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「死ぬほど」かっこよかった話

自称「永遠の初心者系ベーシスト」の僕は、すぐに人をライバル視して、軽音部の活動だけが日々の生きがいだった高校生活とは違い、大学では軽音サークルに入ったものの、巧拙に拘り過ぎず、楽しめればそれでいいと考えていた。

よく言われることだが、自分の拠り所となる場所を1つに絞ってしまうとその場所でしんどい思いをした時に逃げ場がなくなってしまうというリスクがある。

高校の時は本当に自分が熱中できる活動が部活しかなくて、辛い思いをすることも多かったために、大学ではもちろんサークルも大事にするけれど、勉強も頑張りたいし、バイトもやりがいを感じることができているし、(本当に恵まれている)自分にとって大事だと思える場所が増えたからこそ、精神的な余裕を持っていろいろな活動に取り組むことが出来ていた。これまでのサークル活動は大部分が「楽しかった」の感想で埋め尽くされていた。



先週の土日に連続でライブする機会があって、その両方の対バン相手が本当に強力なバンドだった。土曜日はバンド単位の演者ではトリだったのだが、その前のバンドたちがあまりに大きすぎるプレッシャーを課してきた。バンド単位ではまずまずの演奏だったが、僕個人で見た時にそれに打ち勝つことはできなかった。

あとで映像を見返して、確かに大事故大炎上にはなっていなかったけど、個人的に納得できていない部分がどうしてもあって、その気持ちを引きずったまま日曜のライブに臨んでしまった。

日曜のライブは準備期間が3日とかなり厳しい状況ではあったものの、自分のベストを尽くしたつもりだったが、全く良い演奏はできなかった。ミスタッチこそなかったものの、テンポが全く安定しておらず、かなり聞き苦しい演奏になってしまった。4年近くベースを弾いている人がやってはいけないミスを犯してしまい、普段僕がどれだけ自分の感覚に頼り切って演奏しているかを露呈する形となってしまった。

そこに追い打ちをかけたのが、次に出てきた友人のバンドだった。演奏した曲は3曲と少なかったものの、持ち時間25分をフルに使いきって演奏した。途中ベースの機材トラブルが挟まったもののその間をギターソロで繋ぎまくって乗り切り、曲間には各パートの即興セッションやソロ回しも連発し、見ている人を完全に置き去りにしてしまうライブをしていた。

MCをせず、鳴らす音だけで客を圧倒し、ステージ上ではただ演者が楽しそうに演奏しているというライブはある種僕が理想としているライブで、それは4年近く経った今でも未だに成し遂げたことのないライブである。それを目の前でいとも容易くこなして見せた友人たちは、僕のメンタルを殺すには十分過ぎた。


そんな2日間からしばらく時間が経ったが、今はまだ前向きに楽器を演奏する気にはなれていない。(癖で楽器通販サイトを開いたりはしたけど)自分にできていないこと、できないことが多すぎて、自分にできること、得意なことは他の人も同じように、それ以上にできるのならば、僕はもうこのサークルに必要ないのではないかとも考えた。しばらくはステージにも立ちたくない。


とは言っても、僕の生活の中で心の底から熱中できることは音楽に関わることぐらいで、いくら他に心の拠り所を作ったとしても、バンドで作った借りはバンドで返さなくちゃいけないとも思っている。

それに、今ここで再びステージに立つことから逃げてしまったら僕が大好きな場所に戻ってこれなくなってしまうと思うし、一時の感情でずっと大事にしたい場所を失うなんて馬鹿なことはしたくない。

完全に立ち直るまでまだ時間はかかりそうだけど、来月にはまた次のライブが控えている。再来月にはマックス4バンドぐらい掛け持ちすることになる。リベンジするチャンスはいくらでもある。時期部長と期待をかけられているプレッシャーもあるし、ベースしか弾けず、他のパートに移ることもできないと他人に比べて劣っている部分はたくさんあるけど、それでも逃げずに立ち向かうしかない。必要とされているかどうかはさておき、自分のエゴでステージに立って、自分の力で地位を掴むしかない。

今は自分のメンタルは死んでいるけど、絶対に生き返って、来月、再来月でリベンジすることが最近の目標になっている。死んでもやり返したい。