。

画質が荒いが、握っているのが件の型


パート④第一竈部 1,2人
 パンケーキ用の竈作りとして、4つのコンクリブロックを高さが15cmで揃うように、90cm四方にスコップ1本で埋めてくれた(この作業の目的をわかってもらうために、やはりイラストによる共有が必要だったと反省)。竈ができたあとは、パンケーキ調理用の炭火(木炭を使うのではなく、ただの木が燃焼過程の後半に炭火っぽくなった状態)を作るために、木を大量に燃やしてくれた。

パート⑤第二竈部 1人
 おでん用の竈を一手に引き受けてくれた。軽量コンクリブロックを2つ並べた簡易的な竈を作り、そこで火を起こし、大根の下茹でやゆで卵作り、おでんの加熱調理を行ってくれた。茹で卵の殻剥きには、鉄板部金網課兼蓋仕上げ部時々キャッチボール部も動員された。

 こうして、友人らの熱心さと寛容さにより実現した見事な分業体制により、作業はつつがなく進行した。作業中に伊勢佐木が「いい人しかいない」と口を衝く一幕があったが、まさしくその通りで、みんなが明るい雰囲気のなかで作業してくれて「こんな会社があったら最高だな」と思った。

 また、僕は主にパート③で活動していたからその部分だけディテールがやけに細かいけれど、他のパートに参加していたらまたこれだけのドラマが存在していたのだと思うと選択の排他性にやきもきしてしまう。全部を体験することはできないけれど、できうるかぎり縦横無尽に駆け回りたい。

さて、次回!いよいよパンケーキを焼く工程に入る!


サムネイル:伊勢佐木

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