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朝ドラ「虎に翼」の弁護士考察・第6週(高等試験司法科ほか)

第6週は、いよいよ寅子が高等試験司法科(現在の司法試験)に挑戦し、見事合格を果たしました。

NHK連続テレビ小説「虎に翼」を視聴して、弁護士目線で気になったことを、毎週noteにしたためています。


高等試験司法科はどんな試験?

高等試験司法科は、現在の司法試験に相当するものです。どんな試験問題だったのか気になりましたので、調べてみました。

国立国会図書館のデジタルコレクションで検索したところ、当時の試験問題が閲覧できましたので、一部ご紹介します。

寅子のモデルである三淵嘉子が実際に受験した昭和13年の問題を見てみましょう。

昭和13年の憲法・民法・刑法

憲法
一 天皇の国法上の地位を明かにす。
二 立法権の意義及範囲を論ず。
民法
一 継続的契約関係の特質を説明すべし。
二 担保物権の附従性を説明すべし。
刑法
一 結果的加重犯を説明すべし。
二 背任罪を説明すべし。

現在の司法試験は、長文を読んで設問に答える問題がほとんどですが、当時はいわゆる「一行問題」が出題されていました。問題が抽象的であるため、何から書き始めればよいか、何をどれくらい書けばよいか、受験者の力量が試されます。

教科書の知識をくまなく理解して、正確に答案に再現する高度な能力が求められていたと思います。

口述試験での女性差別は本当にあったのか?

ドラマでは、口述試験において女性が差別的な発言を受けたことが取り上げられていました。当時、実際にそのような差別が存在したかどうか、真相は分かりませんが、女性受験者に対する冷ややかな目は、当時の時代背景を踏まえれば実際にあったかもしれません。

昭和14年・憲法第2問

司法権の独立を論ず

ちなみに、昭和14年の憲法第2問には、「司法権の独立を論ず」という問題が出ていました。第5週で桂場裁判官が、「司法の独立の意味も分からぬ、くそ馬鹿どもが。」と管を巻いていたあれです。

共亜事件のモデルになった「帝人事件」の判決が昭和12年ですので、「司法権の独立を論ず」という問題は、司法権の独立が揺らいでいた当時の事情を踏まえたものかもしれません。

桂場裁判官であれば、この問題にどう解答するのでしょうか?気になるところです。

官報で合格者発表

寅子たちが官報で合格者を確認していましたが、官報掲載の伝統は当時から今も変わっていません。官報は、日本政府が出す機関紙(新聞)で、国家試験の合格者情報のほか、法令や告示、国家公務員の人事、さらには破産者や会社の解散などの情報が掲載されます。

(私自身もそうですが)司法試験に合格すると、官報を購入して記念にする受験生が多く、きっと寅子も、その日の官報を「家宝」のように扱ってるかな?と想像しました。

ストライキや自由な政治活動が許されなかった時代

留学生の兄が労働争議(ストライキ)活動の治安維持法違反を理由に、特高警察に検挙されていました。当時は、ストライキの権利は労働者に保障されてはいませんでした。また、共産主義的思想を訴える団体に加入することは、治安維持法違反として検挙の対象になっていました。

小説「蟹工船」で有名な小林多喜二は、特高警察に検挙されて、昭和8年に獄中死しています。特高警察による厳しい拷問があったのではないかといわれています。

(勉強を途中で投げ出すことにあれほど批判的であった)よねさんが、だれよりも先に、受験をあきらめて朝鮮に戻ることを強く薦めたのも、それほどに当時の特高警察が恐れられた存在であったからです。

今週は、男女差別のほか、朝鮮留学生への差別や、思想差別の問題が取り上げられていました。

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