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不確実性の高いプロダクトディスカバリーをディスカバリーマップで加速する

Rettyデータアナリストの松田です。

2022年1月〜3月の3ヶ月間、プロダクトの課題を明らかにするためのプロダクトディスカバリーに取り組んできました。施策の効果検証といった分析とはまた違った難しさがありました。

プロダクトディスカバリーの途中でぶつかった課題と乗り越えた方法について、私自身の振り返りをかねて整理してみます。

プロダクトディスカバリーとは

プロダクトディスカバリーとは一体なんでしょうか?端的に表現すると、プロダクトディスカバリーとは「プロダクトに関する未知を既知にする活動」と言えます。

では、未知の情報とはなんでしょうか?例えばRettyのようなグルメサービスであれば、ユーザーさんがどのような行動をとっているか・どのようなきっかけでRettyを使い始めたのか、飲食店の方がRettyにどのような価値を感じているか、といったことが考えられます。

このような未知の情報について、行動ログ分析やユーザーインタビューを通して明らかにしていくことがプロダクトディスカバリーと称して実際に行われていくことになります。

未知が既知になると何が嬉しいのでしょうか?この3ヶ月、Retty分析チームはプロダクトディスカバリーにほぼ全ての時間を費やしてきました。その上で、プロダクトディスカバリーによって辿り着くことができる状態を言語化するとすれば「確信度の高い意思決定(eg.何かをやる / やめる)を行える状態」だと言えます。

まとめると、プロダクトディスカバリーとは「プロダクトに関する未知を既知にする活動」であり、その結果として「確信度の高い意思決定(eg.やる / やめる)を行える状態」がもたらされます。

この結論は、あくまでRettyでのこれまでの取り組みを言語化したものであり、今後はきっとアップデートされていくものだと思います。「確信度の高い意思決定」はまだ抽象度の高い表現ですし、もう少し具体的にできる余地があると考えています。

プロダクトディスカバリーによって既知×既知(左上)の情報を増やしていく
※『プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』5章を参考に作成

Rettyのプロダクトディスカバリー体制

Rettyではプロダクトマネージャー(以下PM)が中心となるチームと、データアナリスト(以下アナリスト)が中心となるチームが協力し、PM1~2人とアナリスト2~3人でチームとなりディスカバリーを進めています。『チームトポロジー』のパターンで表現すると、以下のような体制です。

PMチームと分析チームのコラボレーション

ディスカバリーのプロセスとしては、次に明らかにする未知についてPMが主導してアナリストと議論し、既知にしていく活動をアナリストが主導して実行していくような形になります。

プロダクトディスカバリーのプロセス

ディスカバリーのスピードが落ちた

途中まではうまくいっていたように感じていたのですが、ある時から「問いに対して分析設計が沿っていない」「分析はしたが次の問いに繋げられない」という事象が発生し始めました。

その結果として、コミュニケーションコストが増えてディスカバリーのスピードが低下していることが体感として現れるようになりました。

なぜ?

プロダクトディスカバリーは、それ自体が不確実さを性質として持っていると思います。未知のことに対して仮説を立てて検証するサイクルは、いつ既知になったと言えるのか、そもそも既知になる瞬間は訪れるのか、実際に行ってみないとその答えを得ることはできません。

ディスカバリーの過程でコンテキストが膨大になり「なぜ今この分析をしているのか」に至るまでの途中経過が認知負荷の限界を超え、明らかにしようとしたことを見失ってしまっていました。

スピードを上げるために必要だったこと

方針は非常に単純で、頭の中からコンテキストが消失したとしても思い出せるように、全体像を見れる状態にすることです。

PM・アナリストのコラボレーションチームでは会議体を持っており、毎週のミーティング議事録をConfluenceにまとめていたり、既知になったことをGoogleスライドにまとめていたりはしました。

それぞれの要素を取り出すと、議事録は過程が記述されているものの個別のドキュメントに分かれており一覧性が低く、スライドは結果の一覧性は高いが過程は記述されていないという状態だということがわかりました。

そこで、両者に欠けている要素を取り出し、過程が記述されていて一覧性が高いものを作ることが問題の解決につながるものだと見えてきました。

ディスカバリーマップ

一覧性が高く過程が記述されているものとして、以下のような問いとそれに対する答えを繋いでいくような形でディスカバリーマップ(造語)をMiroに作りました。

過程が全て一箇所に集まっていることで、問いを遡ることができるような状態になりました。

ディスカバリーマップの凡例:黄色=問い、青色=問いに対する答え

3ヶ月間ディスカバリーを繰り返した結果のディスカバリーマップがこちらになります。分析の途中経過を可視化し、「なぜ今この分析をしているのか」という問いに簡単に答えられるようになりました。

ひとつの分析結果から複数の問いが生まれてくることもある中で、どのようなルートを辿っているか覚える必要性が低下したことで、より議論に時間や脳のリソースを使うことができるようになりました。

実際に作ったディスカバリーマップの全体像

副作用

ディスカバリーマップにも課題はあり、全てが繋がっていることでクリティカルな問いにジャンプすることが難しくなるという難点がありました。

この点についてはまだ良いアプローチが見つけられていません。プロダクトディスカバリーを行なっている方で、良い可視化方法があれば教えてください。

まとめ

プロダクトディスカバリーとは、「確信度の高い意思決定を行う」ための「未知を既知にする活動」と言えます。

プロダクトディスカバリーはコンテキストが膨大になりやすく、現在を見失いやすいです。

ディスカバリーマップとして可視化することで認知負荷を下げられ、議論に集中できる状態になりました。

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Retty分析チームは、データ分析や意思決定を専門に行うチームとして部門横断的に意思決定を推進しています。プロダクトディスカバリーのような定量データ・定性データをもとにした分析やKPI設計、DWH開発など幅広い領域でプロダクトの成長に関わっています。

やることが多くカオスとも言える状況ですが、役割分担が進みきっていないことでプロダクト成長に幅広く関われるチームでもあります。データを活用して、継続的にプロダクトを成長させていく仲間を求めています。

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また、プロダクトディスカバリーのような難易度の高い分析に挑み、組織単位で難易度の高い分析ができるようにしていくためには、データが活用できる状態を維持し続けていく必要があります。

現状だと運用は回っているものの、データ活用を推進していく動きはまだまだ余地があると思っています。データ基盤という領域でRettyというサービスを支え、ともに成長させていく仲間を求めています。

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