閉店

売り上げも知名度も上々だがクローズする

皆さんCBD Coffee Shopに来て頂き本当に感謝です。リリースから、たくさんの応援と批判を頂きました。売り上げも知名度も上々のタイミングだが、店舗を3/9(日)でクローズする。

僕らが作りたいのは、ただのCBD Coffee Shop ではない。当初、クリエイターの生活からノイズを取り除くと言って始めた。(リリース記事)Creative Nuggetsは存在し続け、より皆を楽しませるので、待ってて下さい。死ぬほどスポットライトを浴びてやります。情報はTwitter Instagran から。

以下に、渋谷で生きた僕視点で、ショートエッセイを書きました。PAPER TOWN 〜渋谷はユートピアなのか〜ぜひ、読んで欲しい。※フィクションかノンフィクションかは想像に任せます。

PAPER TOWN 〜渋谷はユートピアなのか〜

バニラのシャグの甘ったる匂いが充満するラブホテルの1室。僕はふと髪を乾かす手を止めた。「ねぇpaper town って知ってる?」。「知らない」と君は言い、リップを塗りなおした。

paper town:地図にはあるけど、実際には存在しない街。昔のアメリカで地図製作者がコピーライト・トラップとして描き入れた「ペーパータウン」(架空の町)である。

「渋谷の街は夜でも灯りがあって寂しくないよ」ある漫画のヒロインになりきれない少女は言っていた。そのセリフを信じ、1年半前、京都から渋谷に移り住んだ。

地元を去った日、LINEの通知なんて0。初めから社会になんてカウントされていなかったみたいだった。上京した当時僕は乾いていた。

そんな3月のある日。フロアで踊っていた君を見つけた。僕はいつも端っこでタバコを吸うタイプなんだけど。その日は酔いに任せて突っ込んだ。一歩踏み出したら意外と馴染んだ。

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「お兄さんタバコの火貸してよ」
制服のJKにライターを渡した。ここはセンター街のバーガーキングの喫煙所。”渋谷”という街を凝縮し、高濃度にして、一箇所に詰め込んだような場所だ。憂鬱、鬱憤が煙とともに漂ってる。

この頃の僕は、ブランドを立ち上げて渋谷にも実店舗を出していた。SNSのフォロワー数も0の桁が増えた。フォロワーの欄には、有名な起業家から有名なモデルまでの名前が羅列していた。売り上げも知名度も、上がっていた。ただ、乾きは満たされるどころか、より増していた。

「今、センター街にいるんだけど飲まない?」

僕のインスタに一件のDMが入った。仕事で知り合ったモデルの子からだ。「あなたの記事がメディアに出てたよ」とモデルの女が合流するなり、iPhoneのバキバキになった液晶を見せてきた。

僕の投稿には、すごい数のいいねとRT。コメントには「今の世代っぽい」「世界観がイケてる」的な賞賛で溢れていた。

バーガーキングでナゲットを食べながら、女はしきりにインスタを投稿している。モデル活動で忙しいらしい。@の後に続くユーザー名。僕らはその名で呼び合う。本名など、知らないし、知ろうとした事もなかった。

僕らは道玄坂2丁目ラブホ街にある、いつものバーに向かった。

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バニラのシャグの甘ったる匂いが充満するラブホテルの1室。僕はふと髪を乾かす手を止めた。「ねぇpaper town って知ってる?」。「知らない」と君は言い、リップを塗りなおした。

「姑息で孤独な人」「人を愛せない人」数回ヤッた女が、僕の事をわかったかのように言ったセリフだけが、食べ残したカップラーメンと共に狭い部屋の中に残された。

「君はこの街も人も、全部知ってしまえば退屈だと思わない?」

哲学的な質問をする時だけ、なぜか君と呼ばれた。そういえば、使ってる香水のブランドも、知ってしまえば退屈だという理由で教えてくれなかったっけな。僕は答えに困り、「そうだね」とだけ相槌を打ち、女と別れた。

朝方の汚れた渋谷。僕らが乘る3番線。サラリーマンの群れを逆走する2人。夜な夜な遊び回って、そんな時だけ生きてるって気がした。

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憂鬱な山手線に揺られ、僕はワンルームの部屋に帰る。家に帰って、酒とタバコと香水の残り香が染み付いたジャケットを脱ぎ捨て、テレビを付けた。机の上には缶ビールと錠剤が散乱している。

”昨夜未明、都内某所のマンションでホストの男が女性客に刺されました”
若いアナウンサーが憂鬱な顔で話す。

Twitterを開いた。ホストを刺した女性が両足を血に染め、たばこを吸う写真がSNSで拡散されていた。その女性は端正な顔立ちで、とても綺麗だった。

事件のツイートがトレンドに入り、コメントで溢れていた。
「なんかエモい」
「ドラマみたい」

美しい物が壊れた時、人は勝手に意味付けをする。本当は、空虚なだけかもしれないのに。

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Paper town に住むpaper boy とgirl. 全部、ペラッペラ。paper town.地図にはあるけど、実際には存在しない街。そこに生きる、ぼくたち。ぜんぶ、フィクションみたい。

渋谷。この街はユートピアなのかもしれない。乾いた欲望を蜜で満たすのは容易だ。女、成功、金。アドレナリンを食い尽くして。金とか愛に僕らは悩まされている。それでも、日常に溢れるただのノイズをアートに変えるのは俺らだろう。僕はもう一度考える。この街で、何を作れるか。


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