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【26話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

唯ちゃんと梨紗ちゃんが、バンドを結成するに至った経緯の、想いで話をしています。いつもより、楽しそうです。
この話は、バンドを結成する前までですが、長くなりそうなので、前回同様に、【26話】、【27話】の2話構成で行きたいと思います。

ライブへの情熱

唯ちゃんが、色んなロック系の曲をラジオから録音して、梨紗ちゃんの部屋で、聞いています。

梨紗ちゃんの、気になる楽器

「これ、ELP(エマーソン・レイク&パーマ)なんだって 梨紗ちゃんが前にピアノで弾いてた曲と思うんだけど」
「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition)だわ いい感じのロック調アレンジね これってパイプオルガン・・・違うわね似てるけど オルガン系には違いないんだけど 好きな音だわ 凄く気になるわね まあいいわ 他は」

「次はギターが グニュグニュ ってなるんだよ」
「・・・グニュグニュ?」
「それで」
「マンドレークルート(Mandrake Root)だよ ディープパープル(Deep Purple)なんだって ほら ここだよ ギターのグニュグニュ」
「へえ 面白わね」
「でしょ ハードでいい感じだよ 梨紗ちゃん」
「それよりキーボードソロの方が・・ ・トーンやアタック感は違うけど さっきのと同じ楽器だわ それ弾いてる人は誰よ」
「唯は 知らないよ」
「そう それも気になるわね」

「お部屋で エレクトーンもいいけど 唯 ライブやってみたいんだよ 
梨紗ちゃん」
「私もよ ボーカルとキーボードで 唯と二人で」
「唯も 梨紗ちゃんと二人がいいよ こじんまりでいいよ」
「じゃあ やるわよ」
「でも どうやって」
「そうね 取り敢えず 今度の日曜 いつもの楽器店に行くわよ 何か手立てがないかを 店長さんに聞いてみるわよ」
「分ったよ 梨紗ちゃん」

相変わらずの唯ちゃん、世話好きの梨紗ちゃん

「ゆいー なにまだ寝てるのよー もう11時よ」
「あっ 梨紗ちゃん おはようだよ どこか行くの 制服着て」
「なに忘れてるのよー 楽器店行くんでしょう・・はい起きて布団たたむから・・はいパジャマ脱がせるわよ・・はい制服着せるわよ・・はい顔洗って歯磨いて・・トイレも行ってきなさいよ」

地域差はあるかと思いますが、この頃の中高校の校則では、繁華街に行くときは制服で、保護者と一緒なら私服でも、と言うものでした。
高校生は、比較的緩かったようでしたが、しかし私立は厳しいようでした。

「行ってきたよ ウンコが出たよ」
「そう よかったわね  じゃあ行くわよ・・・ちょっと唯 どこ行くのよ」「朝ご飯だよ 梨紗ちゃん」
「そんなの 昼まで我慢するのよ」
「でも 朝ご飯食べないと お腹空いてるんだよ」
「唯 怒るわよ」
「もう怒ってるでしょう 梨紗ちゃん」
「もう いい加減にしなさいよー 怒ってないわよー」
「ほら梨紗ちゃん やっぱり怒ってるう」
「もう トットと行くわよ」

しかし、何と言うか、梨紗ちゃんは、唯ちゃんの世話が大好きです。
梨紗ちゃんの世話好きな話は、色々ありますから、またその内に。

その楽器店の店長は、ママ達の中学の同級生です。
梨乃さんは、ピアノやエレクトーン等を買ったり、また梨紗ちゃんの通ったピアノとエレクトーン教室は、ここが併設経営していたのです。
唯未さんは、特に高額な物は買っていないのですが、いつも梨乃さんと一緒に行って、粘り強く値切るので、「値切りの唯未」と、全従業員から恐れられていました。
ですから、店長は、唯ちゃんと梨紗ちゃんを、小さい頃から知っています。

