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生涯猫派 犬を飼う ③パピー・ブルー

子供の頃、縁日が大好きだった。
お目当ては景品のヒヨコ。
ほわほわの小さなヒヨコを持って帰ってこたつの中で育てるのだ。

今思うと、生きたヒヨコが景品なんてゾッとするし、そもそも「生ききらない」ことを前提にしてるのかな?と思うともっとゾッとする。
何匹育てたか覚えていないが、どの子も途中で息絶えてしまった。

そんな昭和の終わりに、酔っ払った父親が、飲み友達の家で産まれた子犬をもらって帰ってきた。

そんなふうに勢いで子犬を引き取るなんて、ヒヨコと同様に現代ではありえないが、昭和の終わりといえばさもありなん、と納得してくれる人もいるかもしれない。



わたしが生涯猫派になった原因は、子供時代に飼ったこの犬にある。

というのも、この子はわたしたちの家庭の事情で、幸せとはいえない犬生になってしまったからだ。

母とふたりで父から逃げることになったとき、母とわたしはこの子を連れて行くことができなかった。
どんなに家庭が壊れていても泣くことはなかったのに、この子を父の元に置いて出ていくことになった時、崩れるように泣いた。
引っ越しトラックの中でもわあわあ泣いた。
自分でもびっくりするくらい。

犬を一番かわいがり、一番お世話をしていた母も泣いていた。
思い出すと今でもつらい。

犬がどんなに人間を愛し、頼り、与えてくれるか、わたしは知っている。
だけれど、その思いに応えず、途中で放棄したのだ。
だから、わたしには犬を飼う資格がない。



封印していた記憶が急に蘇ってしまった。

それからわたしは情緒不安定になった。
実際に、夜泣き、トイレ、散歩、ご飯などの子犬のお世話に猫のお世話もある。子どもたちとの日常を回していかないといけないし、いっぱいいっぱいだった。

情報が多すぎて迷子にもなった。
心が弱っている時に、ブリーダーのドーラばあさんに言われた言葉がきつかったりもしてさらに凹んだ(ブリーダーは変わり者が多いから気にするなと多方面から声をかけて頂いて救われた)。

寝不足に加えて、不幸にしたあの子ためにも絶対に絶対に投げ出してはならないという重圧につぶされそうになり、頭がぼおっとして、感覚があいまいになった。

家族で一致団結して、夜は順番でお世話をすることにしたのだが、いろいろな場面で日常が崩れていったので、その変化に順応するのも時間がかかった。

かわいいはずなのに、いっぱいっぱい。

「パピー・ブルー」

あっという間にわたしはパピー・ブルーの沼にはまってしまった。
この感覚は、産後うつに似ている。

パピー・ブルーはリアルだ。
これから子犬を迎える人は、子犬のお世話の仕方と一緒にパピーブルーについても知っておくべきだと思う

だけど、朗報も!
パピー・ブルーは一過性で、子犬との暮らしが軌道に乗ってくると大概は治るといわれている。
わたしの場合は受け入れた直後から4〜5週間が辛く、過去の記憶も乗っかってるので長かった方だと思う。
でも、ジンジャーとの絆ができ始め、お互い暮らしのペースがつかめるようになってから少しずつよくなってきた。

犬飼いの友人にもたくさん話を聞いてもらったな。
優しくしてくれてありがとう、みんな。
感謝しかない。

というわけで、もし、今パピー・ブルーに陥っている人がいたら、

一過性のもので必ずよくなるから大丈夫!パピー・ブルーを抜けたら、楽しくにぎやかなドッグライフが待ってるよ!!

と声を大にして伝えたい。


そういうわけで、一番かわいくてスペシャルなジンジャーの子犬期の記憶があまりない。

今日も娘に
「ママはジンジャーが一番かわいかった時、毎日泣いてたよね〜」
と言われた。ぐう。

今思えば、ただただかわいさを享受して楽しめばよかったのになあ〜。
写真ももっとたくさん撮ればよかった!ぐうう。

そんな話を友人にしたら
「だけどさ、自分の子供が新生児だった時の記憶ってあんまりなくない?毎日が怒涛すぎて。それと同じなんじゃやない?今かわいかったらそれでいいっしょ〜」

うん、たしかにそうだよな。
わたしも子供の新生児時代のことあんまり覚えてないや。

と、ストンと腑に落ちた。

いまはすっかりパピーブルーから立ち直り、ジンジャーとの日々に癒やされそして奮闘している。

ジンジャーは癒やされてなかった過去を昇華し、乗り越えるチャンスをくれたんだね。
あの時幸せにできなかったあの子の分までジンジャーのこと幸せにするからね。

つぎは、猫と犬がいよいよ対面します。

つづく





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