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【タヒチ】人を喜ばせることに幸せを感じたら、それは豊かさの始まり。

笑顔と自信、やりたいことができるだけの収入と友達、そして愛に溢れ満たされ、さりげなくそして惜しみなく隣人に光を当て、笑顔にすることができる人。豊かな人とはそういう人を指すのだろう。

旅をしていると、普段の生活では決して出会わないような人との出会いに恵まれることがある。

アルゼンチン出身でイビザ島に住むフェルナンドとは、フアヒネ島のオーシャンフロントの民泊(オーナーはフローラ)で出会った。1泊の値段は、高級ホテルまでとはいかず、それでいてバックパッカーが好むような値段でもなく、高くもなく安くもない中間の値段だ。そしてそんな場所に好んで宿泊するのは、快適な空間や距離間を確保しながら人との出会いや深い交流に重きを置く人であろう。

彼はイビザ島で3店舗のタパス店を経営し、8ヶ月間のシーズンをノンストップで営業し、4ヶ月間のオフシーズンは店を閉めて妻のマルティンと旅に出ると言うスタイルを10年以上続けていると言う。

2人に聞くと、4ヶ月で世界をぐるりと一周するように1ヶ所に約1週間の滞在で移動しながら旅をしているそうだ。それも毎年のことなので、今年でなんと10回目の世界一周だと言う。日本で世界一周を10回しました!なんてSNSで発信したら、旅行代理店や旅行用品店からの取材や広告依頼の案件がすぐさま飛んで来るが、彼らはそんな日本的な感性とは全く違う常識の中で生きている。

シーズンの8ヶ月間をハイパフォーマンスで稼働する為の充電期間でありバカンスなので、わざわざ「世界一周」と言う言葉すら、頭に浮かばないそう。自分の心と向き合い、心を満たす為に全ての時間を注ぐ。その為フェルナンドは、数店舗のレストランの経営者と言った風格や威厳を微塵も感じさせないほど柔らかな雰囲気を持ち合わせている。

いつも夕食時は、フローラの作る手料理を囲みながら、皆それぞれの国の話や食事やカルチャーについて語り多くの知識を楽しく得ることができた。と言うのも、フェルナンドはアルゼンチン出身で、その妻マルティンはチェコスロバキア出身で、フローラは根っからのタヒチアンであるが寒冷地に憧れがあり、チェコへの旅行経験もあった。

そして私たちはフローラにとって初の日本人ゲストであり、フェルナンド夫婦にとっても1ヶ所に1ヶ月近く滞在しながら世界を旅するこれまで見て来た日本人とは全く違うタイプの日本人だと言う。時間とお金をかけて旅している者同士が旅先で出会い、お互いがお互いに興味を持つのはごく自然なことだろう。

フェルナンド夫婦の滞在日数はここでも1週間ほどであったが、ありがたいことにアルゼンチンのおすすめの場所を深夜までグーグルマップを使って事細かに教えてくれた。

フェルナンドは現地人目線で、そしてマルティンはヨーロッパ人である為、フェルナンドとはまた違った目線で、安全な国とそうでない国を教えてくれた。ここの国ではスーパーで食材を買って自炊するより、外食のほうが質がよくて安いなど、節約と言えば自炊!と言った伝説めいた常識を覆すような情報も満載であった。

こんな情報は日本人らに聞いても日本語でネット検索しても出てくる情報ではなく、とても貴重だ。私はインスタグラムなどで素敵だと思う人のブログに飛んで、それが何語であろうと翻訳をかけて情報を集めていたので、なかなか骨の折れる作業をしていたのだ。素敵だなと思う投稿のほとんどは、プロフィールまで飛ぶと、外国人の割合がとても多いのだ。

と言うのも、南米に訪れる日本人自体が他の大陸に比べるとかなり少なく、南米の情報を探そうとすると、その情報は限られてくる。そして、南米旅行の詳細を発信している人のほとんどが世界一周中の節約バックパッカーだ。

そういった旅人の間では、おもしろいことに自然と金額の常識と言うものが出来上がってくるらしく、4月の世界一周に150万使ったと言うと、お金の使いすぎという分類に入ってしまうらしい。

アメリカ旅行やヨーロッパ旅行に集中し発信される情報よりも、南米のそれは安さ自慢でバスに何十時間乗ったなどの我慢自慢のような体験談としてはかなえり楽しく笑えるが、私には真似できない生活基準の内容がほとんどであった。それも皆、先人のブログなどの情報を頼りに主にマチュピチュのあるペルーやウユニ塩湖のあるボリビアに集中したものがほとんどで、宿の情報も数百円のところだったり、見てるとこちらまで景気が悪くなってきそうな情報ばかりだ。笑 

そして英語のできない、いや、外国人コミュニティに飛び込んで話をしようとも情報を集めることにも消極的な日本人は、旅先で出会う日本人や日本語で引っかかるネットの情報を頼りに旅のコマを進める為、似たり寄ったりのルートや体験が目について飽き飽きしていた。

南米まで行く人が何を怖がっているのだろう。地球にはたくさんの人種の人がいるのに、なぜ日本人は磁石のように日本人同士で固まってしまうのか。島国独特の仲間意識なのか、周辺国から侵略され脅かされて来た歴史が産んだ国民柄なのだろうか。

私たちは、フェルナンド夫婦のおかげで心の底から行きたいと思える場所や経験がこの旅の数ヶ月先の未来に増えたのだ。

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話を戻そう。
フローラの民泊は、オーシャンフロントで、歩けば綺麗な貝殻や打ち上げられた珊瑚を簡単に見つけることができる。52歳のフェルナンドはチェックアウトの前日から、よくビーチにしゃがみこみ、珊瑚を集め、簡単なインテリアを作っていた。まるで図工に夢中になっている男子児童のように。フェルナンドは邪魔にならないようにそれらをビーチベットの周辺や人が通る木に飾り、さりげなくフローラの民泊をセンスの良いものに格上げしていた。

それはいやらしくセンスを見せつけるものではなく、そこにある自然から作られた手作り感溢れるアートで、フローラが作り上げた民泊の空気によく溶け込んでいて、フローラを心底喜ばせた。私たちはフェルナンドの作成現場を楽しく眺め、完成を喜び、将来海の近くに住んだら、こんな手作りインテリアも素敵だよねと話合っていた。何より、そんな私らを見て一番喜んでいたのはフェルナンド自身であった。この人柄こそが、彼のレストランが繁盛する大きな理由なのだろう。


フェルナンドたちの出発後、フローラは「彼らは、本当に素敵なゲストだったわ!逆に私の方が喜ばせてもらったわ。また遊びに来て欲しいわね」と言っていた。私たちも、今現在、フェルナンド夫婦から教えてもらった情報を頼りに、よくコンタクトを取りながら、南米での刺激溢れる毎日を送っている。


出会った人に感謝され、この先も人間関係を続けていきたいと自然に思わせる人。豊かさとは、人の笑顔を産み繋ぐことにあるのかもしれない。










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