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【原寸大!】ぐりとぐらのパンケーキの会 構想編

 2021年7月31日の昼下がり。東京の喫茶店の窓際の席で、僕と桜島はわくわくするインスタレーションについて話していた。そのとき、絵本の世界のファンタジーをいくつか再現するのはどうかというアイデアが出た。「かいじゅうたちのいるところ」の怪獣たちが使うような大きな家具や、「ぐりとぐら」の巨大なパンケーキなどを一堂に会させる。名づけて「大きな日曜日」。なんて素敵な!

 でも、作品としてコンペに持っていくには食品を扱うことが大きなハードルになる。だからといって、「ぐりとぐら」のパンケーキを削るのはときめきの琴線を断ちきるようで悔しい。まいったね、などと言いながらその日は解散した。

 そのあとも、事あるごとにぐりとぐらのパンケーキの話題は出たものの、実現する機会は作れずにいた。

そして、時はくだって2023年の秋。せっかくのわくわくする企画を、埃を被らせたままにしておくのももったいないと思い、2年越しにようやっと動き出した。

 まず、パンケーキを焼くための大きな炉を用意する必要がある。はじめはガスコンロを隙間なく正方形に並べることを考えたが、ガスボンベの部分にどうしても焼きムラが生じてしまうし、なんか爆発しそうだ。また、ガスコンロをいくつも買えるほど潤沢な予算はないため、原作再現も兼ねて焚き火で行うことにした。

こんな感じの火力がベスト!

 だが、焚き火でやるデメリットは火力調節の難しさである。パンケーキを焼くのに最適な最弱火を作り出すためには、炎の上がらない炭火の状態をキープしなければならない。そして、その最弱火でもパンケーキに熱が入るようにするため、火床から生地までの距離が15〜20cmの低めの竈を組む必要がある。

 次は調理器具の入手である。パンケーキを焼くのに必要なのはフライパンとその蓋。これらの大きさを決めることすなわちパンケーキの大きさを決めることであり、どのくらい大きければぐりとぐらの気分になれるのかを考えることである(この過程でぐりとぐらの公式レシピはカステラであることを知るが、我々はパンケーキと思いこんで育ったためにパンケーキのままで話を進める)。

 イラストから比較するに、直径2mのパンケーキならば完全にぐりとぐらの境地に達せそうだが、どう考えても食べきれない。自分よりも大きな食べ物には浪漫があるが、浪漫にかまけて食べ物を粗末にはできない。

昔懐かし半径×半径×3.14

 とりあえず、半分の直径1mで材料の量を試算してみると、驚くことにホットケーキミックスは5kg、牛乳は約4L、卵は2ダースも必要である。これを知って僕と桜島は笑い転げた。5kgの粉を消費する自分たちが、どうあがいても想像できない。

 ならば、直径80cmはどうかと試算すると、ホットケーキミックスは約3kg、牛乳は2Lとちょっと、卵は1ダースちょいとわかり、これならばいけるんじゃないかと、アバウトな共感によってサイズが決定された。

 さて、ようやく調理器具だが、直径80cm以上のフライパンを購入するには莫大な資金を要する。楽しいイベントとして企画するなら、一人当たりの予算は1,000円程度に抑えたい。そのため、単なる鉄板で代用することを考えるが、1m四方の鉄板を買うとなると最低でも約1万円はかかる。10人に参加してもらったとしても、設備費だけで予算を超えてしまう。

実際にはアルミホイル→アルミプレートで強度アップ!

そこで、100均で売られているバーベキュー用の金網を連結させることで大きな網を作り、その上にバーベキュー用のアルミプレートを連結させて載せることで、簡易的な鉄板を作ることを考えた。90cm四方の簡易鉄板を作るには金網とアルミプレートがそれぞれ6個ずつ必要だが、それでも税込1,320円に抑えられる。

さて、蓋は流しそうめんでもおなじみの竹で作った骨組みを、アルミホイルで覆うことで作ろうと考えた。これなら材料費はアルミホイルの110円だけとプチプライスだ。

↓流しそうめんの会を知らない方は、こちらを読んでくれる嬉しい!


森見登美彦も執心する万能な竹の魅力

 加えて、パンケーキの生地を混ぜるためのボウルも必要だが、いかんせん特大ボウルを買おうものなら樋口一葉が吹き飛んでしまう。なにか策はないかと考えあぐねていると、桜島の口から「バケツは?」とこぼれた。

はじめは、バケツに食品を入れることには少し抵抗があった。僕は金魚を育てるのが趣味なのだが、プラスチック製品の一部には水を汲み置くだけでも有毒な成分が染み出すものがあり、観賞魚の飼育にはその点に配慮した素材の水槽を使わなければならない。そのため、ありきたりなバケツを用いて人体に害がないかを心配したのだ。

 だが、実際にホームセンターに足を運んでみると、食品衛生法に適合した無問題のバケツが売られているのを知った。その上、9.5Lも入るものがワンコインで買える!桜島のファインプレーに、企画を誰かと練り上げていける楽しさをあらためて実感した。なにか問題が生まれても、それは解決する達成感が将来に約束されることだし、糸口が見つからなかったとしても2人で考えれば思い出になるからだ。

参加人数を試算したイラスト。
偶然にも竈の配置が完全一致していた!

 最後に、大きなパンケーキを安く、失敗なくひっくり返す方法を考えなければならない。そこで、パンケーキと同サイズのベニヤ板を2枚使う方法を考えた。

 まず、表面が軽く乾くくらいまで焼き上げたパンケーキの下に1枚目のベニヤ板を差し込み、そのパンケーキの上に2枚目のベニヤ板をあてがって、パンケーキをベニヤ板に挟んだ状態で持ち上げてひっくり返したら、ひっくり返したパンケーキをスライドさせて鉄板に戻す。

 これなら、一畳規格で売っているベニヤ板を1枚買えば、等分するだけで90cm四方のベニヤ板が2枚できて道具が揃うのでよいのでは?と。このときは冴えた考えに自画自賛したものだったが、現実はうまくいかないものなのであった。

 さて、こうして想像ではうまくいっている考えを頭に、百均とホームセンターにて底値で買い集めた材料を手に、当日を迎えた。

次回!!実践編に続く!!


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