初ライブ決定

梨紗ちゃんは、音楽イベントがあれば出場したいと、店長にお願いするつもりでした。

「あっ 梨紗ちゃん ちょうどいい所に来たね」
「ちょうどいい所って なんですか店長さん」
「来週末 ショッピングセンターのエントランスホールで ミニコンサートを開催するんだけど 一人欠場になってしまって 誰か探していたんだよ ピアノとエレクトーンを用意するんだけど どうかな 梨紗ちゃんと唯ちゃんで 出てくれるとありがたいんだけど」
「はい 出ます出ます 私達も ライブやりたくて 何かないか店長さんに相談しようかと思ってたんです」
「そうかあ それはちょうどよかった よかった よかった」

と、あっさり初ライブが決まってしまいました。

「衣装どうしようね 梨紗ちゃん」
「衣装ってなによ」
「もちろん ライブの衣装だよ」
「唯 聞いてなかったの 中高生は風紀上制服でって 言ってたでしょう」
「制服が衣装かー つまんないなー」
「しかたないでしょう それより早く曲決めて練習するわよ」

「曲なら決めてあるよ すぐ歌えるよ 振りもだよ」
「なんの曲よ」
「最初は ロマンスだよ」 
「もしかして 岩崎宏美さんの」
「そうだよ それの 唯バージョン だよ」
「ゆ・・い・・バー・・ジョン?」
「そうだよ こんな感じでハードにだよ・・”あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほど そばにいてほしい”・・だよ」
「す 凄いアレンジと振りね でもいいわよ じゃあ エレクトーンも ベース音を強調したアレンジするわね」
「お願いだよ」


さて、この『ロマンス 唯バージョン』ですが、何十年か後に宮本浩次という人が 、『ROMANCE』というカバーアルバムの中で、唯バージョンそっくりのアレンジで『ロマンス』を歌ったのです。
それを聞いて唯ちゃん、

「これ 中学ん時の 唯のアレンジとそっくりだよ 
               真似されちゃったね 梨紗ちゃん」

と、言ったとか言わなかったとか。

「次はね オリビア・ニュートン・ジョン(Olivia Newton John)の そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)だよ 高い声で綺麗に歌うよ 裏声も入れるよ もちろん歌詞は英語だよ」
「いいわね 唯にピッタリだわ じゃあ 中高音主体ね 最初は抑え気味でサビに向けて盛り上げて ベース音は控えめで行くわね」
「お願いだよ 梨紗ちゃん」

「梨紗ちゃんの ソロはどうするの」
「そうね クラッシックで行こうかしら 勿論 アレンジは加えるわよ」
「どんな曲にするの 梨紗ちゃん」
「最初はピアノから入るわ ベト7の4からよ」
「・・・ベト・・7・・4????」
ベートベン交響曲第7番第4楽章(Beethoven:Symphony No.7 Op.92 Allegro con brio in D )よ エネルギッシュよ よりハードに攻めるわよ」

「よ よ 余計分らなくなったけど 後で聞かせるんだよ じゃあ エレクトーンは 使わないの」
「使うわよ もう1曲と繋げて エレクトーンに移行するのよ」
「もう1曲って なあに」
エルガー行進曲 威風堂々 第1番(Elgar:Pomp and Circumstance Marches, Op.39 No. 1 in D)よ 吹奏楽でもよく演奏されるわよ その2曲を繋いで時間に収るようにアレンジするのよ できたら聞いて貰うわね」
「もちろんだよ 梨紗ちゃん 楽しくなりそうだね」
「そうね」

唯ちゃんと梨紗ちゃん、ライブ当日の曲目が決まったようです。
英語で歌うと言った唯ちゃんですが、曲に関しての英語の歌詞は、すぐに覚えてしまいます。
勉強の英語は、サッパリ覚えられないのに、どうしてなのか聞いてみると、

「日本語も英語も 聞いた通りに 覚えれば一緒だよ でも勉強の英語は つまらないから それは無理だよ」

だそうです。

次回、【27話】では、ライブの模様の想いでが語られます。
また、次回、お会いしましょう。

【索引】 【登場人物】

#幼馴染み #想いで話 #思いで話   #小説 #ショートショート  
#東雲 #しののめ #小鳥遊 #たかなし #ライブ

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