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結婚式で魔法使いをやっていた時の話

僕は昔、ブライダルのバイトをしていました。ブライダルといっても配膳や調理のバイトではなく"空間演出"のバイトです。その時、僕は勝手に「魔法使い」と名乗っていました。

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披露宴に参加した方や、ご自身の披露宴で既に経験済みの方もいるかもしれませんが、大量の風船を空に飛ばしたり、水を器に注ぐときれいに光ったり、会場全体に星空を映したりとかそういった演出の仕事です。

こういった仕事をしていたと友人に話をしたらまるで魔法使いだね、と言われたのが気に入って魔法使いと名乗っていました。

依頼は基本的に結婚式当日の土日祝で関東圏を中心にあちこちのブライダル会場に行っていました。最初は先輩に教えてもらいながら、徐々に一人で現場を回すようになります。

魔法使いと言いながら裏側ではかなり泥臭い仕事です。例えば風船の演出であれば、専用の空気入れを使って風船を膨らまし、ひたすら結んでいくという作業です。1日100-200作るのはざらにあります。

風船が割れてしまうのは当然のこと、風の強い日は作った風船が飛んで行ってしまうこともありました。また、結ぶ作業を何回もやるので指が赤く腫れたりと大変でした。

光の演出の際は、指定されたタイミングでプロジェクターのような機械のスイッチを入れるということをやっていました。虹が出たり、会場全体が星空に包まれたりとそれはそれは幻想的な空間でした。

光の演出で難しいのはタイミングです。新婦新婦の入場など、わかりやすいタイミングであれば簡単ですが、中にはお二人が好きな音楽のサビに入った部分で光を出してほしいといった依頼もあり、聞いたことない音楽でも何度も何度も聞いて自分が歌えるぐらいになるまで練習しました。

また、ブライダルのバイトを経験した方ならわかると思いますが、基本的に会の進行中はスケジュールが命で現場の方はピリピリしていることも多くあります。(それも仕方ないと思います、、)

一度セッティングが終わってしまえばあとは演出の時間まで暇になるのですが、何が起こるかわからないので風船が全部割れてたらどうしよう、機械が落っこちてたらどうしようなど気が気でありません。

演出本番では感覚を研ぎ澄ませ、”今だ”というタイミングで演出をします。万が一風船が飛ばなかったり、光が上手く出ないとお二人の一生に一度しかない時間を台無しにしてしまうというプレッシャーがすごく、無事に終わった瞬間は毎回脱力します。

大変な仕事ですが、演出がうまくいったときの新郎新婦や参加者の方々が一斉に「わぁ」という驚きと喜びの顔が見れるのはこの仕事だけだと思います。

あの「わぁ」という一瞬を見るためにこの仕事をやっていたと言っても過言ではありません。決して時給のタメだけでは続かない仕事だと思います。

披露宴の中の一演出に過ぎないかもしれませんが、裏側で魔法使いと現場の方々が必死にやってできた成果というのを少しでも知っていただけたら嬉しいです。

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僕はめっきりブライダル業界とは遠くなってしまいましたが、空間を演出する魔法使いは今でも活かされています。

自主開催のイベントや飲み会でもどうやったら参加者の方の心に残るか、居心地がよいかを考えて裏側で泥臭いことやりながら、来てよかったという思い出を持ち帰っていただけるようにこれからも魔法使いを続けていきます。

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