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日本の映画

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死してなお、ネタに出来るという愛情:映画『くれなずめ』

先日、学生時代の同期の結婚式があった。 その披露宴で私は、私達は、余興をやった。 この、披露宴の余興というイベント、何かしらの不和や諍いや不満がありながらも、最後はなんだかんだ(自己)満足してしまえるものだ、ということを、これまでの余興5回の経験で心得た。 その懸案事項となるのは、内容どうするのか問題、練習のスタジオ代誰が持つのか問題、お礼が出ないじゃないか問題などの下世話で生々しいもので(私という人間の小ささのせいかもしれない)、そのベクトルは無論、新郎新婦に向かってい

アラサーになった今こそ、ノスタルジーを活力に:映画『劇場版 美少女戦士セーラームーン Eternal〈前編〉』

わたしの夢は?わたしの本当にやりたいことって? そんなことで未だに悩みに悩み抜いている、28歳どっぷりアラサーの唯です。 たかがそんなこと、されどそんなこと。私の周りを見回してみても、自身のキャリアやら今後の人生設計やらの方向性が見出せず、ぶれぶれの人生を送って来てしまった、という人間は実に多い。 かつて、男尊女卑も甚だしい社会で、女性の権利を手にすべく立ち上がった女性達は、高い志と勇敢さを持って、この社会を十歩も百歩も前進させる、すんばらしいことをして下さった。私がこ

父子の姿にむせび泣く ~ポケモンから教わる親子と社会の在り方~

1998年4月16日 この日が一体何の日かお分かりだろうか。 1998年4月16日、私が生まれて初めて、他人事に感情移入して涙を流した日である(たぶん)。分かるわけがない問いを吹っかけてすみません。 この日、当時5歳の私が何で涙したかというと、ポケットモンスター縮めてポケモン、のアニメ第39話「ピカチュウのもり」で、だ。 ポケモンマスターを目指す少年サトシとその相棒ピカチュウ。ある日、大勢のピカチュウが手を取り合って暮らすピカチュウの群れと出逢う。そこで仲間達と生き生

三浦春馬の遺作映画は、説得力に満ちた演技で、私を納得させてくれた。

昨年末に観た『天外者(てんがらもん)』。我らが三浦春馬の遺作映画です。 「東の渋沢栄一、西の五代友厚」と評される、商都大阪の礎を築いた実業家・五代友厚の生涯を描いた伝記作品なのだけれど、恥ずかしながら、私は五代友厚という人物を認知していなかった。これはきっと、私が東の人間だから、ハマっ子だから、ということでご勘弁頂きたい。もしかしたら授業で教わったのかもしれないが、歴史の授業って前半部分にやたらと時間を割きますよね?だから皆、卑弥呼やペリーのことはきちんと覚えているのに、信

期待外れは、期待外れなりのスピーチでいい。のび太にしか紡げない言葉がある。

冠婚葬祭のスピーチは、どんな優れた脚本や感動的な作品にも勝ると言われているそうです。来春、友人の結婚式でのスピーチを頼まれているのですが、ああ、大丈夫かしら。 映画『STAND BY ME ドラえもん2』では、のび太が、あの野比のび太が、自らの結婚式(花嫁はもちろんしずかちゃん!)にて、余りにも感動的なスピーチ披露をやってのけます。のび太のくせに、です。 現在公開中の本作、あらすじは以下の通り。 ある日のび太は、古いくまのぬいぐるみを見つける。それは、優しかったおばあち